動画配信サービス「Netflix」で配信中のオリジナルドラマ「地面師たち」が絶好調だ。7月25日の配信開始から、日本における週間トップ10で5週連続1位をキープしているが、(非英語圏)グローバルトップ10リストでも5週連続でランクインしている。
地面師とは、土地の所有者になりすまして無断で売却し、その代金を詐取する不動産詐欺師のこと。2017年に発覚した、品川区内の元旅館「海喜館」の跡地をめぐり大手不動産開発会社の積水ハウスが55億円を騙し取られた事件で広く世間に知られるようになった。
本作品は、新庄耕氏の同名小説が原作だが、登場人物や地面師らが不動産開発業者を騙す過程はほぼ、積水ハウス事件がモチーフになっているとされる。映画専門誌編集が解説する。
「地面師役には綾野剛さんと豊川悦司さん。他に“手配師”などの地面師グループのメンバーとして小池栄子さん、北村一樹さん、ピエール瀧さんなど、Netflixドラマの常連俳優が並びます。また、地面師を追う刑事役をリリー・フランキーさん、地面師に騙される不動産会社幹部を山本耕司さんが演じており脇役も豪華です。刑事役以外は、積水ハウス事件における実在の地面師がそれぞれモデルになっているので、視聴者からはまるで実際の犯罪を覗き見ているようだと、高評価を受けています」
しかし、実際の事件において大きな役割を果たした人物が、同作品では抜け落ちているのだという。ジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。
「元旅館跡地の売買予約の登記を積水ハウスがする当日、先に売買予約をおこなった『IKUTAホールディングス』という企業が存在していました。オーナーは都内で女性向けのアパレル会社を経営していたI氏という人物で、社長はK子という女性でした。いずれも一連の事件に関与したとして警視庁の強制捜査で逮捕、実刑判決を受けています。
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積水ハウス事件では、このI氏が積水の別部署にいた中堅社員を完全に取り込んでいたことで、社内情報が筒抜けになっていました。積水ハウスが最後まで地面師の仕掛けに気がつかないまま取引を進めてしまった原因の一つとされています」
さらにI氏は自民党ともつながりがあったようだ。本誌は2人が並ぶ写真を入手した。I氏の隣に写っているのが元自民党議員である。I氏の経営するアパレル会社の関連イベントの際に撮影されたものだ。
「このI氏の会社は当時、キャリア官僚出身の元自民党議員の事務所が所在地になっていました。社長のK子はI氏の愛人兼ビジネスパートナーで、I氏のビジネスでは“接待要員”のようなこともしていたようです。元レースクイーンという噂もあるほどの長身の美女です。積水の社員は、まずI氏やK子と別件で知り合い、この詐欺事件に巻き込まれました。社員はみな接待漬けだったそうです。具体的には、“カネとオンナ”ですね」
作品でも地上げ屋が政治家との関与を仄めかすシーンがある。また、事件の関係者によると、こんな驚きの会話がなされたという。
「すでに大物地面師として知られた主犯のU氏が、積水ハウスのような大企業を騙し通すことはできないのではないかと懸念した時、この案件を持ち込んだ別の地面師が、『Uさんは街のしょぼい不動産屋しか知らんから、そんな発想になるが、こっちは積水を知っているから大丈夫です』と、自信満々に言い放ち、周囲を驚かせたそうです。作品中の人物でいえば、“上司”である豊川さんを綾野さんが自信満々に説得するような感じです」
さらにK子にはこんな経歴もあった。
「フジテレビの美容バラエティ『B. C. ビューティー・コロシアム』でキャスティングプロデューサーをしていたようです。制作したのは共同テレビ。正式な雇用契約はなかったようですが、I氏は当時、芸能界への進出を考えていたようで、K子は収録後に出演者や局幹部らと頻繁に出かけていたそうです。そもそもK子が番組で何をしていたのか理解している者はほとんどいなかったので、逮捕後はかなりの動揺が局内で広がりました」
事実はNetflixよりも奇なり——。
( SmartFLASH )