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中国が「原発処理水」放出で猛反発…高級和食店は閑古鳥で「せっかくの『おまかせ』ブームも終わる」嘆きの声
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.08.24 15:11 最終更新日:2023.08.24 15:27
日本政府は、8月24日から、福島第1原発の「処理水」を海洋放出する。放出期間は30年に及ぶが、日本政府は「環境や人体への影響は考えられない」との立場だ。国際原子力機関も「国際的な安全基準に合致している」と妥当性を認めている。
だが、この処理水を「汚染水」だとして、海洋放出に激しく憤っているのが中国だ。
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「中国税関は、7月末から、日本からの水産物に対し、放射性物質の全量検査を始めています。通関には2週間はかかるため、鮮魚などは事実上の輸入停止になっています。
また、『周辺諸国への影響が少ない』として、処理水を蒸発させて大気中に放出する方法も提示してきました。この案は日本政府も一時検討しましたが、大気中の放射性物質のモニタリングが海洋より難しいことから、見送られました」(政治担当記者)
中国ではこうした動きが逐一報道されており、ネットでは《日本に対して市場を封鎖すべき》《日本は道徳心のかけらもない》《間違った措置を正し、排水計画を撤回するよう、強く抗議する》などのコメントが大量に飛び交っている。
厳しい反応は香港も変わらない。香港政府は中国と歩調を合わせ、福島や東京など10都県の水産物の輸入を禁止。こうした措置を受け、香港の飲食業協会の会長で、日本レストラン部門の責任者の陳強氏は「売り上げは7割程度まで減少するだろう」と危機感をあらわにした。
香港在住のジャーナリスト・角脇久志氏も、現地での厳しい反応を目の当たりにしている。
「香港は、自由貿易の国際都市として、水産物をはじめ、日本の食品の一大輸入地域になっています。通関手続きが簡素ですから、高級日本料理店では、朝に豊洲市場で競り落とされた魚をすぐに空輸し、夕方に店で客に提供しています。
しかし、香港でも通関手続きが強化されました。以前に比べ大幅に時間がかかるようになり、このシステムは崩壊、“産地直送” が不可能になってしまいました」
中国・広州で、高級日本料理店を数軒経営しているオーナーが、こう苦境を明かす。
「いま中国の高級日本料理店では、料理長の『おまかせ(Omakase)』がブームとなっています。これは、その日に入った旬の食材を、料理長のおまかせで提供するスタイル。
富裕層や本場の日本料理を知っている中国人を中心に人気を集め、最低1000元(約2万円)ぐらいから提供しています。店としても、仕入れロスが少ないというメリットがありました」
だが、日本産食品の全量検査が始まって、状況は一変した。
「今後は、マグロも日本産からスペイン産に切り替えるしかないですし、他の生鮮食材も、中国の国内産に切り替えられないか対策を考えています。今後どうなるかわからないですが、しばらくは様子を見るしかないですね」
角脇氏は、中国の連日の報道の狙いは「国内経済の冷え込みによる国民の不満をそらすこと」だと見るが、結果は逆に働くのではないかと指摘する。
「中国政府は、日本の水産物などを規制することで、日本の輸出業者にダメージを与え、ひいては日本政府に圧力をかける意図があるのでしょう。しかし、それは同時に、中国側の食品輸入業者、日本料理店経営者にも打撃を与えます。この結果、コロナで落ち込んだ中国経済がさらに悪化することになりかねません」
日本への過剰な措置が、かえって身内の経済を貶めることにならなければよいのだが……。
( SmartFLASH )