アメリカのトランプ大統領が11月20日、北朝鮮をテロ支援国家として再指定したと発表した。2008年の指定解除からじつに9年ぶり。
北朝鮮が反発することは必至だが、北朝鮮問題が緊迫していることを象徴するような論争が、アメリカで沸き起こっている。
11月14日、アメリカ議会の公聴会で、コーカー上院外交委員長が「大統領に核ミサイル発射に関する権限が集中している現行制度を、検証する必要がある」と指摘。
続く18日、米軍のジョン・ハイテン戦略軍司令官が「トランプ大統領から、核攻撃の指示が出された場合、命令が違法であれば、『違法である』と伝える」と攻撃拒否の可能性を示唆した。
なぜこうした議論が起きているのか。実は、遡ること約50年、1969年にニクソン大統領が核攻撃を命令し、拒否された前例があるからだ。
この衝撃的な事実は、2010年にワシントンで公開された公文書によって明らかになっている。同年7月、イギリス紙「ガーディアン」が「ニクソンの北朝鮮への核攻撃計画が明らかに」と顛末を報じている。
1969年、北朝鮮上空を偵察していた米軍機が撃墜され、兵士31人が死亡。これに対する報復として、ニクソンは北朝鮮への核攻撃を指示した。
核爆弾を搭載した戦闘機の元パイロット、ブルース・チャールズ氏はこう証言している。
「大佐に呼び出されて、偵察機が撃ち落とされたことを知った。そして、大佐に見せられたメッセージには『攻撃準備に入れ』と書かれていた」
戦闘機に搭載されていた核爆弾は「B-61」。広島の原子爆弾の約20倍の威力だったというが、数時間後、攻撃は突如中止になった。
真相は、2017年10月28日付けのアメリカ・ウェブメディア「ビジネスインサイダー」にて紹介されている。偵察機が撃墜されたことを知ったニクソンは、すぐさま参謀本部に電話し、核攻撃を命令したのだが、問題はこのとき大統領が酒に酔っていた点だ。
そこで、一報を受けたヘンリー・キッシンジャー国家安全保障補佐官が「大統領の酒が抜ける朝まで待て」と進言。最終的に、攻撃命令は撤回されたのだという。
アルコール依存症だった兄の影響で、酒は飲まないと公言するトランプ大統領。ニクソンの二の舞となる可能性は低いと思われるが……。