社会・政治
「老害」批判された側の言い分「ジジイにもいろいろいるんだよ」…田原総一朗、嵐山光三郎らが「なんでも『老害』扱い」に物申す

「いきなり!ステーキ創業者」一瀬邦夫氏【画像あり】ジャーナリスト・田原総一朗氏(写真・木村哲夫)
「こんな雑誌だとは知らなかった。この取材は受けない!」
白のコックコート姿の一瀬邦夫氏(82)は、そう言うと席を立とうとした。
ペッパーフードサービスの創業者・社長として、「いきなり!ステーキ」を500店舗超まで拡大させた一瀬氏。2022年に社長を退任し、現在は和牛ステーキ専門店「和邦(わくに)」の店頭に立つ日々だ。一瀬氏は、本誌FLASHの表紙に “肌色” が多いことが気になるという。
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「僕も、女性は好きですよ(笑)。でも今の店のお客様は、経営者の方が多い。この表紙は、客層に合わない。店のイメージを悪くしたくないんだ」
グラビアのファン層も広がっている今、その言い方は聞き捨てならない。本誌若手記者は、つい口を滑らせた。
「その考え方、『老害』だと思います。ちょっと失礼ですよ」
時代錯誤な主張や振舞いをし、周囲に迷惑をかける「老害」。一方、社会のルールを軽視し、それに従ってきた世代を安易に “老害認定” する若者を「若害(じゃくがい)」と呼ぶ表現も、広がりを見せている。
ペッパー社を史上最年長(当時)で東証マザーズに上場させた経営者を「老害」呼ばわりした記者も「若害」かも――。
「この取材、やっぱり受けるよ」
記者の言葉を聞いた一瀬氏は表情を和らげてこう言い、諭すように語った。
「商売をしている友人から教わった言葉がある。『答えは相手が持っている』。店のよし悪しはお客様が決める、という意味だと僕は受け止めていて、今回の話も同じだと思う。
僕は自分を『老害』だとは思わないけど、記者さんはそう思ったわけだ。僕が勉強をして経験を重ね、ピンチを乗り越えてきた立場から発言しても、それを『老害』だと思う人はいるのだろうね」
そして、経営者としての自らのスタンスについて語った。
「僕は超ワンマン。会社は社長が引っ張っていかなきゃ、大きくならないと思っている。それでも社員が辞めたがらないような会社を作ればいい。
僕は、当時の安倍晋三首相が3%の賃上げ要請をしたときに5%上げた。ストックオプションで家を買った社員もいるよ。忠誠心の高い社員ほど株を売らなかったから、その後の下落ではかわいそうなことをしちゃったけど(苦笑)。
若い従業員を大切にしてきたつもりだし、彼らから『若害』を感じたことはないね」
だが2022年、業績不振で一瀬氏はペッパー社の社長を退任。それを求めたのは、長男の健作氏(現社長)だった。
「『会社から手を引いてほしい』と告げられたとき、なんとか経営に関与できないか……と頭をよぎったよ。でも、僕がいたらやりづらいだろうと思うと、『じゃあ、辞めよう』と。そこでガタガタ言うと、それこそ『老害』だと言われるんだろうね(笑)」
一方、権力の座にしがみつき、 “さっさと退場しろ” と「老害」扱いされる経営者もいる。一例が、1988年からフジ・メディア・ホールディングスを率いる日枝久氏(87)、そして1991年から読売新聞グループの社長を務め、昨年12月に98歳で亡くなった渡邉恒雄氏だ。
「渡邉さんとは3時間のインタビューをしたり、何度か会っています。ともに戦争を知っている世代だから、絶対に反戦。意見は合いましたよ」
2人の共通点は、大物政治家の “指南役” として、政局を動かす、ジャーナリストの枠を超えた存在であることだ。
「ただ、渡邉さんは組織のなかで社長として権力を持った。自分の意に沿わない人は左遷し、思うような人事を敷いていたわけです。大組織だから、忖度する人もいたでしょう。僕は、かつて “テレビ番外地” といわれたテレビ東京を辞めて以来、フリーですからね。権力者にはなりたくないんですよ」
だが、田原氏自身も司会を務める『朝まで生テレビ!』(2024年よりBS朝日)での進行ぶりが炎上することも。2023年には国民民主党の玉木雄一郎代表の発言中に「うるさい! 黙れ!」とブチ切れた。
「ただ、『番組をやめろ』という声はまったく出ていないですよね(同席している三女の和田眞理さんから「SNSにたくさん出ているわよ」とツッコミ)。
たしかに、番組の僕への批判はいっぱいあります。それでも炎上は、無視されるよりも歓迎ですよ。『老害』と言われたら、『どこが老害ですか?』と反論すればいいんです」
そして、炎上を恐れる若い世代に活を入れる。
「僕は基本的にオンラインを信用していないんです。やっぱり殴ったり、殴られたりする距離で――僕は殴られる一方だけど(笑)――コミュニケーションをしないとダメなんです。
今の若い記者は、時の権力者に直接会おうとしない。会う前にあきらめるのはインチキだよ。でも、私の勉強会に参加している若者たちは非常に熱心で、前向きですよ」
90歳の老ジャーナリストが「炎上役」を買って出てくれている。若い世代も、恐れる必要はないのだ。
■「老人の敵は老人」「若者の敵は若者」
作家の嵐山光三郎氏(83)にも話を聞いた。
「さっき病院から帰ってきたんだけど、まわりはみんな老人だからね。我々も、戦略を立てなきゃダメなんですよ」
そう言うと、高齢者を独自に分類し、矢継ぎ早にあげる。
「ジジイもいろいろいるんですよ。公園でいちばんいいところに陣取る『井戸端大老』、東京から田舎に引っ越して、偉そうに話をしている『田園老人』……。
なかでも戦略的なのは、ぜんぶ若いものにまかせちゃう『横着老人』、利権に吸いついたら離さない『スッポン爺さん』だね」
「老いてなお元気」な姿が未練がましく見える、 “スッポン経営者” をどう見る?
「『老害』だと思いますよ。だけど日枝さんも、個人的にはつき合いたくないけど、会社ってどこだってそうじゃない。一人の老人を、みんなで “悪い悪い” って叩く風潮のほうがイヤな感じがするのね」
先日転んでしまい、ステッキ生活だという嵐山氏。電車でこんな体験をした。
「俺は中央線だけど、ふだんはみんな寝てて、席をあまり譲ってくれないね。それが3日前に、若いあんちゃんがさっと立って『どうぞ』と言うんだ。見ると、そいつも松葉杖ついてるんだよ(笑)。『いいよいいよ』って断わると、別の若い人が譲ってくれた。
老人と若者の対立ってないと思ったね。老人の敵は老人。若者の敵は若者。恋する老人も増えてるけどさ、若者は放っておいてくれるもん(笑)」
「老害」「若害」と言い合うだけでは何も解決しない。一瀬さん、申し訳ありませんでした!