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「闘争の原点は特攻隊員だった叔父の体験」自民党「裏金問題」を暴いた男が「絶対に法廷へ!」と語る2人の政治家

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.06.13 06:00 最終更新日:2024.06.13 06:00

「闘争の原点は特攻隊員だった叔父の体験」自民党「裏金問題」を暴いた男が「絶対に法廷へ!」と語る2人の政治家

神戸学院大・上脇博之教授。「大学宛に嫌がらせの電話もありますから、バンダナは身を守る意味でも着けています」。着用中のものがお気に入りだという(写真・馬詰雅浩)

 

「これは、戦争みたいなものですよ。戦いはこれからです」

 

“号砲”となる最初の報道が出たのは、2023年11月のこと。以来、自民党は窮地に立たされている。政治資金パーティーをめぐる、大規模な裏金事件だ。

 

 自民党の5派閥が、政治資金パーティーで得た収入を適切に報告せず、さらに、議員がノルマを超えて販売したパーティー券の代金は、議員にキックバックされていた――。

 

 

 日本の政治史に残る大規模な裏金事件を暴いたのが、神戸学院大学の上脇博之教授(65)だ。

 

「発端は、2022年に『しんぶん赤旗』が派閥の収支報告書を調べ、20万円を超える収入について、明細の不記載が発覚したことです。そこで私に声がかかり、一緒に調べて派閥ごとに刑事告発をおこなったんです。検察に提出するための告発状は、すでに20本ぐらいは書きましたかね。裏金の額がわかり、すべての派閥を告発できたのが2024年の正月でした。僕からすると、やっと究明が始まったばかりだという認識なんです」

 

 ところが、上脇教授の告発状を受け取った検察の反応は鈍い。起訴された現職議員(当時)は、大野泰正議員、谷川弥一議員、池田佳隆議員の3名だけ。ほかは派閥の会計責任者や、秘書ばかりだ。

 

「検察特捜部は、過去の事例から起訴・不起訴の基準を決めているようです。しかし、今回の事件は“みんなで何億円もの裏金を作った”という組織性が、特異で悪質だと考えています。今後は、キックバックを受け取った議員についても、順次告発をする予定です」

 

 だが、計2728万円のキックバックを受け取った萩生田光一議員や、同じく計1542万円受け取った世耕弘成議員は、5月2日に不起訴となっている。このまま次々と不起訴となれば、ほとんどの議員の法的責任は“不問”になるのではないか。

 

「とくにこの2人は、2018年分の不記載を入れて告発したために、時効が迫っていました。だから検察は早めに不起訴という結論を出したのでしょう。5月15日と22日に、不起訴処分はおかしいと、検察審査会に申し立てました」

 

 上脇教授は、まだ起訴への望みを捨ててはいないのだ。

 

「1回めの検察審査会で『起訴相当』という結論が出たにもかかわらず、再び検察が不起訴とした場合、さらにもう1度、検察審査会が審査します。そこで『起訴議決』となれば、裁判所が指定した弁護士が“検察官役”になって起訴することになるんです。そうなると、検察が押さえている証拠をすべて弁護士に渡さないといけません」

 

 検察としては、「それだけは避けたい事態だろう」と上脇教授は続ける。

 

「だから、1度でも『起訴相当』という判断が出れば、おそらく検察は起訴するんじゃないかと思います。つまり、いま審議中の検察審査会が非常に重要だということです。絶対に、この2人は法廷に出させたいと思っています」

 

“裏金議員”らが「クロ」だという確信は、裏金を受け取っていたとされる議員らが、政治資金収支報告書を訂正した内容からも得られている。

 

「彼らが訂正した項目のなかに、『不明』という項目があるんです。派閥から受け取った裏金が、選挙区支部や資金管理団体に納められていたのであれば、会計帳簿が残っているはずでしょう。結局、議員個人が裏金を受け取り、選挙に使ったのか、自分のポケットマネーにしたのかのどちらかだと思います」

 

 裏金事件が表面化するまでには数多くの困難があった。

 

「収支報告書を確認する作業が、本当に心が折れるんです。派閥の報告書に残っている『この団体がいくら買ってくれた』という記載を、全国5万を超える政治団体側の収支報告書のなかからチェックしました。正月休みもゴールデンウイークも返上して取り組みました」

 

 上脇教授の闘争心は、どこから湧き出てくるのか。

 

「残念ながら日本は、戦後の日本国憲法のもとでも『議会制民主主義が一度も実現していない』というのが僕の立場なんです。国民主権をうたい、普通選挙を実施し、国会がある――。それだけでは不十分で、民意を歪曲するような選挙制度や、政治資金制度があれば、議会制民主主義の名に値しないんですよ。安倍政権時は、公文書の改ざんすら簡単にできたわけですからね。だから僕は、少しでも権力の暴走を止めようと、『政治資金オンブズマン』を作って対抗しているんです」

 

 権力が暴走した果てには、国民の犠牲が待っている。

 

「僕の叔父は、特攻隊員だったんですよ。たまたま命は助かったのですが、父を通じて叔父の話を聞いてきました。叔父いわく、ある特攻隊員が出撃後に怖くなって帰ってきたそうです。上官がなぜ帰ってきたかと詰問すると、その隊員は仕方なく『機体に整備不良があった』と答えた。すると、それを後ろで聞いていた整備兵が、『嘘を言うな』と怒り、日本刀を抜いて隊員をぶった斬り、そのままゼロ戦に乗って特攻して亡くなったそうです。戦時下は、いかに非人間的な状況だったのかわかるでしょう。権力が暴走すれば戦争が起きます。そして、国民は否応なく巻き込まれるのです」

 

 6月6日、自民党が提出した政治資金規正法改正案が衆議院を通過した。

 

「こんな法案では、政治資金の透明化は果たせない。私から見るとまだまだ終わらない、終わらせない」。バンダナの下から覗く目は、闘志に燃えている!

( 週刊FLASH 2024年6月25日号 )

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