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「中国をWTOに提訴」政府・与党内で相次ぐなか「負けたら中国の思うがまま」の危惧 過去には韓国に逆転敗訴も
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.08.31 16:58 最終更新日:2023.08.31 18:05
「さまざまな選択肢を念頭に、世界貿易機関の枠組みなどのもとで、必要な対応をおこなっていく」(松野博一官房長官)
「なんらかの形での対抗措置を、検討しておく段階に入っている。世界貿易機関への提訴も、過去にオーストラリアが(中国に)している」(高市早苗経済安全保障相)
「いままでよりも外交的なレベルを1段階、2段階上げるべきだ」(佐藤正久元外務副大臣)
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東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に反対する中国が、日本産水産物の全面輸入停止措置をとったことに対して、政府・自民党内から「中国を世界貿易機関(WTO)に提訴すべき」という声が相次いでいる。
「WTOは、輸出入の数量制限をおこなうことを加盟国に原則禁止しているので、中国の措置は協定に違反をしています。しかし、結論が出るまでは数年かかりますし、党内には『万が一、2019年と同じようなことになったらどうするんだ』と危惧する意見もあります」(自民党関係者)
永田町では「悪夢だった」と語る議員もいるという、2019年に起きたこととは何か。
「2011年3月、韓国は東京電力福島第1原子力発電所の事故後、福島や岩手など8県産の水産物の輸入を禁止、水産物以外の日本産食品の検査も強化しました。日本は『科学的根拠がない』と撤回を求めましたが、韓国は拒否。そのため、2015年にWTOに提訴したんです。
一審の紛争処理小委員会は『韓国の輸入禁止措置は不当』としましたが、2019年、最終審の上級委員会が、この判断を破棄したのです。これにより日本の敗訴が決定し、韓国の禁輸措置は『お墨つき』をもらった形となりました」(政治担当記者)
WTOへの提訴について、ネットのニュースサイトには《言うだけではなく行動が大切。WTOへの提訴はすぐにでも》《どんどん対抗措置をとりましょう》《法的措置を講じれるものや国際機関に提訴できるものはどんどん実行すべきではないのか》など賛成の声が広がるが、韓国との紛争を考えると「諸刃の剣」でもある。
「もし日本が敗訴するようなことになれば、中国の主張が正しいということになり、欧米各国も中国への批判をトーンダウンせざるを得なくなります。まさに『中国の思うがまま』になる危険があるのです。WTOは『自国民保護のための措置』という主張を重視する傾向にありますから、日本は、よほどの理論武装をしないとハイリスクです」(前出・経済担当記者)
国としてどのような判断を下すか、政権の手腕が問われている。
( SmartFLASH )