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ドン・ファン事件、元妻・須藤被告の“判決”を予見していた人物を直撃!傍聴席で見た“無罪確信の瞬間”とは

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.14 06:00 最終更新日:2024.12.14 06:06

ドン・ファン事件、元妻・須藤被告の“判決”を予見していた人物を直撃!傍聴席で見た“無罪確信の瞬間”とは

“紀州のドン・ファン”の元妻・須藤早貴被告(写真・馬詰雅浩)

 

 その瞬間、傍聴席からは、どよめきの声が上がった──。

 

 12月12日、“紀州のドン・ファン”と呼ばれた資産家・野﨑幸助さん殺害事件で、和歌山地裁は元妻の須藤早貴被告に無罪判決を言い渡した。

 

 

「須藤被告は2018年5月、夫だった野﨑さんに和歌山県田辺市の自宅で致死量の覚醒剤を何らかの方法で摂取させ、殺害した罪に問われていました。今年9月に始まった裁判員裁判で、須藤被告は『私は社長(= 野﨑さん)を殺していませんし、覚醒剤を飲ませたこともありません』と一貫して無罪を主張。

 

 検察側は、『須藤被告以外に犯行可能な人物がいなかった』と指摘。また、『覚醒剤 死亡』『完全犯罪』『遺産相続』などといったインターネットの検索履歴から『財産目当てで結婚後、覚醒剤を使って事件と思われないように殺害した』として、無期懲役を求刑していました」(司法担当記者)

 

 この日の裁判で、福島恵子裁判長は須藤被告が覚醒剤を買ったことを「疑わしい」と明言するも、「被告が覚醒剤の可能性があるものを買ったことは認められるが、(密売人の証言通り)氷砂糖の可能性もあり、覚醒剤に間違いないとは認定できない」、「野﨑さんが誤って(覚醒剤を)過剰摂取したことは否定できない」などと述べた。また、 野﨑氏が亡くなれば、被告は多額の資産を得られるなどの動機は考えられるものの、「殺害を推認するには足りない」として、犯罪の証明がないと結論づけた。

 

「検察の主張は直接的な証拠がなく、状況証拠の積み重ねで、弁護側の『うすい灰色をいくら重ねても黒にはならない』という主張が認められたのです。ちなみに、須藤被告は別の詐欺事件で懲役3年6カ月の実刑判決を受け、確定しています」(同前)

 

 無期懲役が一転、世間が驚愕した逆転裁判となったわけだが、じつは判決前に無罪判決の可能性を指摘していた人物がいた。裁判や冤罪事件を数多く取材してきたフリーランスのジャーナリスト・片岡健氏だ。判決の前日には、以下のようにXに書き込んでいた。

 

《実は私も、須藤早貴氏の無罪判決はありえるのかな? と思い始めている 当初は冤罪くさいと思いつつ、日本の刑事裁判の現状からして無罪判決は難しいのではないかと思っていたが、被告人質問後にあった裁判員の質問タイム中に「おやっ」と思うことがあった 》

 

 片岡氏は、今回の裁判を2回傍聴している。なぜ、無罪を“予言”できたのか。本誌は片岡氏を直撃した。

 

「別に“予言”したわけではありませんが、もともと、事件自体について、冤罪かなという心証は持っていました。須藤被告の被告人質問を聞く限り、実行犯ではないなと。たとえば、須藤被告は野﨑さんに対して『全然、愛していない』と発言しています。それに、結婚したのは『お金目的だ』と認めています。

 

 逆に『愛があります』なんて言うと、『そんなわけないだろう』と厳しく反対尋問されたりするわけです。須藤被告は、自分が不利になることでも率直に、あけすけに語っていました。しかも、不自然な部分がないので、追及されてもまったく崩れないんです。これには、検察官も攻め手がない。検察官の反対尋問が全然、有効になっていないんです。だから、反対尋問というより、ただ事実関係を述べただけで終わってしまっていたんです」

 

 片岡氏も投稿で言及していた「おやっ」と思うこと……それは、無罪判決を確信させる瞬間だった。

 

「今回、問題になったのは覚醒剤の飲ませ方。口から飲んでいるのは間違いないとして、あんな苦いものをどうやって大量に飲ませるのか。そこは検察官が全然、立証できていない。これでも有罪になるのかなと思っていたんです。

 

 裁判を傍聴していると、若い男性裁判員が長い時間、須藤被告にいろんな事を質問していて、その中で『野﨑さんにプレゼントをすることはありましたか?』と質問したんです。

 

 須藤被告が『ないです』と答えたら、妙に納得したような様子だった。そのときに『おやっ』と思ったんです。彼は、須藤被告が 野﨑さんに覚醒剤を飲ませるには『プレゼント』を装う方法しかないと考えたのではないか、それが即座に否定されたことで無罪を確信したのではないか。ちなみに、この裁判員は、今回、裁判後の記者会見に応じた人です」(同前)

 

 そして今回の事件を通して改めて感じたのは、裁判員の意識の変化だという。

 

「日本の刑事裁判は99.9%が有罪判決というなかで、従来のような有罪判決が出なかったことには感慨深いものがあります。それは、袴田事件をはじめ、たくさんの冤罪事件が報道される中で、裁判員になる人も、検察を盲信する危険性について再認識したからでしょう。意識が変わってきていると感じました」(同前)

 

 検察が控訴すれば、次は大阪高裁で審理されることになる。須藤被告は控訴審でも無罪となるのだろうか。

( SmartFLASH )

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