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韓国でも“斎藤知事現象” 尹大統領の支持率が爆上がり40%超の怪 一部支持派は“白骨隊”結成し武力衝突の危機
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2025.01.10 17:35 最終更新日:2025.01.10 18:01
“内乱”という二文字がチラつくほど、危機的状況だ――。
韓国では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による唐突な「非常戒厳」の宣言をめぐる政治的な混乱が静まらない。警察や政府高官の捜査を担う高位公職者犯罪捜査処と警察で組織された合同捜査本部は1月3日、大統領公邸に捜査員らを動員し、拘束令状の執行を試みたが、大統領警護庁による“人間の盾”に阻まれ、公邸に近づくことすらできなかった。
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同庁は大統領の警護を理由に、公邸の捜査を許しておらず、合同捜査本部は捜査官らの安全が確保できないとして、同日に執行を中止した。現地で取材した韓国大手新聞社の記者が明かす。
「公邸は2022年、尹大統領の就任で移転した新公邸です。各国の大使館が建ち並ぶ漢南洞という、東京なら青山のようなところですね。合同捜査本部は機動隊ら2000人以上の動員をしましたが、警護隊の車列が道路を塞ぎバリケードのようになっており、さらに大統領支持派の群衆がこれを二重三重に取り囲んでいたので、捜査員はまったく公邸に近づけませんでした。
執行状は1月6日に期限を迎え、7日に再発行されていますが、警護隊はさらに、鉄条網も持ち出していて、“防御陣地”を築いています。強行突破すれば負傷者が出るのは確実。いずれにせよ、合同捜査本部の中核である公捜処の権威は大きく傷つきました」
大統領支持派の群衆は、昨年末から次々と増加しており今では数千人規模になっているという。官邸のある高台から海外ブランドが建ち並ぶブティック街である漢南洞までの数百メートルが、大統領支持のプラカードで埋め尽くされている有様だ。
「拘束令状が再発行されたことで、尹大統領の代理人弁護士は、直接に弁明できる機会を設けるなどの譲歩があれば拘束を受けると表明もしたが、支持派の高い熱量を受けて、合同捜査本部はむしろ安易な妥協は出来ないという判断になっています。
さらに衝撃的な事実として、尹大統領の支持率が急速に“爆上げ”している状態です。問題の“非常戒厳”を発令する前は20%前後と低迷していましたが、韓国世論調査研究所が1月3日、4日に満18歳以上の男女1800人に調査した結果、尹大統領を『強く支持する』が9%、『支持する』が31%で、40%にもなりました。もちろん、『まったく支持しない』が56%、『支持しない』が4%と、不支持率も高いにしろ、尹大統領の支持率が40%代になったのが政権発足以来、初めてのことです」(前出・記者)
政治家の“一発逆転”といえば、日本では兵庫県の斎藤元彦知事が記憶に新しい。“パワハラ疑惑”“おねだり疑惑”で窮地に立たされた斎藤知事だが、亡くなった元局長をめぐる真偽不明の様々な情報が流布し、見事に選挙で再選した。
「現在の韓国でもSNS上では斎藤知事とは比較にならないほどの様々な情報が流れており、まさに“斎藤現象”を大きくしたような事態になっています。
そもそも、今回の支持率については最大野党である『共に民主党』が同研究所の調査結果が捏造されたデータであると反発しており、公職選挙法違反容疑で同研究所を告発しました。しかし一方で、公邸前の状況を見ても、尹大統領に対し、一定の強い支持があるのは間違いなさそうです。
じつは3年前の大統領選では共に民主党代表の李在明氏との得票差は1%しかありませんでした。その1%を分けたのがYouTubeを観た20代の男性だという分析結果があります。もともと高齢者層は親北朝鮮政策にアレルギーが強く、共に民主党に否定的です。そのうえで若い支持者を味方につければ、復権があり得ると尹大統領は計算しているようです」(同前)
政権発足直後から尹大統領は、保守5党合同の立役者であり、若者世代の人気を集めていた李俊錫氏や、中道派から支持を集めた安哲秀氏、検察時代からの側近だった韓東勲氏らと次々に対立。政権基盤を自ら縮小させていった経緯がある。その間に傾倒したのが政治系YouTuberだったとされる。
「驚くべきことに、尹政権は対北朝鮮政策を担う統一部長官などの政府高官をYouTuberから登用しています。その政治系YouTuberが昨年春ごろからしきりに発信していたのが『非常戒厳』です。尹大統領はこうした動画やSNSに影響されて、都度都度、『非常戒厳』を口にするようになり、野党も警戒感を強めていました。
いずれにせよ、こうしたYouTuberにとって、尹政権こそが飯のタネです。このまま崩壊するのは非常に都合が悪いのでネット上で応援するんです。こうした情報の影響を受けてか、公邸前にいる支持派の中には、自警団を気取り白いヘルメットや防御服を揃え、『白骨隊』と名乗るものもでています。『白骨隊』とは、軍事政権下で労働者デモなど、左翼活動を鎮圧させるために組織された警察の特殊部隊の名前です。こうした団体が暴走すれば、市民同士の暴力沙汰も起きうる事態です」
衝突が起きれば社会の混乱と分断に拍車がかかるのは必至。だが「コリア・リポート」編集長の辺真一氏は、「もし、不測の事態になっても尹大統領は辞任することはありません」と、こう話す。
「尹大統領が平壌上空にドローンを飛ばす挑発行為を繰り返したのも、北朝鮮が挑発に乗ってミサイルの一つも飛ばしてくれれば、『非常戒厳』の理由になると考えていたからです。そもそも我々の常識が通じる相手ではないんですよ。尹大統領は世論が自分を支持すれば、議会が可決した弾劾決議すら、実質的に無効にできると本気で考えています。そのために支持派の存在は絶対に必要です。内乱罪で有罪になれば、死刑か無期懲役しかない。尹大統領は絶対に、引くことはないんです。おそらく、憲法裁判所の判決が出るまで、この混乱は続くでしょう」
あまりにスケールの違う“斎藤現象”だ。
( SmartFLASH )