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名門「フジクラ」製のiPhone部品が中国“闇市場”に流出していた!過去には巨額賠償で倒産した企業も

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.12.12 06:00 最終更新日:2023.12.12 11:50

名門「フジクラ」製のiPhone部品が中国“闇市場”に流出していた!過去には巨額賠償で倒産した企業も

香港の電気街・観塘で売られていたフジクラの中古部品。フジクラへの取材で、別の中国メーカーの部品も混在していることがわかった(写真提供・村松秀樹)

 

 フジクラ(東京都江東区)といえば、古河電気工業、住友電気工業と並び“電線御三家”の一角として知られる、1885年創業の名門企業だ。

 

 光ブロードバンドの敷設に不可欠な、光ファイバの融着機では世界トップシェア。スマホ用のプリント基板は、アップル社のiPhoneにも採用されている。だが――。

 

「約5年前、フジクラの上海にあるグループ会社に、部品の流出を防ぐため、製品を原料に戻して再生利用する『マテリアルリサイクル』の請負契約を提案したんです」

 

 

 そう語るのは、中国・上海で産業廃棄物のリサイクル企業を経営する村松秀樹氏だ。

 

「ですがフジクラからは、『すでに香港の処理業者に委託し、問題なく推移している』と断わられました。しかし2023年7月、香港の電気街・観塘(クントン)の中古マーケットで、『フジクラ』のロゴがある中古部品が売られているのを発見したのです」(村松氏)

 

 村松氏が入手した約1.5kgの部品には、アップルのロゴと、小さくフジクラの「F」の文字も。ICチップがついているものが1個30元(約600円)、ついていないものは1個10元(約200円)で売られていたという。

 

「チップのある部品は、そのままiPhoneの修理業者に転売されます。ない部品は、別ルートから調達したチップを人力でハンダづけし、部品に仕上げてから転売されているようです。そのほか、金属類を資源として抽出する用途としても需要があります」(村松氏)

 

 モバイル研究家で、名桜大学教授の木暮祐一氏が中国のスマホ中古市場の事情を語る。

 

「2023年8月に、香港に隣接する深センの華強北(フアチャンベイ)を視察しました。華強北は秋葉原の30~40倍の規模があり、スマホの中古品や部品を扱っている小さな商店が、何棟ものビルの中に密集しています」

 

 そこで扱われている部品の多くが、「サードパーティ」と呼ばれる非純正品だという。

 

「限りなく純正品に近い品が多数ですが、粗悪品の流通にも歯止めがかかりません。アップルや日本メーカーのロゴがプリントされていても、偽造された部品である可能性は大いにあります」(木暮氏)

 

 そこで、本誌は村松氏が香港で入手した部品を取り寄せ、「テカナリエ」(東京・中央区)に調査を依頼した。

 

 同社はiPhoneをはじめ、年間100超の製品を分解、チップの解析をおこない、メーカーへのコンサルティングなどをおこなっている。CEOの清水洋治氏が語る。

 

「これは、外見だけで判断すればiPhoneの『タッチディスプレイコントローラー』と呼ばれる部品です。ディスプレイをタッチすると、指の静電気をデジタル信号に変えて、CPUに伝えます。画面に『あ』と書けば、『あ』と手書き文字が表示されますよね。なかでもiPhoneは、ディスプレイの隅から隅まで高精度で認識します」

 

 では、この部品はフジクラの純正品なのか。チップの封止(外気にふれないよう樹脂で封印すること)部を薬品で溶かし、電子顕微鏡で約1万倍に拡大し、確認してもらうことにした。

 

「ブロードコム社製の『BCM5976』というチップが2個入っていました。iPhone12用の、100%本物です」

 

 部品の持ち込みから約10日後、清水氏から驚いた様子で検査結果の報告があった。

 

「チップは、その前段階である『ウエハー』という薄い板の時点で、サプライチェーンのなかに組み込まれています。アップルのチップの管理は非常に厳しく、偽物はすべてブロードコム以外の代替品を使わざるを得ません。話を聞いたときは、中国製の激安チップが入った偽物だと思っていたのですが、まさか本物だったとは……」(同前)

 

 なぜ、フジクラの純正品が大量に“闇業者”に出回っているのか。壊れたiPhoneから取り出された部品が転売される例はあるが、清水氏は「これだけ大量の部品を中古端末からかき集めるのは、実質的に不可能だ」と話す。

 

 冒頭の村松氏が推測する。

 

「部品がフジクラから流出したとしても、同社の社員が関与したとは考えにくいと思います。むしろ、処理業者がフジクラから処理費用を徴収したうえで、部品を横流ししてさらに利益を得ていたのではないでしょうか」

 

 過去にも似た事例はある。2019年には、iPhone組み立てを請け負う鴻海精密工業の幹部社員が、取引先企業の従業員と共謀して廃棄予定の部品を転売していたことが発覚。幹部社員らは、47億円の利益を得ていたという。

 

 日本では、アップルから中古iPhoneを買い取り、破砕して再資源化する契約を結んでいた木村メタル産業が、2016年に倒産。まだ使える端末を横流しし、アップルから数十億円単位の賠償金を請求されたためだと報じられた。

 

 本誌は、フジクラに(1)部品が流出した経緯(2)流出についてアップルに報告したか(3)処理業者の管理体制は適切だったかについて問い合わせた。(1)については「現在確認中です」、(2)については「契約上、お答えできません」、(3)には「社内規定に基づき、正しく処理されているという認識です」との回答があった。

 

 そのうえで、経営企画室コーポレートコミュニケーション部の春山嘉男部長が取材に応じ、こう語った。

 

「チップのない部品は、フジクラグループで製造された『不良品』です。製品としての機能を果たしておらず、本来『部品』という言い方は正確ではありません」

 

 一方、チップのある部品について追跡調査をしたが、上海のグループ会社で加工した履歴はなかったという。チップの入出荷数は厳密に管理し、中古市場で売られていた部品の素性は不明だという。

 

「フジクラおよびグループ会社としては、産業廃棄物としてちゃんと業者に引き渡しているので、そこまでの責任ということになると思うんです。その先、業者が何をしたかというのは、我々は責任を負わない。業者との信頼関係で廃棄をしているということです。業者がたとえばひとつをくすねちゃったとなっても、そこはなんともコメントのしようがありません」(同前)

 

 と述べ、業者からは廃棄の模様を収めた動画や、報告書の提出を受けていたとした。

 

 元警察官僚で、MBA(経営学修士)を有する澤井康生弁護士が解説する。

 

「アップルとフジクラとの契約には、不良品を廃棄する際に外部に流出しないよう、フジクラが適切な処理業者を選任・監督する義務が盛り込まれていると思われます。もし、フジクラが処理現場に立ち会ったり、業者に報告書を出させたりするなどの監督義務を怠っていたのであれば、アップルから損害賠償を請求される可能性は否定できません」

 

 米アップル、アップルジャパンに部品の流出を把握していたか、フジクラに対し何らかの対応を取る可能性があるかについて問い合わせたが、期日までに回答がなかった。

 

 取材に同席したグループ子会社常務が「我々からすると、あってはならないことだ」と語った流出事件。老舗はどこへ――。

( 週刊FLASH 2023年12月26日号 )

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