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頻発する豪雨災害、ガソリン・ディーゼル・電気自動車で浸水被害は違うのか? 専門家に聞いた
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.07.17 20:10 最終更新日:2023.07.17 20:10
7月3日から九州地方、7月15日からは東北地方が相次いで豪雨に襲われ、各地で甚大な被害が起きている。テレビのニュースなどでも、冠水した道路で動かなくなった多くの車が映し出されていたが、なかには車内に取り残されたドライバーが死亡するという、痛ましい事故も起きている。
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車はいったい、水深がどのくらいになったら走行不能になるのか。JAF(日本自動車連盟)のホームページには「冠水走行テスト」をおこなったデータがある。それによると、セダンタイプ(試験車両jはトヨタ・マークII)は、水深30cm(タイヤの3分の2程度の高さ)のときは時速10km、30kmのスピードどちらでも走行できたが、水深60cmになると、時速10kmのスピードで走行不能になった。
SUVタイプ(試験車両は日産・エクストレイル)が同じ条件で走行すると、水深60cm(タイヤの高さと同じくらい)、時速30kmのスピードで走行不能になった。エンジン位置が高いため、セダンタイプより走行ができたという。水深がこの程度でもエンストすることに驚かされる。
同ホームページには、水没により走行不能になったときの注意点も書かれてある。冠水した車両は、キースイッチが切れた状態でも、バッテリーが接続されていれば、電気系統(エンジン・ヘッドライトなど)の漏電で火災が発生する可能性がある。そのため「いきなりエンジンキーを回さない、エンジンボタンを押さない」「ボンネットを開け、水に浸っているようであればバッテリーのマイナス側ターミナルをはずす」「はずしたターミナルがバッテリーと接触しないような絶縁処置をする」「HEV(ハイブリッド車)・BEV(電気自動車)は、むやみに触らない」などの注意が必要だという。
BEVやPHV(プラグインハイブリッド車)には、高電圧バッテリーや高電圧部品が使われているため、露出した高電圧ケーブルなどに接触すると、感電する恐れがあるとしている。
エンジンのタイプによって、浸水被害の受け方は違うのだろうか。モータージャーナリストの菰田(こもだ)潔氏に聞いた。
「影響を受けやすい順にディーゼル、ガソリン、HEV、BEVです。ディーゼル、ガソリンはエアクリーナーを介して、エンジンに空気を吸い込みますが、そこに水が入ってしまうとエンジンが壊れてしまい、エンジン交換が必要なほどの致命的なダメージになることもあります。ディーゼルは圧縮比が高いので、壊れる確率は若干、高い可能性があります。
HEVもエンジンがありますから、エンジンが動いているときに水を吸い込んでしまうと、同じように壊れます。
エンジンがついてないBEVは、高電圧(ボンネットを開けるとオレンジ色のカバーがついた配線)のところまで水に浸かると危険ですが、漏電しないように、自動的にリチウムイオンバッテリーと配線が切り離され、シャットダウンされます」
浸水した車は復活するのだろうか。
「テールパイプ(排気の出口)が水没するくらいになると、排気管を逆流した水で塞がれて、エンジンが止まってしまいます。この程度であれば、水がないところまで移動すればエンジンが再始動する可能性は高いです。シャットダウンしたBEVは、ディーラーの整備工場で回復させれば、再び動く可能性もあります」(菰田氏)
やむをえず、冠水した道路を走らなければならないときの注意点を菰田氏に聞いた。
「サイドシル(ドアの下の敷居)を超える水深がある場合は走らないほうがいいですが、それ以下でも、ゆっくり走ることがポイントです。スピードを出して、ボンネットの上まで水をかぶると、エンジンが水を吸い込む事態になります。
また、室内に水が侵入してカーペットが水を含むと、後からカビやにおいが出て、売却時の価格が激安になってしまいます」
あるメカニックは「シフトレバーを『S』などの低速域設定にしてください。こうすれば、エンジン回転が高くなり、排気口からの浸水を防ぐ効果が期待できます。速度はあくまでゆっくりです」と助言する。パニックにならないように心がけたい。
( SmartFLASH )