社会・政治社会・政治

「俺は天才、でも生きてても無価値だよね」精神科医が分析する、京アニ放火事件・青葉被告の供述の中身

社会・政治 投稿日:2023.10.10 20:40FLASH編集部

「俺は天才、でも生きてても無価値だよね」精神科医が分析する、京アニ放火事件・青葉被告の供述の中身

青葉被告は、熱傷患者の専門治療ができる近畿大学病院へ瀕死の状態でヘリで運ばれた。治療を受けた青葉被告が逮捕されたのは、事件から10カ月余り後だった(写真・共同通信)

 

 2019年、36人が死亡し、32人が重軽傷を負った「京都アニメーション放火殺人事件」で、殺人罪などに問われた彼の裁判員裁判が、現在おこなわれている。犯行の動機を「京アニに自作小説のアイデアを盗まれた」などと語っている青葉真司被告。

 

 裁判のいちばんの争点は、青葉被告の責任能力の有無だ。青葉被告は、「闇の人物に狙われている」「公安に監視されている」などと供述しており、妄想型統合失調症の疑いも指摘されてきた。犯行当時の青葉被告が心神喪失状態で責任能力なしと判断された場合、無罪判決が出る可能性も報じられているが……。臨床心理士の矢幡洋氏が解説する。

 

 

「確かに、妄想傾向の影響はあるでしょう。ただし、統合失調症だからといって、合理的な行動や判断ができないというわけではないんです。統合失調症だけれども、犯行当時、きちんとした合理性・計画性を持っている時点で、責任能力があるだろうと判断されると思っています。

 

 犯行を行った時点で完全に幻覚・妄想に支配されて、全く自分の行動のコントロールが効かなかったなどということでなければ、責任能力ありとみなされるのが、今の精神疾患を患っている犯罪者に対する基本的な判決の傾向です。

 

 その点で言えば、犯行に必要なものを買い揃えるとか、犯行が行われるまでに怪しまれないように行動するとか、青葉被告は犯行時にかなり計画的なことをしています。ある程度、合理性を持った判断を行って、直前まで周囲に怪しまれないで現場に足を運んでいる。その点で、責任能力ありとみなされるケースだと私は見ています」

 

 青葉被告は、自身が10年かけて書き上げたという渾身の小説が、京都アニメーションのコンテストで落選した過去を持つ。そのうえで、その作品を「パクられた」と主張しており、そうした恨みが犯行の強い動機になっているという。公判を重ねても、彼の供述が覆ることはない。

 

「妄想性障害の特徴と言えるかもしれませんが、一旦自分の考えが固まってしまうと、極めて強固なんです。反証を並べても、この人物は考えを変えないと思いますね。本人は、36人もの方がなくなったことについて『やり過ぎた』と話していますが、それでも彼の供述を見ると『盗作された』という彼の考えは変わっていません。

 

 これには、青葉被告の非常に両極端の矛盾した要素が関係していると思います。本人は、『本来は当選するはずだったのに、京アニはそうさせずに盗作した』という考えを持っている。自己評価が過剰に高いですよね。

 

 しかし、もうひとつ注目しないといけないのが、それなのに自己肯定感がものすごい低い、ということです。今までにも『失うものは何もない』などと語っています。自分は無価値だ、社会にいてもしょうがない……そういう自己肯定感の低さがあると思います。

 

『本当の俺は天才、でも生きていても全然社会的に存在価値ないよね……』という両極端の感情があるように見えます。しかし、努力を怠ったとか、選択を誤ったとかといった反省がほとんどなく、社会から攻撃されている、という考えになってしまう。そして、自己評価の高さゆえに、人間関係を『やった、やられた』『勝った、負けた』と、常に競争関係として捉えようとする傾向が強いと思われます。

 

 今回の事件も、いわば“やり返し”ということですよね。京アニや社会、『闇の人物』にやられたからやり返したのだ、と。ただし、『10発殴られたから、8発殴り返すつもりだったが、12殴り返してしまった』という認識なのでしょう。やったこと自体は特に反省していないけど、そういった意味で『やり過ぎた』という発言が出てきたのだと思います。そのレベルの反省ですよ」

 

 青葉被告の口から、“本当の反省の弁”が出てくることは、あるのだろうか……。

( SmartFLASH )

続きを見る

社会・政治一覧をもっと見る

社会・政治 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事