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【危険地域は?】能登半島と同じ“流体地震”発生リスクを東大教授が調査「地下十数kmに巨大な“水溜まり”が」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.01.17 06:00 最終更新日:2024.01.17 06:00
1995年に起きた阪神・淡路大震災の9倍の規模……。1月1日に能登半島を襲った巨大地震はどのようにして発生したのか。そのメカニズムの解明に向け、研究が進んでいる。
「能登半島の先端にある珠洲市の地下十数kmには、“巨大な水溜まり”があることがわかっています」
と語るのは、東京大学地震研究所地震予知研究センター長の上嶋誠教授だ。
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「まず大前提として、内陸地震が発生する原因はプレートが割れることです。プレートが別のプレートによって圧力を加えられ、ある日割れてしまうことで、地震が発生します。では、どこが割れやすいかを考えると、前述の“水”がある場所の周辺なのです」(上嶋教授・以下同)
本誌はこれを“流体地震”として何度も報じてきた。日本列島下に沈み込む海洋プレートに含まれる海水が、地中で上昇し、プレート内部に水溜まりを作る。そしてこの水が、プレートが割れる際の“潤滑油”となる――。
「ただ注意してほしいのは、この地下に水がある場所が、震源地そのものになることはあまりないんです。地震は水のある場所ではなく、その周辺で発生します。水がある場所は、スムーズにプレートが動いてひずみが溜まりにくいのに対して、そのすぐ近くの水のないプレートは摩擦で動けず、ひずみが溜まりやすい。その結果、地震が起きると考えることができますね。地震を引き起こした断層の根本には、たいていの場合、大量の水が存在するので、今はその水がどこに、どのように存在するのか調べています」
だが、ことは10km以上の地中深くの話。水を見つけることは容易でない。
「そこで私たち研究グループでは、MT法という手法を用いて地下の状態を調べています。水がある場所は電気抵抗が減り、電気が流れやすいので、電磁気を使えば地下に存在する水の検出が可能です。地下の深部を調べるためには、より長周期のゆっくりした電磁場変動を調べる必要があります。このために1カ所の調査を1カ月程度継続してデータを取っています。また、電話回線を利用したネットワークMT法という手法も開発しています。これなら一度に数十kmの広範囲を調べられますが、電話回線が光ファイバーに置き換わりつつあり、今後は利用できなくなりそうです」
広い領域で長期間の多点観測を実施することで、数十kmを超えるような、より広くより深い範囲の情報が得られるようになった。
「そもそも観測値から、実際の地下構造を三次元で求める計算式を開発したのが2000年代の初頭。多くの研究者が活用し、地下の三次元構造が明らかになりだしたのが、2010年ぐらいからです。なので、まだ日本全国を網羅的に調査できているわけではありません。ただ左図のとおり、東日本大震災後の内陸誘発地震域や熊本地震域など、大地震が起こった場所の地下に大量の水が確認できました。地図上ではひとつの丸で囲っていますが、実際にはその地中に水のある場所が点在しているという状態です」
たとえば、福島県いわき市と茨城県北茨城市の間に存在する水溜まりだ。
「ここは、東日本大震災後の2011年4月11日に、マグニチュード7の地震が発生した場所です。調べてみると、震源になった場所そのものには水がありませんでした。しかし、震源のさらに下には、水が溜まっていました。水の上にある岩盤はより動きやすく、地震を起こしやすいと考えることができるかもしれません。また、富山県と岐阜県の県境には、牛首断層、跡津川断層、高山・大原断層帯という3つのベルトがあって、非常に活発な活動があるとされています。そのなかのひとつは、1855年に震度7の地震を引き起こしたとされています。その周辺でも水が確認されているので、非常に注意が必要です。流体と地震の研究はまだまだ発展途上ですが、“何かが起きる場所”と考えて、間違いはなさそうです」
プレートを動かす大量の水が自宅の地下に……。ぞっとする話だ。