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鈴木エイト「私を脅迫するのは “安倍シンパ”」安倍元首相銃撃事件から1年、統一教会「最後のあがき」と「本家の資金不足」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.07.04 06:00 最終更新日:2023.07.04 16:48
ズドン、ズドン――。
奈良県・大和西大寺駅前に2発の銃声が響き渡ったのは、2022年7月8日のこと。山上徹也被告の放った銃弾は、演説中の安倍晋三元首相の首に命中し、同日17時に死亡が確認された。この日以降、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)がにわかに世間の関心の的となった。
「山上被告の実母は統一教会の熱心な信者で、教団に1億円以上の献金をして自己破産しました。山上被告はその影響で不遇な少年期を過ごし、ビデオメッセージを寄せるなど、教団と密接な関わりを持っていた安倍元首相を狙ったと見られます」(社会部記者)
【関連記事:鈴木エイト氏 統一教会と“戦う取材”20年!「拉致してやろうか」と脅迫…自民の親密議員からは街頭で直接圧力】
事件を機に、統一教会が抱える問題に多くの注目が集まった。霊感商法や、信者に課される過剰な献金ノルマ、韓国の教団本部への年間数百億円にのぼる送金と、政治家との密接すぎる関係……。こうした問題を、21年前から追及し続けてきた男がいる。ジャーナリストの鈴木エイト氏だ。
「昨年7月以降、生活が様変わりしました。これまで20年間、大きなメディアに取り上げてもらうことは、ほとんどありませんでしたから。街を歩いていて『テレビで見ました。頑張ってください』と、声をかけられることも増えました」(エイト氏・以下同)
一方、統一教会の問題は何ひとつ解決していないという。
「自民党と教団の癒着の実態は解明されていません。昨年8月に茂木敏充幹事長が “点検” と称するアンケート調査をおこない、統一教会との関係について『党として組織性がないことは確認済み』と、点検に先んじてわざわざ表明していました。実際、この調査はかなりいい加減でしたよ。すでに新たな言い逃れを始めた議員もいます」
たとえば2022年の参院選直前に、生稲晃子議員と地元・八王子の統一教会を訪問したとされる萩生田光一政調会長は、“人違い説” を唱えている。
「萩生田氏は市議時代から教団施設に通っていた疑惑について周囲に対し『背格好が似ていたから、ある多摩市議に間違えられた』と語っているそうです」
教団と深い関係がある議員は、今夏 “解散命令” という名の踏み絵を迫られるという。
「被害者たちが文化庁からヒアリングを受けており、私が関係者に取材した感触では、8月中には教団に対して解散命令請求が出されそうです。
教団と一緒にバーベキューを楽しむ写真など、いろんな “弱み” を握られているとされる萩生田氏は、昨年10月に解散命令請求について否定的な発言をしました。
教団は最後のあがきとして、同様に関係の深い議員に対し、解散命令請求を出さないように活動しろと、圧力をかける可能性があります。教団の “逆襲暴露” を恐れ、弱腰な発言をする議員が出てくるはずです」
特に、エイト氏が追及するのは菅義偉前首相だ。
「教団の誘いで米国へ外遊した武田良太氏のほか、下村博文氏や山谷えり子氏など、疑惑の大物議員はたくさんいます。そして、その頂点が菅氏ですよ。
私は、一時期、統一教会と関係が離れていた安倍元首相を再び教団と結びつけた議員の一人は、菅氏だと睨んでいます。多くの議員が亡くなった安倍元首相に “罪” をなすりつけていますが、自ら教団にすり寄っていた議員はもっといるはずです」
事件直後は各地の支部を閉鎖するなど、鳴りを潜めていた教団だが、すでに教勢を回復しつつあるという。
「教団の内部資料によると、関東圏での新たな信者の獲得数は、昨年12月時点で、事件前の水準に回復したようです。しかし、本国ではひと騒動起きていますよ。
教団内でナンバー2の幹部だったユンヨンホ氏が、5月9日に更迭されたんです。尹氏は、安倍元首相やトランプ前大統領の教団ビデオメッセージへの出演などを手配した人物です。
こうしたVIPには数千万円から数億円の報酬を払うのですが、ユン氏がこの報酬を中抜きし、不正に蓄財していたことが発覚しました。さらに教団の帳簿も、総裁の韓鶴子氏が喜ぶように過大に粉飾していました。
今回の更迭により、本来の財務状況を知った韓氏は、教団が実際には資金不足に陥っていることに驚き、慌てて韓国内の不動産を売却しています」
苦境の “マザームーン” が頼るのは、“金づる・日本” だ。
「日本政府の監視を恐れ、中止になりましたが、6月中旬に日本の幹部100人に対し、1人99万円を持たせて訪韓させるという計画がありました。9月には同国本部に2世信者を集めるイベントがあり、そこでも隠れて資金を移動させる可能性があります。
解散命令が出ると、宗教法人ではなくなるので、税制上の優遇がなくなり、固定資産税を払わなければいけなくなります。教団は今後、信者からお金を奪い、韓国へ送金するシステムを維持できなくなる可能性があります。少なくとも、規模は小さくなるはずです」
統一教会をここまで追い込んだのは、エイト氏をはじめとする、カルト問題を取材し続けてきたジャーナリストたちの長い苦闘だ。
「教団関係者から殴られたことは何度もあります。安倍元首相の国葬を取材した際『鈴木エイト死ね!』という声が通りがかった車から飛んできました。今は、事件直後に比べると、危険度が減ってきたと思います。
ところが、山上被告は、僕が統一教会と安倍政権について書いた記事を熱心に読んでいたということを知りました。さらに、山上被告のアカウントが消えたせいで文面は残っていませんが、じつはツイッターのダイレクトメッセージで、私が犯行前の山上被告と直接やりとりしていたこともわかりました。
そのため、熱狂的な “安倍シンパ” の間では『鈴木エイトが犯行を教唆した』という陰謀論が作られているんです。教団より今は彼らに対して身の危険を感じます。
『お前のいい加減な記事を山上が読んだせいで、安倍さんは殺されたんだ』という誹謗中傷がガンガン来ていますし、誰を狙っているのかわかりませんが、自宅の近くに不審者も出ています」
それでもエイト氏は、安倍元首相の命日に、事件現場を直接取材するつもりだという。
「つい最近、山上被告の本を書くために、これまで山上被告やその家族が暮らしてきた建物を自転車でまわったんですよ。ボロアパートの塗装の剥げた階段を見ると、グッと感じ入るものがありました。やはり直接目にすることが大事なので、命日には事件現場に行こうと思っています。念のため防刃ベストを着たほうがいいんでしょうけど……この季節は暑いんですよね(笑)」
と、涼しげに笑うエイト氏。“マザームーン” が地に堕ちるまで、追及の手が止まることはない。
写真・本誌写真部、時事通信、共同通信、アフロ