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菅義偉前首相、タクシー不足で「ライドシェア」導入目指す…ウーバーに勝った「タクシー王子」の反撃どうなる
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.08.20 19:30 最終更新日:2023.08.20 19:30
8月19日、自民党の菅義偉前首相は、長野市で外国人観光客誘致や地方創生をテーマに講演し、一般の人が自家用車でタクシーのような乗車サービスをおこなう「ライドシェア」の解禁に向け、法改正を含めた議論をすると述べた。
「日本では、有料で乗客を運ぶ場合、緑ナンバー(営業ナンバー)の車を第2種免許を持ったドライバーが運転することが義務づけられています。
もともと、1970年代、80年代は自家用車の白ナンバーでタクシーと同じ行為をおこなう『白タク』が横行していました。しかし、事故が起きたときの補償などが社会問題化して取り締まりが厳しくなり、今ではほぼ見かけません。
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ライドシェアは、通常、登録ドライバー制ですから、一般人が誰でもすぐに人を運べるわけではありませんが、『白タク解禁』と近い意味合いをもつのは確かです」(自動車ライター)
タクシー運転手になるには「応急救護処置講習」や「旅客者講習」が必要な第2種免許に加え、「地理試験」に合格する必要もある。しかし、ドライバー不足などからタクシー台数が需要に満たず、観光地やターミナル駅、空港などではタクシー待ちの長蛇の列ができている。
「菅前首相は、インバウンドが回復してきたことで、交通インフラの充実を訴えています。外国人観光客はもちろん、地元住民もバスやタクシーに乗れず、支障をきたしていますから。『ライドシェア』は世界各国で普及が進んでいて、日本でも解禁を訴える声が大きくなっているのは事実です」(同)
だが、このライドシェアは、過去にタクシー業界と軋轢を生んでいる。
「タクシーは、参入、営業地域、料金、台数などあらゆることが国土交通省などの許可が必要です。言ってみれば既得権益。第2種免許を取得させるため、会社も費用負担などをしていますしね。
そこに、言ってみれば素人が入ってくるのですから、面白いはずがありません。安全性の担保や事故が起きたときの対処、質の高いサービスなどを訴えて猛反対するでしょう」(同)
その「急先鋒」になるのではないかとみられているのが、「タクシー王子」と呼ばれる日本交通の3代め社長、川鍋一郎氏(52)だ。30歳で日本交通に入社。当時、1900億円あった同社の負債を完済し、一躍、時の人となった。妻は中曽根康弘元首相の孫だ。
川鍋氏には「武勇伝」がある。
「2012年、世界最大手のライドシェアであるアメリカのウーバーが日本に参入し、2年後からハイヤーとタクシーの配車サービスをスタートさせました。
このとき、川鍋氏は先頭になって対策を練りました。初乗り運賃を値下げして、さらにタクシー配車アプリを開発、全国の提携タクシー会社を巻き込み、近くを走っている空車をすぐに呼び出せるようにしました。
多くの日本人は『狭い車内で他人と一緒』というライドシェア特有の状況に抵抗があり、ウーバーは完敗しました。今回、菅元首相は外国人観光客の利用を想定しているようですから、そのときよりは受け入れられるかもしれません」(週刊誌記者)
川鍋氏は、2017年12月、『日経XTECH』のインタビューで「自家用車に有料で客を乗せる『白タク』解禁の要否についてどう考えますか」と聞かれ、「はっきり言って必要ありません。『こんなに便利なサービスが海外にあるのに、なぜ日本にはないのか』と主張する有識者もいますが、日本のタクシーは基本的な公共交通としての役割を十分に果たしていると思います」と答えている。
剛腕の菅元首相と、業界の改革を進めた川鍋氏。はたして、ガチンコバトルになるのだろうか――。
( SmartFLASH )