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突風で倒壊した動物保護施設に突然テレビ局が…ストレスで保護犬が自傷行為 強引な“取材依頼”への思いを所長に聞く

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記事投稿日:2025.02.07 15:00 最終更新日:2025.02.07 15:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
突風で倒壊した動物保護施設に突然テレビ局が…ストレスで保護犬が自傷行為 強引な“取材依頼”への思いを所長に聞く

過酷な経験でストレスを抱えてしまったお米丸(写真・「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」のXより)

 

《TV局の方が突然来られました。 いぬたちが吠えます。 お米丸が錯乱し、症状が悪化するので遠慮して下さるようお願いしたのですが「報道の自由」と言われ、聞き入れてもらえませんでした。 暴れた部屋の片付け、再び錯乱状態になり血まみれになった部屋の掃除… また振り出しに戻りました… 報道…》

 

 2月6日、X上で悲痛な想いをポストしたのは、岡山市・北区で動物保護をおこなっている「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」の公式アカウントだ。投稿された画像には、血が散乱した跡もみられ、“悲惨な現場”を彷彿とさせている。

 

 ことの発端は、2月5日に岡山市を局所的に襲った突風だ。竜巻クラスの暴風の影響で、施設の総重量約10tもある、壁や屋根が崩れてしまったのだ。「一般社団法人 ワニガメ生態研究所」所長・荻野要さんはこう語る。

 

「私の施設では、飼い主が手放したワニガメをはじめ、ヘビや犬、猫など多様な動物を保護して、終生飼育しています。そして今回、保護動物たちが直射日光に当たらないよう、新しく作った建物が、突風の影響で壊れてしまったんです。2024年の台風でも飛ばなかったのに、ものの数分で壊れてしまいましたよ。

 

 建物が倒壊する数分前まで、わたしも建物内に入っていましたし、ドッグランが近くにあるので、保護動物たちも危ない目に遭いました。損害は数百万円にのぼります。そのことをポストしたら“災害によって壊れた施設内”を撮影したかったようで、2社ほどテレビ局の方が来られました」

 

 

 だが、当時の萩野さんには、取材を受け入れる余裕がなかった。

 

「壊れた電気配線の復旧と、動物たちがけがをしていないかチェックしている真っ最中でした。『勘弁してください』とお断りすると、1社はすぐにお帰りになったのですが、別の局の方は『報道権があるから』と強弁し、施設の前に居座るので困ってしまいましたよ。『帰ってくださいね』と声はかけましたが、10分ぐらい、いたと思います」

 

 萩野さんはふだんから、動物が外部の人間と突然、ふれ合うことがないよう、なるべく気を配っているという。それには、冒頭のポストに出てくる「お米丸」という保護犬が関係している。

 

「お米丸は2023年7月、7歳で保護されたオスの紀州犬です。じつはとても悲しい経歴なんですよ。一緒に暮らしていた飼い主さんが自死してしまい、半年間、たらい回しにされたあげく、殺処分される直前に、うちで保護できました。保護した際は、首輪の部分の皮が剥けた状態だったんです。

 

 そして2024年8月、お米丸は精神的に不安定な状態になってしまいました。施設の近くに来た救急車から救急隊員の方が出てくるのを見たときに、飼い主さんのことがフラッシュバックしてしまったみたいで、突然、食欲がなくなり、自傷行為に発展するようになってしまいました」

 

 犬の自傷行為は、とても珍しいことだという。

 

「お米丸は、自分の爪をはいだり、牙を抜いたりしてしまう癖があるんです。犬は、基本的に痛い行為は苦手なので、お米丸の行為は症例的にもたいへん珍しいそうです。獣医師さんと相談しながら、合う薬を調合してもらって様子を見ており、最近はやっと落ち着いたところでした」

 

 ところが、今回の“取材依頼”で、お米丸の自傷癖が再発してしまったという。

 

「血まみれの部屋を掃除するのは、やはり悲しかったですね。いまは落ち着いていますが、傷が治るのも数日はかかりますし、薬の量も調節しなければいけなくなってしまいました。お米丸だけでなく、うちは捨てられた子たちばっかりなので、基本的に人間は苦手なんです。施設の倒壊もありましたし、今回の件は困っています。

 

 じつは20年以上前には、積極的にテレビの取材も受けていたんです。年間30本も受けていたことがあります。ただ、テレビの演出のために、わざとカメをたたいて興奮させるなど、あきらかに動物たちにとってストレスをかけてしまう状況などがあり、私もテレビクルーが信用できなくなってしまいました。以来、テレビ取材はすべて断っています。

 

 テレビ局は報道の意義があると考えているのでしょうが、一度、断ったらすぐ引き下がってほしいですよ。病気の子がいるという、切実な事情が分かってもらえなかったのが現実でしょうか」

 

 お米丸をはじめ、動物たちの平穏な日々が戻ることを祈るばかりだ。

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