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博多女子中「願書出し忘れ」を教頭が弁明「気の緩みがあった」…背景には「願書の一括提出」福岡独自の事情も

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.03.02 17:25 最終更新日:2024.03.08 13:04

博多女子中「願書出し忘れ」を教頭が弁明「気の緩みがあった」…背景には「願書の一括提出」福岡独自の事情も

写真はAC

 

 福岡市東区の私立博多女子中学校で、担当教員が公立高校の出願期限を勘違いして願書が受け付けられず、3年の生徒3人が志望校を受験できなかったことが発覚。「あってはならないミス」として、全国的な話題になっている。

 

 生徒3人は、古賀市の公立・古賀竟成館高校の受験を希望し、中学を通じて願書を提出する予定だった。提出期限は2月16日正午だったが、担当教員らは県立高校と同じ20日が期限だと思い込んでいた。そして、16日午後2時になって高校に願書を届けたが、期限を2時間過ぎたとして受理されず、生徒は22日に実施された入学試験を受けられなかった。

 

 

 憤った生徒の保護者が地元のテレビ局に訴えて事態が明るみになり、中学側は「生徒の将来に関わる、あってはならないミスで、心から申し訳なく思っている」旨のコメントを出した。

 

 同校は、古賀竟成館高を第一志望とする生徒の保護者に対し、系列の博多女子高校への進学と、当初30万円の和解金を提示したが、不服と見てさらに20万円の上乗せを申し出たという。

 

 本誌が問い合わせると、落合弘幸統括教頭が電話口に出て、「世間をお騒がせしてしまい、誠に申し訳ありません」と陳謝した後、まず事態についてこう説明した。

 

「出願に当たったのは経験の浅い教師だけでなくベテランもいて、気の緩みがあったと認めざるを得ません。ミスについてはどんな叱責でも受ける覚悟でおります。当然、二度と繰り返さぬようチェック体制を改めて参ります」

 

 しかし、なぜそんな勘違いが生じたのか。地元メディアの第一報は、いずれもそのあたりを解説していなかった。落合教頭は事態の背景について語った。

 

「古賀竟成館高は全国でも珍しい組合立で、入試日、合格発表ともに県立より早いため、県立の受け皿と見なされる学校ではあります。とはいえ例年、我が校からも若干名は受験しており、こんなミスは今までにありませんでした」

 

 組合立学校とは、複数の自治体が共同で設置する一部事務組合によって設立されたもので、高校は現在、全国で3校のみ。うち1校の三井中央高校(久留米市外三市町高等学校組合立)は2025年度末に閉校が決まっており、残すは古賀竟成館と、群馬の利根商業高校(利根沼田学校組合立)だけだ。

 

 組合立高の多くは、役割を果たした後、県立に移管するか周辺の県立校と合併するのが普通で、担当教諭は古賀竟成館を県立校と混同してしまった。そして、3人のうち1人は同校を第一志望としていたため、保護者としては許せない事態となった。事実、当該の生徒はかなり気落ちしているという。

 

 落合教頭は、「生徒のメンタルケアがなにより肝心」と認めつつ、当該生徒には「県立校の受験をすすめ、了解を得て願書も出した」と釈明する。

 

「当該生徒も含めて、3人はいわゆる滑り止めとして事前に私立校を受験し、それぞれ合格しています。だからみな進学先を最低限確保しているのは確かです。

 

 ただ、ほかの2人は県立が第1志望ですが、当該生徒はもともと県立まで受けるつもりはなかったようです。願書提出は説得に応じてくれたのですが、実際には受験しないかもしれません」

 

 落合教頭の声は、次第に蚊が鳴くようになる。当該生徒は謝罪や先述の和解案を受け入れず、「学校にも行きたくなさそう」なほど落胆しているという。

 

 一方、SNSでは、なぜ中学がまとめて出願するのか、といった疑義も出ている。これには、福岡の教育事情が大きく影響していると思われる。県内のさる大手塾の教務本部主任に尋ねると、博多女子中にいささか同情的だった。

 

「古賀竟成館が県立ではなく組合立なのは、地元の古賀市に近い教員なら誰もが知っており、混同することはありません。ただ、福岡市内の私立校であれば、教員間で認識の不徹底もあったかもしれません。

 

 福岡は今や全国でも珍しい県立王国。生徒をいかにそのレベルにあった県立校に進学させるかが、つねに中学教員の念頭にあって、細かく調整を図ったうえで受験させています。

 

 その結果、調査書だけでなく、願書も中学側が高校に提出するという習慣がずっと続いているんです」

 

 これが東京都の場合、中学担任が願書に不備がないかを確認はするが、提出は受験生自身がし、それも現在では郵送の場合がほとんどだ。

 

 そして、万が一、受付期間内に到着するよう郵送できなかった場合、受付期間が終了するまでに中学を通じ、志願先の都立高に相談ができる。

 

 この主任は「福岡は厳密すぎる」とも指摘する。

 

《十五の春は泣かせない》は昭和30年代後半、高校全入運動とともに広まったスローガンだが、いまだに県立校が絶対視される福岡では、合格を確実とするため、中学がそこまで出願の世話を焼く。

 

「他県では願書をネット受付しているご時世にもかかわらず、頑ななんです。福岡では、私立高さえ中学からまとめて願書を受け付けます。受験生個人の出願のみ受け付けるのは、全国的な進学校の久留米大附設だけです」

 

 そう指摘する主任は、さらに、福岡固有の高校入試システムの問題点も指摘する。

 

「福岡の公立では、従来の学校推薦のほか、いわゆる自己推薦にあたる『特色化選抜』を2019年から導入し、修猷館や明善といったトップ校を除く2番手校以下だと、レベルが下がるにつれその枠は広がります。それで、入試も複雑化するんです。特色化選抜は一般入試より1カ月以上前倒しで試験があり、第一志望の生徒をまずそこで確保してしまうんです」

 

 したがって、そこまでレベルの高くない古賀竟成館も実質倍率は上がり、一般入試の難易度も高くなる。しかも、最近になって特進コースを設け、進学指導に熱を入れているとの評判がある。それで、当該生徒は期待をかけていたのだろう。

 

 博多女子中は、福岡では珍しく、ほかの高校の受験をオープンに認めているという。そうした姿勢が、逆に今回のミスを引き起こしてしまった可能性もある。

 

 だが、言うまでもなく、これは「あってはならないミス」だ。同校では3月2日に保護者説明会を開き、経緯を報告するが、さらに一波乱起きそうな気配だ。

 

取材・文/鈴木隆祐

( SmartFLASH )

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