社会・政治社会・政治

伊藤詩織氏「性被害映画」がアカデミー賞ノミネートも…名物女性記者が「ジャーナリズムの信頼が地に堕ちる」と大憤慨

社会・政治
記事投稿日:2025.01.24 17:56 最終更新日:2025.01.24 17:56
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
伊藤詩織氏「性被害映画」がアカデミー賞ノミネートも…名物女性記者が「ジャーナリズムの信頼が地に堕ちる」と大憤慨

伊藤詩織氏(写真:REX/アフロ)

 

 1月23日、元TBS記者からの性被害を実名で告発したジャーナリスト・伊藤詩織氏が監督したドキュメンタリー映画『Black Box Diaries(ブラック・ボックス・ダイアリーズ)』が、第97回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたことが発表された。

 

 この作品は、伊藤氏が2017年に出版した性被害を取り巻く現状に迫ったノンフィクション『Black Box』(文藝春秋)に基づいて制作されたもので、自身の性被害がテーマとなっている。

 

 

 2015年4月、警視庁は準強姦罪として伊藤氏の被害届を受理し、元記者は逮捕されることはなかったが、書類送検された。そして、2016年7月、東京地検は元記者を嫌疑不十分として不起訴処分にした。

 

 伊藤氏側は不服として検察審査会に申し立てたが、認められず、刑事事件化することはなかった。その後、伊藤氏は2017年9月、性行為を強要されたとして元記者に対して民事訴訟を起こし、2022年7月、性被害を認定した最高裁判決が確定している。

 

 芸能記者がこう話す。

 

「この映画は、2024年1月に米サンダンス映画祭の世界映画ドキュメンタリーコンペティション部門にノミネートされ、世界初公開されました。同年4月のサンフランシスコ国際映画祭では審査員特別賞を受賞。さらに同年10月にはスイスのチューリッヒ映画祭で最優秀国際ドキュメンタリー映画賞を受賞するなど、海外で高い評価を受けています」

 

 しかし、日本ではまだ公開されていない。映画に使用した映像や音声に問題があると指摘されているからだ。

 

 社会部記者が問題点を解説する。

 

「伊藤さんが被害を受けた “現場ホテル” の防犯カメラの映像は、訴訟のみに使用する契約だったはずが、伊藤さん側がホテルの承諾を得ずに勝手に映画に使用していると指摘されています。

 

 また、伊藤さんと元記者が乗ったタクシー運転手の顔や証言、伊藤さんに捜査情報を提供してくれた捜査員とのやり取り、伊藤さんの訴訟で代理人を務めた西広陽子弁護士との会話などを、いっさい承諾を得ずに使用していることなどが問題となっているんです。

 

 それまで伊藤さんを支えていた西広弁護士らは、2024年10月、『取材源の秘匿が守られていないため、人権上の問題がある』と記者会見しています」

 

 西広陽子弁護士は会見でこうコメントしていた。

 

「2015年6月に伊藤さんから初めて相談を受けてから、約8年半の間、伊藤さんに関わるさまざまな事件、伊藤さんにまつわるさまざまな問題の解決を担当してきました。

 

 それは伊藤さんだけでなく、彼女の背後にいる多数の性被害者がいて、その方々の性被害による嘆きをあきらめではなく、望みに変えたいとの思いから尽力してきました。

 

 訴訟にはルールがありますので、ルールを守らなければなりません。訴訟戦略的観点からそれを判断してきました。

 

 その一つが、今回問題となっているホテルの防犯カメラ映像に関する誓約書の差し入れです。防犯カメラ映像はホテルのものです。彼女のものではありません。ルールに則って提出されたものです。そのルールを無視することはできません」

 

 承諾なしでの映像や音声の使用に強い憤りを示した西広弁護士は、この記者会見以降、伊藤氏の代理人から外れている。

 

 伊藤氏は映画監督であるとともに、ジャーナリストとして活動してきた。ジャーナリズムにおいて “取材源の秘匿” は最大限守らなければならない一丁目一番地だ。

 

 その原則をいとも簡単に捨て去っている伊藤氏の姿勢に対しては、東京新聞の望月衣塑子記者も自身のXで、批判を展開した。望月氏は2024年12月22日のXにこうポストしていた。

 

《伊藤詩織さんが監督したドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」を観て、愕然とせざるを得なかった。

 

 冒頭からタクシー運転手の顔や声がそのまま晒され、詩織さんに捜査の内幕を語った公益通報者である刑事も隠し撮りされ、横顔や携帯でのやりとりが映し出されている。取材源の秘匿というジャーナリズムの基本原則が完全に無視されており、これが許されるならジャーナリズムの信頼は地に堕ちるだろう》

 

 前出の社会部記者はこう話す。

 

「ふだんは、記者会見などで延々と持論を展開するなどして、身内からも批判を浴びることが多い望月氏ですが、この投稿には『よく言った』と共感しましたね」

 

 X上にも《イソコさん、驚くほど真っ当なことを書いている……》《望月いそこさんが珍しくまともな事いうてはる》といった賛同の声があがっている。

 

「伊藤氏側はプライバシーに配慮しつつ、映像や音声は加工しているなどと反論していますが、西広弁護士らは、取材源の秘匿や公益通報者を保護してないと主張していて、議論は平行線のままです」(同前)

 

 望月氏は、先の投稿に続き、こう書いている。

 

《海外ではこの映画が取材源の無許可使用や公益通報者の隠し撮りを行った事実は知られていないのではないか。この事実を知れば、評価は一変するだろう》

 

 トラブルを抱えたままノミネートされた同作だが、はたして結果は――。

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る