韓国で医師が「集団辞表提出」の異常事態　政府の医学部増員計画、コロナ禍の補償不足に怒り大爆発

 

　韓国の医療現場にいま、医師がいない。医師による所属病院からの離脱が韓国全土に及び、診療が追いつかない状況となっているのだ。

 

　医師らは、韓国政府が医師不足解消策として、医学部の定員を年間2000人に増員すると決めたことに抗議。集団での辞表提出という、トンデモ行動に発展している。

 

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「保健福祉部の発表によると、主要な全国100病院の専攻医を9275人と集計し、このうち8024人は出勤していないと発表しました。医療現場はほぼストップ状態となっていて、保健医療危機の段階を、警戒レベルから深刻レベルへと引き上げることを決めました。まさに異常事態です」（韓国のニュース誌ライター）

 

　韓国政府と、それに反発する医師団体の主張について、このライターは続ける。

 

「韓国の人口1000人当たりの活動している医師数は2.6人で、経済協力開発機構（OECD）の平均3.7人に比べて低いと指摘されています。このまま増員がなければ、今後、1万人の医師が不足するとも国は主張しています。一方、医師団体は、医師の増加率がOECD国家の平均に比べて高いとして、増員は不要だと反論しています。さらに、現在は定員3058人の医大生を2000人増やして、年5058人とした場合、学生の水準が低くなり、結果的に医師の質も落ちるため、定員は350人増が適切だと主張しています。どちらも主張を引き下げることはなく、医療現場に医師がいない状況は長期化する可能性があります」

 

　患者はいるが、医師がいないという由々しき問題だ。韓国のある女性看護師は「そもそも専門医の給料が高すぎることが原因」と話す。

 

「韓国は、民間病院が約9割。医師の平均年収は、2021年基準でひとり当たり平均2億6900万ウォン（約3040万円）です。2020年のOECDの調査によると、韓国の平均年収は4300万ウォン（約485万円）なので、医師は平均年収の6倍以上をもらっている計算になります。医師が増加すると、医療における競争の激化で収入減少となるのを恐れているのでしょう」

 

　韓国の世論は、高給取りである医師の収入減少にはどうやら肯定的なようで、医学部の増員に賛成多数となった。2月中旬の世論調査では、「肯定的な面のほうが多い」は76％なのに対し、「否定的な面のほうが多い」は16％にとどまった。

 

「増員支持の背景には、地方の医療人材不足や、小児科や内科など、特定の診療科の専門医が不足していることに、国民が危機感を持っていることがあるようです。また、免許を持たない人物が手術行為をする整形外科や産婦人科もあります。不法手術といわれたり、誰が執刀したのかわからない“幽霊手術”があったりと、医療現場では、医師不足は明らかです。なので、医師の集団辞職について、世論は冷ややかな目を向けています。政府もずさんな医療現場には頭を抱えており、改善していかなければいけない問題ととらえているようです」（前出・ニュース誌ライター）

 

　この集団辞職をした医師たちに対して、保健福祉部の朴敏洙次官は「3月1日までに職場復帰しなければ、少なくとも3カ月の医師免許停止など、法的措置を講じる可能性がある」と述べた。だが、そんなペナルティを科そうとする韓国政府に対し、かつてコロナ禍で医療従事者に支給した補償についての苦言もあるという。

 

「コロナ禍で、医療従事者は通常よりセンシティブな診療や、非常に多い患者のケアに苦労していました。しかし、政府からの手当などの報酬が十分に得られなかったという意見もありましたし、私もそう思います。医者や看護師への補償手当に関して、政府は計画を持っておらず、医療従事者らは利用されたように感じているのが現状。医師増員の前に、金銭的補償をすべきかと」（前出の女性看護師）

 

　いちばん苦しんでいるのは、医師に診てもらえない患者であることは間違いない。

( SmartFLASH )