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異次元の少子化対策は効果なし「国債で財源確保できるなら、国民に負担を求めるな!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第5回】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.06.09 06:00 最終更新日:2023.06.09 06:00

異次元の少子化対策は効果なし「国債で財源確保できるなら、国民に負担を求めるな!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第5回】

辞職した岸田翔太郎氏(右)。ボーナスは受け取らないという。「息子が要職に就き、高給をもらっていたことが驚き」(泉氏)(写真・共同通信)

 

 岸田文雄首相(65)は、長男で首相秘書官の翔太郎氏(32)の更迭を5月29日に発表したけど、遅すぎるわ。首相の外遊中に公用車で買い物や観光をしたり、公邸で忘年会をしたりとやりたい放題で、年収1300万円以上ももらっとったんやからびっくりするわ。岸田首相の“息子ファースト”施策の結果やね。

 

 政治家にいちばん必要なのは、人事で公私混同は絶対しないという厳しい姿勢。私は、それを明石市長として貫いてきました。

 

 

 12年前、市長になったときに最初にやったのが、妻の父のクビを切ることでした。

 

 地元で旅館業を営んでいた義父は当時、観光協会の会長をコツコツと真面目に続けていましたが、私が市長になった瞬間に「辞めてください」と、お引き取りを願ったんです。そして、個人的な関係がまったくない別の方に会長になってもらいました。

 

 さらに、選挙運動の中心となって動いてくれた長年の友人も、市長当選後に“出入り禁止”にした。彼はそれまで、毎月のように市長室に出入りしていた市政の有力者の一人でしたが、私が市長になってから12年間、一度も市長室には来ていません。

 

 なぜ、ここまでするか。それは、政治というものは市民の信頼を得ないと成り立たないから。市長の親戚や友人が重要なポストにいるだけで、市民の誤解を招きかねない。もちろん、義父や友人を特別扱いしたことはいっさいありませんが、疑われるようなことはやらないほうがいいと考えた。この姿勢が、市民に評価されたんちゃいますか。だからこそ、明石でさまざまな改革を実行できたと思ってます。

 

 そんな私からすれば、岸田首相のように、自分の息子を秘書官にするなど論外。息子がかりに優秀であったとしても、身内を登用するのは禁じ手。しかも、当初は「厳重注意」にとどめて、かばい続けてきた。親も子も、それが「国民の目にどう映っているか」という想像力が欠けていた。

 

 岸田首相には息子じゃなくて、日本全体の子どもたちを大事にしてほしい。いまこそ子ども予算を倍増し、子どものための施策を実行するチャンスなんです。

 

 ところが、明らかになりつつある「異次元の少子化対策」の中身は話にならん。どれをやっても、なんの効果もない。項目ごとに問題を指摘していきます。

 

 まず、全体の予算は3兆円。これには、少子化対策とは直接、関係がないものまで含まれているし、わずか3兆円とは金額が少なすぎて情けない。

 

 たとえば、経済的支援強化に1.5兆円。これでは、ほとんど何もできない。経済的支援だけで3兆円にすべき。

 

 児童手当の強化として「第3子に3万円を支給」とされているが、第3子からでは遅い。カネの問題で国民は出産を躊躇しているんやから、第1子、第2子についても手当を厚くせなあかん。

 

 医療費の無償化にしても、一部限定ではなく、18歳までの所得制限なしでの完全無償化が必要。そして、医療費のみならず、保育料も給食費も、国が全国一律で無償化すべきです。

 

 教育費の負担軽減がうたわれているが、軽減ではなく、無償化なくして少子化は止まらない。奨学金も、低所得者層限定では効果がない。

 

 幼児教育・保育の質向上も掲げられているが、質の向上は当然のことで、これは新たな対策には当たらない。

 

 そして、共働き・共育ての推進に0.7兆円。やるなとは言わんけど、これも当たり前のことで、あえて提示する必要はない。

 

 財源についても問題だらけ。所得に占める税金や社会保険料の割合である国民負担率が、日本は約47%と、諸外国並み。いま以上に国民が負担する必要はなく、政治の責任で財源を確保すべきです。

 

「支援金制度」を創設し、約1兆円を調達するとされているが、そのために社会保険料を「月500円」上げることが想定されている。しかも、扶養控除の廃止の案も上がっている。これらは、国民の生活を苦しめる愚策です。保険料の上乗せも500円で済むはずがないし、後で上げていくという寸法が見え見え。

 

 社会保障費の歳出改革の徹底で1.1兆円を捻出するという。いまの国の政治は無駄遣いだらけなんやから、歳出改革だけで、もっと多額の財源を捻出できるはずよ。

 

 消費税収の活用をいうなら、「財源がない」と、政府に忖度して報道している新聞の軽減税率8%を廃止し、10%にしてみてはいかがか。

 

 子ども特例公債導入の案もありますが、公債で当面の財源が確保できるなら、急いで国民に負担を求める必要は、そもそもない。

 

 こうして見ていくと、少子化対策の政府案は、まったく不十分。とりあえず、官僚が作った案を並べてみただけ。

 

 子育て政策のポイントは、子育てをしたい方々や、すでにしている方々に「安心」を提供すること。「これで高校、大学に通うまでちゃんと学費を払い続けられるから子供を産んでも大丈夫」と、思ってもらうことが重要なんです。

 

 当然、いちばん必要な対策は、子育てや教育にかかる費用の大胆な負担軽減、さらには無償化です。

 

 しかし、今回の案のような、気持ち程度の児童手当や奨学金の拡充では意味がない。しかも所得制限があれば、夫婦で頑張って一生懸命稼いでいる世帯は対象から外れるわけだから、これでは「頑張るな」というメッセージにしかならない。少子化に歯止めをかけるどころか、加速させる政策と言わざるを得ない。

 

 政策を実行するにはスピード感も大事。対策案では「2030年代」に向けて実行すると言っているが、いつの話やねん! 3年以上先のことなんて、政治の世界では“空手形”ですわ。来年やるべきです。

 

 岸田首相自ら「異次元」とまで言っておられたのに、出てきた案がこれかい! しかも、財源の議論は先延ばし? そして、その負担を国民に負わせるんかい! 国民は三重の失望でしょう。

 

 明石ではすでに子ども予算を倍増し、医療費、保育料、給食費、おむつ代、公共施設の利用料の「5つの無料化」を実現した。児童手当についても、18歳まで所得制限なしの給付を、2023年度からスタートしています。

 

 明石のような小さな街でできたことを、国はなぜできないのか。明石では市民の負担なしにやっている施策を、国はなぜ国民に負担させて実行しようとするのか。理由はシンプルで、子供を優先した予算シフトができていないから。

 

 だがそれは、予算編成権と人事権という絶大な力を持つ首相が決断すれば、すぐに実行できること。岸田首相には、いくらまわりが反対しようが、自分の息子を秘書官にした“決断力”がおありです。子ども政策も、ぜひ大胆に即断即決をお願いしたい。

( 週刊FLASH 2023年6月20日号 )

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