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マイナカードなくても給食・保育料無料…備前市の方針転換にSNSで賛否、ダントツ取得率で交付金は割増に
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.04.06 18:21 最終更新日:2023.04.06 18:27
4月5日、岡山県備前市の吉村武司市長が記者会見。世帯全員のマイナンバーカード取得を条件に給食費や保育料などを実質無償化する施策について、条件を撤回した。2023年度はカードの有無にかかわらず無償化する。
吉村市長は、3月29日に国の地方創生臨時交付金を受けられることがわかったことを理由にあげ、「当初は交付金があると想定していなかった。財源が確保できたので、条件を変えた」とし、「カードはデジタル社会に必須という考えは変わらない。引き続き市民に取得をお願いしていく」と述べた。
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また、「市民のみなさん方がどのような思いで、たとえばインセンティブを考えて(マイナカードを)取った方もおるでしょう。それはわかりません。ただ、強制したことは一切ございません」とも述べた。
市の方針をめぐっては、一部の保護者らが「任意であるカード取得を強制しかねない」と反発していたが、3月23日、市議会で、無償化の対象をマイナカード取得者に限定するとした条例案が、8対7の賛成多数で可決されている。
備前市の撤回方針が報じられた4月4日、子育て政策で注目を集める兵庫県明石市の泉房穂市長は、自身のTwitterにこう書きこんだ。
《マイナカードを事実上強要する点や、憲法の平等原則に違反している点において、撤回して済む問題ではないと私は思う》
SNSではほかにも、市長の責任を問う声が多くあがった。
《経済的理由や学校での子どものことを考えて不本意ながら作った人もいるだろうに。その心理的負担も想像できず、強制してませんって、してるのも同様》
《撤回するなら最初からやらなければ良かったのに。これで備前市は評判ガタ落ち。市民を見てない首長を選ぶとこういうことになる典型です》
一方、岡山県庁のHPで公表されている「県内市町村のマイナンバーカード交付状況」(2023年2月末現在)を見ると、備前市は交付率78.2%で岡山県内27市町村でダントツの1位。県全体の64.0%を大きく上回っている。そのため、こんな声も。
《備前市ってマイナカードの取得率すごくいいんだよねぇ!一部の保護者ってどこらへんなん??》
共産党の宮本岳志議員は、2月14日の衆院総務委員会で、備前市の問題を取り上げた。
0~2歳児の保育料が年額50万円、備前市の小中学校の給食費が年間5万5000円~6万円となることを指摘し、「子育て世帯に55万円ものペナルティーを押しつける。これを『自治体の判断だ』と言って放置したのでは、『異次元』と呼ばれる少子化対策は進まない」と批判した。
だが、松本剛明総務相は「自治体独自の施策については、各自治体の自主的な判断により取り組むことが基本だ」と述べるだけ。そのため、SNSでは国の方針を批判する声もあがっている。
《これからもカードの有無で差別される事になるでしょうね。何故って、国がカードの取得率に応じた地方交付税交付金の給付をしていますから》
《備前市の決定は良かったが問題なのは国がマイナカード普及率を自治体への地方交付税の算定に反映させるとしている事 任意なのにおかしい》
政府は、2023・24年度は、500億円の「マイナンバーカード利活用特別分」を地方交付税の財源に加え、カード交付率が高い上位3分の1の市町村に割増配分する方針だ。この制度が変わらぬ以上、第2の備前市が生まれることになりそうだ。
( SmartFLASH )