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「資本金1億円にして税逃れ」怒りの総務省が対策へ…減資した毎日新聞、JTB、HISはどう答える
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.11.12 15:18 最終更新日:2023.11.12 15:40
大企業が資本金を1億円以下に減らして “中小企業化” し、税逃れをしているケースが増えていることから、総務省は課税対象を広げる対策に乗り出した。
資本金が1億円を超える大企業には「外形標準課税」方式が適用されている。いわば、法人の事業規模を基準に課税する仕組みで、所得・資本金・人件費などに対してかかる法人事業税を負担するため、赤字でも課税されるケースが出る。そのため、税負担を軽くするための減資がしばしばおこなわれるのだ。
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外形標準課税の対象企業は2006年の2万9618社をピークに減り続け、2020年には1万9989社とピーク時の3分の2になった。東京商工リサーチによると、2023年3月までの1年間で、資本金1億円超から1億円以下に減資した企業は1235社あり、前年の959社から約3割も増えた。
近年減資したおもな企業をあげると、
●JTB(2021年、23億円→1億円)
●毎日新聞社(2021年、41億円→1億円)
●「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト(2021年、98億円→1億円)
●HIS(2022年、247億円→1億円)
●日医工(2023年、359億円→1億円)
など有名企業も目立つ。
これらの企業に、減資が税逃れという批判があることについて見解を求めると、もっとも多く資本金を減らした日医工をはじめ、カッパ・クリエイトとJTBは無回答だった。そのほかの企業は次のように回答した。
「減資については、2022年8月26日の適時開示リリースにて発表させていただきました通りでございます。世界的な新型コロナウィルスの流行により、海外旅行を主事業とする弊社は赤字が続いており、財務基盤の健全化を図ることを目的に判断しております」(HIS)
「当社が減資をしたのは、毎日新聞グループホールディングス全体への適切な税制の適用を通じて財務内容の健全性を維持するとともに、今後の資本政策の柔軟性および機動性の確保を図るためです。引き続き経営基盤の安定に努め、報道機関としての使命を果たしていきます」(毎日新聞)
大企業の減資について、税理士の鈴木まゆ子氏が解説する。
「今回、『FLASH』が質問した企業の過去3年分の決算を見ると、どこも業績がよくありません。カッパ・クリエイトとJTB、HISはコロナ禍の影響で、毎日新聞は本業である新聞業の低迷、日医工は2021年3月の行政処分と経営再建が赤字の原因と見られます。
したがって、事業改善策の一つとして『税負担軽減のための減資』をおこなったと思われます。
現在、円安と資源高でコスト高となっているため、当面、資本金は1億円のまま維持していくでしょう。事業改善や存続のための、やむをえない選択だったのが各企業の本音だと思います。
ただ、国や地方自治体からすれば、税収への影響は甚大です。とくに影響が大きいのは、地方税の一つである法人事業税です。資本金1億円以下の企業は外形標準課税の対象外となるため、法人事業税がぐっと下がります。地方自治体の税収への影響は少なくないはずです。
減資を選択する企業が急増したことから、地方自治体と総務省からすれば『安易な課税逃れ』に見え、結果、今回の外形標準課税の見直しに至った可能性があります。
外形標準課税の見直しが行われれば、地方自治体の税収へのダメージは減るでしょう。しかし、企業の業績の回復は遠のくおそれがあります。
また、見直しをしても抜け穴が見つかれば、それを使った節税策も出てくるはずです。税収だけでなく企業の業績回復の支援まで視野に入れた対策を行政側がおこなわない限り、根本的な解決には至らないものと考えます」
自民党の宮沢洋一税制調査会長は、11月7日、外形標準課税の適用基準を拡大する意向を示した。企業の負担増への経済界からの懸念もあるが、宮沢氏は日経新聞のインタビューで「節税したいがために大企業から中小企業に移ってきた企業だけを抽出できるような制度にできるかどうかが一番大事だ」と答えている。
総務省は今後、「資本金と資本剰余金の合計額」で判断する新基準を検討しているが、はたしてどのような税制改正がなされるのか。
( SmartFLASH )