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たった一言が「ハラスメント」に直結…人間関係を破壊する「副詞」の使い方
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.05.04 11:00 最終更新日:2023.05.04 11:00
近年、ハラスメントが問題になっています。ハラスメントは、する立場にも、される立場にも、見る立場にもなりたくないものです。
ハラスメントの言葉がいわゆる暴言の場合、言われた側のショックは計り知れませんが、それがハラスメントであることは誰の目にも明らかですので、比較的対応はしやすいです。
・周りにどれだけ迷惑かければ気が済むんだ。
・ふざけんじゃねえよ。
・いちいち口答えするな。
・本当に使えないやつだな。
・給料ドロボーが何を偉そうに。
・こんなことまで教えないといけないの?
こうした乱暴な言葉であれば、イエローカード、否、レッドカードでしょう。
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■副詞による間接口撃
むしろ、ハラスメントの問題は、明確にハラスメントだといえるかどうか微妙な言葉遣いが多いことです。ハラスメントとも、そこまでではないとも受け取れる微妙な言葉は、副詞のニュアンスによって左右されやすい点に特徴があり、とくにネガティブな語感の副詞によく見られます。いくつか例を挙げましょう。
次の「よく」には否定的な評価が入っています。「しょっちゅう」の「よく」でも、「悪い」の反対の「よく」でもなく、「よくもまあ」の「よく」です。感心しているフリをして皮肉を込めています。
・そんなんで、よく入社できたなあ。
人を見下す表現に「たかが」があります。「たかが~の分際で」のように、人の地位に結びつけて低く見る語感のある副詞です。
・たかがパートの身で、アルバイトに指示を出さないでもらえないかな。
「無駄に」は、力の入れどころを間違えており、見当違いの努力をしているという意味で、嘲笑している感じがあります。
・無駄に丁寧に書類を作ったところで、誰が喜ぶの?
同僚で「勝手に」「無断で」という言葉を使ってくる人がいたら要注意です。本当に「勝手に」「無断で」やっていたら越権行為ですが、周囲が困っているのに放置が続き、見るに見かねて手を出さざるをえないことはあるものです。
・私の許可なく、{勝手に/無断で}メールを送らないでくれる?
非難の意味も込めて「しょっちゅう」を使われるのもつらいものです。年休を取るのは労働者の権利のはずなのに、半年に数回年休を取っただけで、「しょっちゅう」と言われてへこむこともあります。
・また年休取得? しょっちゅう取ってるじゃん。
有無を言わせない高圧的な「とにかく」にも悩まされます。とてもじゃないけれどもできない量の仕事なのに、否応なしにせざるをえない状況に追いこまれます。
・この仕事明日までだから、とにかくやって!
そして、その翌日には「当然」という副詞を使ってたたみかけてきます。
・昨日の午後、依頼した仕事、当然終わらせてくれたよね。
繰り返しを指摘されるのもつらいものです。
・えっ、また、メールの送信ミスしたの?
・それって、前にも言ったよね。
・次からは、そのやり方はやめてよね。
一見、ニュアンスが否定的には見えない副詞でも、使い方によっては、相手の胸に突き刺さる言い方になります。まずは「もっと」から。
・もっと早くできないもんかね。
・どうせやるなら、もっとうまくやってよ。
・いいよ。もっと優秀な派遣に来てもらうから。
「もう」も単独ではネガティブなニュアンスはありませんが、文脈次第でハラスメントの言葉になります。
・わかった。もう会社来なくていいぞ。
・時代について行けないのなら、もう現場は無理だな。
・もう後がないぞ。
ネガティブな評価を持つ副詞はハラスメントにつながりやすく、指摘もしやすいのですが、「もっと」や「もう」、ほかにも「そうか、だからまだ主任なのか」という「まだ」なども、文脈のなかで初めてハラスメント色を帯びてきます。
ある言葉を使えばハラスメントになるのであればわかりやすいのですが、現実には文脈によって言葉の評価の意味は変わるので、ハラスメント認定は難しくなりがちです。
■意外な一言で人は傷つく
何の気なしに言った一言で、人を深く傷つけてしまうことがあります。たとえば、「とりあえず、ビールで」とお酒好きの人のまえで言ったら、「とりあえずビールは、ビールに失礼だ」と返されたというエピソードが私の職場では語り継がれています。
また、ある高校生が電車のなかでしていた会話で、
・「ねえねえ、どこ受験するの? どこか合格しそう?」
「最低でも、△△大学は受かりたいな」
という話を聞いた当該の大学の学生が、自分の母校を「最低でも」と言われてショックを受けたという話も耳にしたことがあります。
・簡単に冷やし中華でいいよ。
そう言われた主婦が作った冷やし中華の写真がツイッターに挙げられて話題となったことがありました。冷やし中華を作るのは大変なことで、「簡単に」などと簡単に言わないでほしいというメッセージがよく伝わってきます。
ハラスメント事案として、あるサッカーチームの監督が、控えの選手の扱いについて、本人たちに聞こえよがしに、トレーナー陣にたいして言った一言が問題となりました。
・こいつら適当に練習させておいて。
この「適当に」という一言に、いかに控えの選手を軽く扱っているのかという気持ちがにじみでています。
身近な事例では、我が家の娘が、買ったその日に壊れたファスナーを手にして言った一言が印象的でした。
・さすが100円ショップ。
100円ショップには申し訳なく思いますが、痛烈な皮肉がこもった表現です。
私にも、学生からこんなメールが届きました。
・昨日、先生が教室にお忘れになった書類、私が預かっておりますのでお届けにあがります。明後日、国立国語研究所の図書室に調べたい本を見に行く予定があるので、ついでに先生の研究室に立ち寄ります。
私自身は、調べたい本のついでかと、何とも言えない寂しい気持ちになりました。当の学生に聞いてみたところ、先生にできるだけ負担を感じさせないように言ったつもりで、本当はついでではなかったのだそうです。日本語の難しさを感じました。
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以上、石黒圭氏の新刊『コミュ力は「副詞」で決まる』(光文社新書)をもとに再構成しました。コミュニケーション向上の鍵となる副詞について、使い方の勘所を解説します。
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