社会・政治
国家ぐるみの闇バイト…『VIVANT』公安監修者が明かす「中国スパイ」の戦慄手口「手は汚さず、市民と留学生にアメとムチ」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.11.30 06:00 最終更新日:2023.11.30 06:00
「拳を握りしめ、机を叩きながら話していた」
11月17日(日本時間)、米・サンフランシスコで、岸田文雄首相(66)は習近平中国国家主席と会談した。テレビ朝日は、会談に同席した人物の証言として、岸田首相の強気な姿勢をこう報じた。
岸田首相は会談で、邦人拘束の事案について、早期の解放を求めた。10月19日、アステラス製薬の男性社員が、スパイ容疑で中国当局に逮捕されたことを受けてのものだ。
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「2014年に中国で『反スパイ法』が施行されて以来、外務省が把握しているだけでも、17人の日本人がスパイ容疑で拘束されています」
元公安警察官で、人気ドラマ『VIVANT』(TBS系)の公安監修を担当した勝丸円覚氏がこう語る。
「岸田首相がアクションを起こしたこと自体は、よかったと思います。ただアステラス製薬の社員逮捕の件は、手遅れだという印象を受けます。2019年に、北海道大学の岩谷將教授がスパイ容疑で拘束後に解放された事件がありましたが、このときはまだ正式な逮捕はされていなかったのです。私は、外国人も含めて逮捕・起訴となった後に、中国当局が解放した例を知りません」(勝丸氏、以下同)
アステラス製薬社員が裁判で有罪判決となれば、2~5年の刑期になるという。
中国では、スパイの嫌疑で拘束される日本人が後を絶たない一方で、日本国内では中国人スパイが暗躍している。
「2023年6月に、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の中国人研究員が、研究データを中国に漏洩したとして警視庁公安部に逮捕されています。さらに2021年には、スマートフォン関連技術を中国企業に漏洩したとして、積水化学工業元社員が有罪判決を受けました。これは、中国人スパイがSNSを通じて『あなたの経歴は素晴らしい』と、接触してきたことが発端です」
スパイが自ら情報活動をおこなうロシアと違い、中国人スパイが手を汚すことはない。
「ターゲットに決めた善良な中国人や留学生をリクルートするのです。帰国した際に就職を斡旋する、親の年金額をアップするなどの“アメ”を提示し、協力しなければ『親がどうなってもいいのか、もう国には帰れないぞ』と“ムチ”で脅します」
東京都江東区にある「中国大使館教育処」。ここには、中国人留学生の膨大なデータが保管され、スパイから指示を受けた人物が、情報を引き出すことができそうな人材をリクルートするのだという。
「2021年、中国人民解放軍関係者の指示で、日本製のセキュリティ対策ソフトの不正購入を試みた中国籍の元留学生に、警視庁公安部が詐欺未遂容疑で逮捕状を取りましたが、その後出国しています」
共同通信は、「毎回びくびくしている。いけないことだ」と情報活動をためらう容疑者が、「国家に貢献しろ」とSNSで命じられ、操られていく様子を報じている。
まさに国家ぐるみの“闇バイト”だ。
かつまるえんかく
1990年代に警視庁に入庁し、公安・外事分野で経験を積む。現在は国内外でセキュリティコンサルタントとして活動。新刊に『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』(実業之日本社)、そのほかの著書に『警視庁公安部外事課』(光文社)
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