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「“再選狙い”本音バレバレの4万円定額減税。1年限定やなくて恒久減税にせえよ!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第22回】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.11.10 06:00 最終更新日:2023.11.10 06:00

「“再選狙い”本音バレバレの4万円定額減税。1年限定やなくて恒久減税にせえよ!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第22回】

「岸田首相はとくにやりたいことがなく、総理になりたかっただけかと思ったら、まだ続けたいらしい。国民にとっては不幸や」(泉氏)

 

 岸田内閣の支持率低下が止まらない。10月30日にテレビ朝日が発表した世論調査結果では、政権発足以来最低の26.9%に落ち込んだ。一方、「支持しない」は51.8%。

 

 この数字の大きな要因は、やはり「4万円減税」でしょうな。この調査でも、減税について「評価しない」が半数を超えた。

 

 選挙対策のための人気取りというのがバレバレなんやね。「増税メガネ」と悪口を言われたくないから、「減税」を言いだしたと見透かされとる。まるで駄々っ子。「舐めるな!」と、国民が怒るのは当然よ。

 

 

 しかし、「減税」で支持率が下がるなんて聞いたことがない。それは、まず不純な動機に加え、「1年限定」という訳がわからん条件があるから。

 

 1年だけ減税してもなんの効果もあらへん。減税したというアリバイ作りのためやと国民はわかっているし、その後に増税が来ることも知っている。防衛増税は1年先送りしたけど、既定路線やん。

 

 減税だと非課税世帯は対象にならないから、7万円の「給付」を持ちだした。結局、減税したいのか給付したいのかわからん。しかも、減税は1人4万円、給付は世帯7万円というバラバラ感が半端ない。一律給付のほうが、まだスッキリする。

 

 首相の本音は、「減税すれば来年9月の総裁選までもつぞ」くらいでしょう。だから、減税の時期も総裁選前の来年6月。都合がよすぎるわ。

 

 注意しなければならないのは、減税を叫びながら、並行して国民負担を増やそうとしていること。国民年金の保険料納付期間を、現在の60歳から65歳までに延長する案や、国民健康保険の年間保険料の上限を2万円引き上げる案が、厚労省から出ている。減税と一緒に保険料の上乗せと長期化を進めるなんて、やっとることが無茶苦茶。

 

 今回の政府案は一人4万円の定額減税やけど、中間層からしたら通帳残高が少し増えるだけであまり実感はない。非課税世帯も、1回だけ7万円もらったところで、生活は変わらない。いずれにせよ、それによって消費が増え、経済が回ることはない。

 

 こんな愚策にもかかわらず、党内では異を唱える者が現われない。萩生田光一政調会長が、NHKの番組で「(定額減税は)1年と決まっていない」と言ったらしいが、そんなの選挙対策よ。2年にしたとしても意味ない。あまりにセコい。国民はずっと税金を払っとるんやから、恒久減税にせえよ!

 

 翻って、野党案も情けない。立憲は、緊急経済対策として3万円の「インフレ手当」を提案しているが、これもショボいし、バラマキの典型で、選挙対策そのもの。

 

 維新は社会保険料を3割減免し、低所得者は半減する案を発表したが、効果は知れていて中途半端。立憲も維新も、財源がないという思い込みにとらわれている。

 

 じゃあ、お前ならどうするかと言われたら、所得減税や現金給付は貯蓄に回るだけなので反対。もっと生活に近いところへ回せという考え方。

 

 減税するなら、所得税ではなく当然、消費税。消費税率を一気に下げるのが難しければ、食料品や生理用品などの生活必需品の消費税を免除すればいい。実際、食料品の消費税がゼロの国はたくさんある。イギリスは消費税が20%、アイルランドも23%と高いが、食料品はゼロ(例外あり)。

 

 ほかにもフィリピン、マレーシア、メキシコ、韓国、カンボジア、カナダ、オーストラリア、インドネシア、イスラエルでは、食料品に消費税はかからない。日本は消費税率が10%で、軽減税率は8%やけど、わずか2ポイントの差では「軽減」になっていない。

 

 ベーシック・サービスという言葉があり、要は誰もが生きていくうえで欠かせないものを無償化すべきと私は考える。典型的なのが子育て費用の無償化。医療費、保育料、給食費など子育てにかかる費用は負担しなくていい。そうすると、子育て層に安心が生まれ、少子化対策になるし、加えて経済が回る。まさに、明石市がやってきたこと。

 

 さらに、教育の無償化も段階的に進める。日本は教育予算がヨーロッパの半分だから、そこを一気に増やす。そうして、大学の学費や奨学金にテコ入れできれば、消費に回す余裕も出てくる。

 

 財源はある。税と保険料を合算した国民負担率は約5割と諸外国並みだが、国民からすると、取られまくっているだけで何も返ってきていないというのが実感。

 

 いったん、国民負担を打ち止めにし、与えられた財源のなかで予算配分や優先度を見直すべきときなんです。

 

 ちょうど税収も増えた。2022年度の一般会計の税収は、初めて70兆円を超え、消費税収も過去最高の23兆円台の見込み。消費税収分をゼロにしても、10年前の税収とほぼ同じ。財務省が喧伝していたプライマリー・バランス(行政サービスを提供するための経費を、税収などで賄えているかどうかを示す指標)も改善している。今やらずに、いつやんねんというタイミングよ。

 

 普通の家庭は、30年間給料が上がらないなか、懸命にやり繰りしてきたんやから、国も国民負担を増やさず予算シフトをせえよと。何が必要で、何を後回しにするか優先順位を決めろと。

 

 地方自治体も、苦しいなかで子育て費用の無償化を始めた。明石市が先駆けとなり、世田谷区、品川区、福岡市、北九州市など、全国に拡大していっている。

 

 何もしていないのは国だけ。やりもせんと、「カネが足らん」とばかり言っている。

 

 岸田首相は国会で「経済、経済、経済」と三唱したが、今回の減税では、経済を回す努力をせずに、選挙対策で現ナマをプレゼントすることにした。もはや政治やない。

 

 でも、代わりの総理候補は、自民党にも野党にも見当たらん。岸田首相に心を入れ替えてもらうしかないが、私の主張を“聞く力”はあるかな。

 

写真・長谷川 新、馬詰雅浩

( 週刊FLASH 2023年11月21日号 )

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