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75歳以上の医療費「原則2割」検討に賛否…「3割にすれば少子化対策3兆円まかなえる」との主張も

社会・政治 投稿日:2023.06.01 16:10FLASH編集部

75歳以上の医療費「原則2割」検討に賛否…「3割にすれば少子化対策3兆円まかなえる」との主張も

 

 5月29日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、政府の少子化対策の財源確保に向けて、75歳以上の後期高齢者医療費窓口負担を原則2割に引き上げるよう検討すべきとした。

 

 政府は児童手当の拡充などの対策に年間3兆円程度の財源確保を検討している。

 

 財制審は「全世代型社会保障の考え方に立って医療・介護などの歳出改革を断行する」ことを求め、75歳以上の医療費窓口負担を原則2割にすることについて「前向きに検討される必要がある」と明記した。

 

 

 財制審は過去にも後期高齢者の窓口負担の引き上げを検討するよう訴えてきた。75歳以上の窓口負担は原則1割で、2022年10月には、一定所得がある人について2割に引き上げられた。これを「原則2割」とすることで、さらなる引き上げを訴えた形だ。

 

 75歳以上の医療費窓口負担を「原則2割」に引き上げることに、SNSでは賛否が渦巻いた。

 

《扶養控除廃止ではなく、こっちで児童手当の財源を確保するなら真っ当なので支持します。今まで1割負担から2倍の負担となるので高齢者はキツいかもしれないけど、下の世代は将来もっとキツい思いするので間違いではないはず》

 

 と賛同する声もあれば、否定的な声も。

 

《高齢者の負担を増やすということは、その高齢者の生活を支えてる息子・娘の負担が増えるということなんですが…だって大半の高齢者はもう今以上に収入を増やすことはできないのだから》

 

 さらには、「窓口負担3割」を主張する声もあった。

 

《後期高齢者、医療費2割負担じゃなくて現役世代と一緒の3割負担にしろって。後期高齢者にも公平な負担を》

 

《後期高齢者医療制度を3割負担にするだけで、世代間の窓口負担の不公平是正と少子化対策の財源が捻出できるんだが》

 

《本気で少子化対策するなら平均金融資産2000万もある75歳以上の後期高齢者1割から3割値上げ。約3兆円財源ができ余計な事しなくてすむ》

 

 75歳以上の窓口負担を3割にすれば、少子化対策3兆円がまかなえるのか? ファイナンシャルプランナーの坂井武氏に話を聞いた。

 

「75歳以上の高齢者は、窓口負担が1割で総額1兆5000億円。これが3割になれば単純計算で4兆5000億円になって、3兆円はまかなうことができます。

 

 年代別の平均貯蓄額を見ると若い人は貯蓄額が少ないし、生活が苦しい。貯蓄額が多い60代、70代に頼らざるをえない面もあります。ただ、75歳以上の後期高齢者の窓口負担を3割にするのはかなりハードルが高いといえます。3割になるにしても、段階的でしょう。

 

 平均貯蓄額を見ると60代で約3000万円、70代で約2700万円。60歳から65歳はいま継続雇用で働いているので、65歳から70歳で貯蓄を300万円取り崩していると考えていい。さらに、70歳から75歳でも300万円貯蓄を取り崩すと考える。そのうえ、年齢的に医療費が増すのでそれ以上を予定しなければならない。医療費窓口負担を3割にしたらどれぐらい影響があるか。

 

 75歳以上の後期高齢者は、物価が上がっているうえ、マクロ経済スライド(物価が上がっても年金は同等には上げない制度)で年金は目減りして、さらに3割負担になると医療費が高くなるわけで、三重苦になってしまう。

 

 平均寿命で見ると男性は81歳で女性は88歳。70歳で貯蓄が2700万円あれば、平均寿命まで生きても余るはずですが、後期高齢者ともなれば老人ホームなど高齢者施設に入ることを覚悟している人が多い。

 

 高齢者は保守的で石橋を叩いて渡る感があって、貯蓄額が2000万~3000万円ないと施設に入れないと考える人も多い。また災害など不測の事態が起こったことなども考える。

 

 だとすると、貯蓄額が減るのは大きな不安材料。そのなかで医療費が3割負担となれば、相当な精神的苦痛になります。もちろん、2割でも大変ですが」

 

 財政面からみると、2割負担であっても1947~1950年生まれの団塊の世代が75歳以上になってきているので、人数増により当面は1兆5000億円より増える可能性がある。

 

 逆に言えば、団塊の世代が平均寿命を迎えると人数が減少することで金額が減り、十数年先には少子化対策費との収支バランスが崩れることも予想される。

 

 岸田文雄政権は、少子化対策として児童手当を高校生まで拡充し、月1万円を支給することを検討している。一方、16~18歳の子供を持つ家庭に適用される年38万円の扶養控除の縮小も検討する。

 

「仮に38万円の扶養控除が廃止されれば、所得税率が20%の世帯で年間7万6000円、10%の世帯で3万8000円(平均6万円)の税金の負担が増えます。児童手当で年間12万円もらっても、扶養控除の廃止という “増税” で、相殺すると6万円くらいしか恩恵がないことになります。

 

 12万円もらっても半分の6万円。月だと5000円。大学に行くには最初に入学金が100万円程度。授業料も最低で数十万円かかります。

 

 このように、児童手当などを支給しても、半分は税金で戻してもらい、子育て世代の恩恵は半分しか与えられないというのが気になるところです。

 

 とはいえ、将来的な不安はあるものの、今回の対策が出生率の上昇につながってほしいものですね。また、生活として潤った実感・将来への期待をもてる対策であってほしいと願います」(坂井氏)

 

 5月31日、岸田首相は、後藤茂之経済再生相らと首相官邸で会談。「異次元の少子化対策」をめぐり、2024年度からの3年間に集中的に取り組む「加速化プラン」の予算額について年3兆円台半ばとするよう指示した。年3兆円程度の予算額から積み増したわけだが、これで出生数の増加につながらなかったら目も当てられない。

( SmartFLASH )

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