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前明石市長・泉房穂氏が公職を離れぶっちゃける「たしかに私は口が悪い。ただこれでも発言を抑えていた」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第1回】

社会・政治 投稿日:2023.05.13 06:00FLASH編集部

前明石市長・泉房穂氏が公職を離れぶっちゃける「たしかに私は口が悪い。ただこれでも発言を抑えていた」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第1回】

何度も舌禍を招くも「これでも発言を抑えてきた」という泉氏

 

 明石市長時代に、子ども予算倍増など、全国に先駆けた施策を断行し、10年連続で人口増を実現した泉房穂氏(59)。数々の改革を決断するたびに政敵と戦ってきた泉氏が、公務を退いたいま、胸中を語る。

 

 4月30日、3期12年に及んだ明石市長の任を終えました。その間、「暴言」がきっかけで私は一度、辞任して再選しました。2022年10月にも、市議を恫喝したとして問責決議を受けたように、たしかに私は口が悪い。ただ市長としては、これでも発言を抑えていたんです。「奥歯にものが挟まった」どころか、奥歯にガーゼをグルグル巻きにしていたようなもの。自由の身になった今、できるだけ“ホンネ”を言わせてもらおうと思います。

 

 

 これは自慢になりますが、私は市長として、これまで多くの政治家ができなかったことを実現してきました。

 

 ひとつは「子どもは未来」をまちづくりの基本方針に掲げた、数々の施策。まあ、子ども政策なんて、誰でも口では言うけど、本気で取り組んだ政治家はいなかった。子どもを応援すると街が元気になり、老若男女がハッピーになるということを私は示したんです。

 

 さらに「誰一人取り残さない」というビジョン。つまり、一人親家庭の子供や障害者など、弱い立場の人たちを支援しました。離婚家庭の養育費の立て替えもそのひとつです。

 

 こうした政策の結果、明石市は10年連続で人口増を成し遂げました。人口の増加率も、全国に62ある中核市のなかで第1位。もっとも人口増が目的ではなく、市民が暮らしやすいまちづくりをした結果として、人口が増えたんです。

 

 具体的に何をやったか。まずは、カネを子ども施策に注ぎ込みました。いま、国は「子ども予算倍増」と言っていますが、明石では、子ども予算を12年間で2倍以上に増やしました。市の年間予算は約2000億円で、そのうち子ども予算は、私が市長をやる前年は125億円。それが直近では297億円と、2.38倍にしたんです。財源調達のためには、増税したわけでも、新たに保険をつくったわけでもない。予算内でやり繰りしただけです。

 

 これらの「改革」に対し、抵抗する“敵”も当然、現われた。彼らが、私が闘ってきた「ケンカ」の相手です。

 

 明石市は過剰な公共事業など、俗に「ムダ」と言われる部分を削って、子どもをはじめとした市民に振り向けてきました。こうした施策は子どもや障害者、高齢者は喜びますが、一方で怒る人が出てくる。誰かというと、これまで“おいしい”思いをしてきた一部の業界団体、そして彼らと結託した市議会議員です。

 

 子ども予算は2.38倍に増やしましたが、公共事業費は3割、4割減らしましたから、減らされた側は「ええかげんにせえよ」となる。ただ私に言わせれば、これまでが異常だった。偏ったカネの配分を適正化しただけです。

 

 市職員の総人件費も20億円減らしました。これまでは、昼間はタバコ休憩をゆっくり取って働かず、残業代で稼いでいた職員が多かった。そこで残業代を半分にしたもんやから、彼らのうらみを買った。

 

 カネ以外は、「人」に手をつけました。明石市では「適時適材適所」を掲げています。まず「適時」については、ほかの自治体の定例人事異動が年に1回のところ、明石は年間27回やった。つまり、隔週で月2回。そらまあ、役所文化に染まった職員は「やめてくれ」と言うでしょう。

 

 加えて「適材適所」で、これまで必ず部長や課長になれた人が、なれなくなった。「適材」でない職員は、出世できなくなったわけ。私が市長になった当時は、59歳、60歳の定年間際にご褒美のような形で部長になる慣習でしたが、それを全部やめた。いまは30代の課長も、50代の部長もいます。

 

 明石市は職員の数も、じつは人口割合で、兵庫県でもっとも少ない。これは少数精鋭化を図ったからです。たとえば、弁護士などさまざまな資格を持っている職員を採用することによって、「ひとりで2人分働ける」人材を増やした。これは、市民にとってはハッピーですが、一部の職員からすると「かなわん」わけです。

 

 一方、多くの職員は、いまの市政に誇りを持っていますし、市民のほうを向いてテキパキ働いていて、やりがいを感じています。大多数の市議会議員も、なんやかや言いながら、市の予算や方針には賛同いただきましたし、商店街も建設業界も不動産業界も、明石が元気になったことで潤うと、私の方針に「イエス」と変わっていきました。

 

 不満を持っていたのは一部の勢力にすぎませんでしたが、そのマイナス感情を抱いた職員が、私に不利な情報をマスコミにリークしました。私の発言を盗聴し、その一部を切り取って暴露したのです。マスコミもそれを鵜呑みにして、「職員がこう言っている」と書く。

 

 ただ、「火のないところに煙」というように、私は口が悪いのは事実だから、「暴言」の部分だけ流されれば、パワハラがあったことにされてしまう。それが、2度にわたる暴言問題の経緯です。

 

 それでも市民は私を理解してくれていて、私が街頭に立つと、「マスコミに負けないで」と多くの声援を送ってくれた。今回も、市長選で私の後継として立った丸谷聡子氏が圧勝したように、明石市民は私を信じ続けてくれました。

 

 リークだけでなく、「殺害予告」もありました。私は市長就任1年めにさっそく、公共事業などの見直し、職員の総人件費の削減に踏み切りました。公共事業では下水道予算を600億円から150億円まで、4分の1に減らした直後、「殺すぞ」という脅迫文が届いたんです。「来たな」と思いましたね。犯人が誰かはわかりませんが、推して知るべしです。

 

 いままでは黙っていましたが、役所には表に出せない、墓場まで持って行かなあかん話がいっぱいある。裏金や業者への口利きの話を、私はいくつも知っている。もちろん、明石市だけの問題じゃない。

 

 全国の市長会に出ると、「子供が最優先」と言いながら、心ではそう思っていない人が多い。市長会が終わった後の懇親会で、そのホンネが出ます。堂々と「本当はしたくないんだよね、子ども施策なんて」って言うからね。票にならんから、ホンネではやりたくないんですよ。まあ、政治家は私利私欲やから。

 

 そして、官僚は責任を取りたがらんから前例踏襲主義だし、平気で嘘をつく。私欲にまみれた政治家と嘘つき官僚によって、この社会はおかしくなっています。政治家はしっかりと市民、国民を見て仕事をし、自らの責任と決断で官僚を動かさないといけない。私は、それを明石で実践してきたつもりです。

 

 今後、私は社会活動家として、政治家、官僚、業界、そしてマスコミにはびこる“敵”と戦っていきます。

 

いずみふさほ
1963年、兵庫県明石市生まれ、明石市育ち。東京大学教育学部卒。弁護士。元衆院議員(2003~2005年)。前明石市長(2011~2023年)。現在は日本社会を変えるべく活動中

( 週刊FLASH 2023年5月23日号 )

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