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北朝鮮の銅像ビジネスがアフリカの独裁者にバカ受け
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.10.22 11:00 最終更新日:2017.10.22 11:00
「記念碑、彫像、大統領宮殿、公園などを芸術的にデザイン、建設いたします。内装も承ります。その技術はこれまでの各国の建築物で証明済み。高く評価されております」ーー。
我が国の住宅メーカーのパンフレットではない。平壌に本社を置く万寿台創作社の海外向け “営業資料” だ。
60ページにおよぶ豪華な資料の巻頭では、万寿台創作社の社屋や製作風景が紹介されている。日本で開催された展示会の様子もある。
「同社は4000人の芸術家が所属する、世界一の規模の美術制作会社です。アフリカでは、北朝鮮製の銅像は人気があり、少なくとも15カ国に輸出されています」(全国紙記者)
指導者を称え、建国の理念を訴えかける銅像づくりは北朝鮮の “お家芸”。
まずは、セネガルに建設された「アフリカ・ルネサンスの像」だ。前大統領の肝煎りで、2010年に製作された、高さ50メートルの銅像。国有地に位置するが、観光収益の35%が大統領の収入になり、批判された。
「セネガル政府が北朝鮮に支払った工費は約19億円。核実験1回の費用が約5億円ですから、何度も繰り返し実験できる額になります」(同前)
こうした北朝鮮が製作した銅像は世界中に存在する。
2005年に制作された「三首長の像」(ボツワナ)。国づくりに貢献した首長3人の像で、観光名所になっている。推定工費1.2億円で高さ5.4メートルほど。
ベナンには「ベハンジン像」。植民地化に抵抗したダホメ王国最後の王の像。その後、クーデター政権が製作を依頼したという。
北朝鮮はアフリカのカリスマ大統領たちの銅像も製作している。
モザンビーグの「サモラ・マシェル大統領像」。北朝鮮から支援を受けた左翼ゲリラが政権を握り、現在も与党の座に。初代大統領の銅像が鎮座している。
さらにアンゴラの「アゴスティニョ・ネト大統領像」。こちらも初代大統領で、遺体は永久保存され、墓は街のシンボルとしてライトアップされている。
コンゴ民主共和国にある「カビラ大統領像」。独立を主導したが、2001年に暗殺された。現在は息子が大統領だが、任期切れ後も大統領に居座っている。
北朝鮮は、銅像だけではなく建築物も請け負っている。
アンゴラにある「アゴスティニョ・ネト記念ホール」。2010年に完成した、高さ120メートルの塔をもつホールで独立戦争を戦った初代大統領の名を冠している。
次にナミビアにある「大統領府」。北朝鮮との関係が特に深い同国では大統領府(2008年)や、軍事博物館(2004年)なども建設した。
エチオピアでは「闘争記念碑」を建造。赤い星を飾ったオベリスク(塔)の下には、カラシニコフ銃を掲げた3人の兵士が置かれている。
アフリカのみならず、ヨーロッパにもひっそり進出している。
ドイツにある「おとぎ話の噴水」。フランクフルト市にある噴水。北朝鮮は2005年、修復工事を格安の20万ユーロ(約2600万円)で受注した。
国連安保理の推定では、2000年以降だけで北朝鮮に約175億円の金が流れているという。経済制裁によって銅像の輸出は禁じられているが、どこ吹く風なのだろう。
(週刊FLASH 2017年10月3日号)