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70年談話「まるでクレーム対応のよう…」と専門家

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2015.08.20 06:00 最終更新日:2016.03.04 23:50

 

70年談話「まるでクレーム対応のよう…」と専門家

「全体として格調高く、非常に練られた談話という印象を抱きました。しかし、部分、部分を見ると、言葉は悪いが、ごまかした感は否めません」

 

 そう疑問を呈するのは、政治ジャーナリストの角谷浩一氏だ。14日、閣議決定後に安倍晋三首相(60)みずから記者会見を開き発表した「戦後70年談話」。その最大のキーポイントは「おわび」の文言を入れるかどうかにあった。「おわび」を入れないことにこだわる首相の気持ちを、側近の萩生田(はぎうだ)光一総裁特別補佐が代弁する。

 

「日本的文化では、頭を下げるのはそんなに苦じゃない。でも、価値観が違う外国から見れば、“謝ったじゃないか”と政治カードにされてしまうのです。“正しい戦争だった”なんて言う気はまったくありませんよ。でも、これまでの自民党の政治家が、“頭を下げるから、許してくれ”という手法でやってきたことが、外交関係を複雑にしてきた、という反省があるんです」

 

 が、6月、菅義偉官房長官が70年談話の「閣議決定の見送り」を検討していることを認めた。「中国の反発への配慮、そして中国との首脳会談を実現するため、閣議決定せず、私的メッセージに“格下げ”する案が急きょ浮上してきたのです」(政治部記者)

 

 8月6日、首相の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」が出した報告書にも、「おわび」の言葉はない。土壇場で「閣議決定」と「おわび」を強く求めたのは、公明党だった。

 

「公明党としては、“私的談話といっても、発表されれば国際的には、日本政府の見解と受け取られる。ならば、事前に閣議決定で、中身に関与して歯止めをかけたほうがいい”と考えたわけです。安保法制では、支持母体の創価学会員がデモに加わるなど、公明党は突き上げを受けている。だからこそ、公明党は安倍談話に注文をつけざるをえなかった」(自民党ベテラン秘書)

 

 70年談話発表翌日の15日に、全国戦没者追悼式典が開かれることも大きかった。天皇陛下のお言葉である。

 

「閣議決定もされず、おわびもない安倍談話と、陛下のお言葉に大きな乖離が生じてしまう。安倍談話が二転三転し迷走したのは、天皇陛下の歴史への思いが、安倍首相に通じていなかった点も大きい」(別の政治部記者)

 

 追い詰められた安倍首相が取ったのが、対象を名指しせず「おわび」に触れる一方、「子や孫、その先の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と、謝罪の繰り返しに歯止めをかける手法だった。

 

「おわび」が盛り込まれたことで、公明党の山口那津男代表は、談話を評価する立場を強調。そして70年前、激戦を極めた硫黄島で、最高指揮官を務めた栗林忠道・陸軍大将の孫である新藤義孝前総務大臣も「とてもよい談話だった」と評価した。自民党保守派も公明党代表も評価する談話だが、前出・角谷氏は苦言を呈する。

 

「『村山談話』、『小泉談話』と違う談話を出すと意気込んでいたわりに、大事なものをボカした感じを受けました。それぞれの立場に配慮する当たり障りのない表現。まるで、秀逸なクレーム対応を見ているようでした」

 

 川内原発再稼動当日は別荘で過ごし、その3日後の談話発表。練りに練られた「安倍談話」に、首相の「真の覚悟」は見えなかった。

 

(週刊FLASH 2015年9月1日号)

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