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大阪万博は縮小か延期に!建設業界もマスコミも潤うけれど、巨額のツケが国民に【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第14回】

社会・政治 投稿日:2023.08.25 06:00FLASH編集部

大阪万博は縮小か延期に!建設業界もマスコミも潤うけれど、巨額のツケが国民に【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第14回】

工事が進められている人工島・夢洲。来年4月から始まる建設業の労働時間の上限規制で、人手不足がいっそう深刻となる可能性がある(写真・共同通信)

 

 無理してやらんでいい。これが、2025年大阪・関西万博への私の正直な気持ち。7月に実施された「読売新聞」の世論調査では、65%が万博には「関心がない」と答え、まったく盛り上がっていない。  

 

 海外パビリオンの建設も遅れに遅れ、各国が自前で建てる「タイプA」の基本計画書を提出したのは、韓国とチェコのわずか2カ国(8月15日時点)。

 

「撤退も選択肢」と、自民党の船田元氏は言いましたが、開幕まで2年を切り、中止は現実的ではない。私が考えるのは、縮小か延期です。参加国が目標の150カ国から100カ国を切ったって、別にええやん。規模を縮小すればいいし、数より質でアピールすればいいんです。

 

 

 とりあえず、開会に間に合うパビリオンだけで始めて、間に合わないところは開会後も工事を続ければいい。それまでは、建設過程を見せたらおもしろいんちゃいますか。  

 

 あとは、開会スケジュールそのものの延期でしょうか。すべてのパビリオン建設を間に合わせたいなら、1、2年延期するのもあり。規定で延期はできないという反論があるでしょうが、それは嘘。2020年の東京オリンピックだって、コロナ禍を理由に1年延期したやないですか。  

 

 いずれにしても、ここでなんらかの決断をしないと、コストは膨らむし、労働現場も劣悪になる。今こそ、政治家が手腕を発揮するときです。

 

 1970年の大阪万博のテーマは、「人類の進歩と調和」。7歳だった私は万博に行った記憶があり、当時の日本は、このテーマがピッタリくるような状況やった。

 

 1964年の東京オリンピックを契機に東海道新幹線が開通し、1970年の大阪万博の後に山陽新幹線が通って、明石からも東京へ直通で行けるようになりました。各家庭に洗濯機が普及し、テレビがカラーになったのもこのころです。街中で車がたくさん走るようになった。右肩上がりの高度経済成長で、未来が明るかった。

 

 万博のテーマソングは、三波春夫さんが歌った『世界の国からこんにちは』。敗戦から25年しかたっていない当時の日本が、再び国際社会の中に「こんにちは」と入っていくことを示す意味でも、万博開催の意義はあった。

 

 でも、それから50年以上たち、状況はまったく変わった。もう、新幹線やインフラを整備する時代じゃないし、誰でも海外へ行けるようになった。わざわざ高いカネを払って行列作って、パビリオンに並ばんでも、世界の情報はネットでわかる。バーチャル空間だって作れるんやから。50年以上前のハコモノ行政は、もうやらんでよろしい。

 

 そんなことより、国民の生活は疲弊している。30年間、給料が上がらないのに、税金や社会保険料、物価は上がる一方。こんな時代に、巨大イベントにカネを使うことに国民は納得しません。  

 

 このままでは万博は失敗するんじゃないかと懸念されていますが、じつは万博に「失敗」はない。観客が入ろうが入らなかろうが、国民負担が増えようが、参加国が少なかろうが関係ない。

 

 万博をやることによってカネが動けば、それに関わる人にとっては「成功」なんです。パビリオン工事で建設業界は潤うし、万博関連のイベントや広告が増えれば、電通や博報堂、テレビ局や新聞社は御の字。  

 

 万博が失敗しないもうひとつの理由は、マスコミと組んでいるから。マスコミが万博を盛り上げるイベントを催し、特番を組む。『24時間テレビ』のマラソンのゴールのように、マスコミが感動を演出してくれる。だから、どう転んでも万博は成功する。

 

 もちろん、それは国民にとっての成功とは別の話。だって、国民負担率は5割近いのに増税といわれ、さらに万博でカネを使うんかい! 結局、自分たちの負担になるだろうと、国民はみんなわかって冷めているんです。

 

 そもそも、2018年に開催が決まったときには、当時の松井一郎大阪府知事は「税負担なし」と言っていたが、嘘やった。会場建設費は、当初は1250億円と見積もっていた。その後1850億円に修正し、ここにきて再度上振れする可能性が取り沙汰されている。費用が膨張すれば、そのツケは国民に回ってくる。

 

 万博の経済効果は2兆9000億円という試算があるが、そんなもんトリックよ。数字なんかいくらでも作り出せる。実際、パビリオンの工事で、ある程度のカネが回るに決まっている。  

 

 でも、それが生きたカネか死んだカネかという問題。国民からすると、自分たちのカネを使われているだけで、それが、何かを生み出しているわけやない。

 

 そして今回、明らかになったのは、万博を推進してきた維新の政治が、自民党と同じ古い政治そのままやということです。いみじくも、馬場伸幸代表が自ら「第2自民党」とおっしゃったように、根っこは、昔ながらの自民党がやってきたハード面の開発優先、イベントでカネを回すという発想は変わっていない。

 

 万博の会場の夢洲にしても、無駄な開発をして使いみちがなかった土地で、この後にカジノ(IR)が造られるわけです。結局、国民にツケを回すでしょうし、カジノに関しては、国民負担どころか、家庭崩壊を招く。  

 

 横浜市は選挙でカジノ誘致に「ノー」を突きつけたけど、大阪府民は「カジノ、ノー」でも「維新イエス」だから、維新が選挙で勝ったことで、万博もカジノ誘致も強行されてしまった。でも、大阪府民の大部分は、万博もカジノもノーなんです。  

 

 ところが、大阪の芸人が、「万博楽しみです」と言うと、みんなが楽しみにしているように見えてしまう。関西のテレビ局や新聞、芸人が維新と組んで、万博が盛り上がっているような雰囲気を演出していて、マスコミの責任も大きいね。  

 

 万博は影の面も深刻なんやから、マスコミはもっと国民のためになることを報じんかい!

( 週刊FLASH 2023年9月5日号 )

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