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「これは中国への“真珠湾攻撃”」海自護衛艦の中国領海内航行で現地から猛批判も…「鹿児島沖を航行するのはどうか」中国側にブーメラン

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.07.12 13:58 最終更新日:2024.07.12 13:58

「これは中国への“真珠湾攻撃”」海自護衛艦の中国領海内航行で現地から猛批判も…「鹿児島沖を航行するのはどうか」中国側にブーメラン

中国領海内で航海した海上自衛隊の護衛艦「すずつき」(写真・アフロ)

 

 海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が7月4日、中国領海内を一時航行したことが明らかになった。事件当時、「すずつき」は中国軍の実弾射撃訓練を警戒任務中だったとされ、中国側からの退去勧告を受けたという。中国政府は「深刻な懸念」を表明するとともに、「意図的な挑発」の可能性も否定できないとして調査している。11日には、林剣報道官が定例会見でこの件に触れ、抗議と再発防止を求めたと述べた。対する日本政府は、外交ルートを通じ火消しに追われている──。

 

 この事件について、中国側でどのような温度感で報じられているのか、中華圏に詳しいジャーナリスト・角脇久志氏に聞いた。

 

「人民日報、新華社通信など中国の主要官製メディアでは、この事件はほとんど報じられていません。反日反米報道の急先鋒である環球時報でも同様です。中国の小規模なメディアや香港系メディアが取り上げているぐらいで、それも日本の共同通信の報道をもとに、評論家の意見を掲載した記事がわずかにある程度です。普段は、中国船の日本海域への侵入時に正当化の強弁をする中国外交部ですが、11日になってようやく日本への抗議を表明。これは昨年、福島の核処理水の放出に対し、中国政府主導で批判を繰り広げていたのに比べると、非常にトーンダウンしているように見えます」

 

 

 今回の中国領海内航海問題について、意外にも現地での報道は盛り上がっていない。その理由の一つに、中国政府の“反日方針”転換があるのではないかと指摘する。

 

習近平政権では経済政策の失敗による国内経済不況のガス抜きとして、“反日無罪”と称する日本バッシングを利用してきました。つまり、“国内の傷”が目立たないように、国民の目を海外に向けさせてたんです。

 

 ところが、今年の6月24日に蘇州の日本人学校で日本人母子が刺され、それを助けようとした中国人女性が死亡するという事件が発生。不満のはけ口として外国人が襲撃される事件が相次ぎ、中国に対して国際的な批判が集まっています。その結果、日本企業はもちろん、外国企業の撤退が続く状況に拍車がかかる恐れがあるため、日本艦船が中国領海内に侵入したにもかかわらず、従来のような反日報道を控えているのではないかと推察する中国の識者もいるようです」(同前)

 

 こうした中国政府の対日姿勢に対し、現地のSNSは黙っていない(以下、中国版X「微博」より抜粋。翻訳は編集部)。

 

《日本の艦船が部品でも落っことして、中国の海を汚染するんじゃないの》

 

《こうやって中国領海に侵入するのは、中国人民の気持ちを傷つけるのではないか》

 

《日本は軍隊強化という考えをすでに長年行ってきている。もっと強力に責任を問うべきだ!》

 

《領海侵犯したのに、なんで砲撃しないのか!》

 

《最近、日本は中国に対してどんどん攻撃的になっている。これは中国への“真珠湾攻撃”ではないか?》

 

 その一方、中国当局の公船が日本領海に侵入し、執拗な挑発行為を行うのは半ば常態化している。林芳正官房長官は11日の会見で、中国が「自国の領土だ」と主張する尖閣諸島周辺の日本領海に10日、中国海警局の船2隻が侵入したことを明らかにしている。今回の「すずつき」に対する中国の懸念表明はこうした自国の行為を“棚上げ”するかのように見え、Yahoo!ニュースのコメント欄では反発の声も多く集まっている。

 

《尖閣で散々領海侵入しておきながら、自国の領海に入ると懸念を示すとか、笑えないジョークとしか思えない》

 

《日本政府は自衛隊にこれするなあれするな、波風立てるなしか言わずに、現場に制約しかかけません。領海侵犯になった海自護衛艦の関係者が処分されることは許されません》

 

《台湾海峡を1隻の他国軍艦が航行しただけで、抗議する中国なら、艦隊規模で津軽海峡や鹿児島沖を堂々と航行するのはどうかと思う。日本に「深刻な懸念」らしいが、艦隊規模で日本領海スレスレに航行するのは抗議すべきだ》

 

 両国が極端なナショナリズムに走ることのないよう、岸田政権には“日本国船”の慎重なかじ取りを求めたい。

( SmartFLASH )

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