社会・政治
岸田氏「台湾要人を来日させず」報道で危惧される「過剰な中国配慮」…安倍元首相3回忌に蔡前総統の参列認めず

岸田前首相
2024年7月に執りおこなわれた安倍晋三元首相の3回忌。台湾の蔡英文前総統が参列できなかったのは、「当時の岸田文雄政権が、中国の反発を懸念したためだった」と、3月20日に共同通信が報じた。複数の日台関係筋が明らかにしたという。
「蔡氏はすでに総統を退任していましたが、当時、日本政府は中国による日本産水産物の輸入停止解除などで日中関係の改善に注力しており、来日が悪影響を及ぼすと判断したとのことです。
安倍氏は常々『台湾有事は日本有事』と語り、台湾との信頼関係構築に尽力してきましたから、同記事では《日台双方から「過剰な対中配慮だ」との批判が出る可能性がある》と指摘しています」(政治担当記者)
それにしても、なぜ岸田政権時代の対応が今になって出てきたのか。政治ジャーナリストの宮崎信行氏に聞いた。
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「2000年代以降、台湾を訪問する日本の政治家が増えています。日中国交正常化を実現して、中国の人々から『恩人』と呼ばれる田中角栄元首相に薫陶を受けた石破茂首相でさえも、2024年8月、超党派の議員団とともに台湾を訪問しています。
石破首相はその際、現地の主要な政治家と会談を重ねましたし、9月におこなわれる自民党総裁選への出馬を、台湾滞在中に事実上表明したほどです。
石破首相の動きが顕著ですが、与野党問わず台湾接近が目立つなか、『台湾は独立した国家だ』と唱える蔡前総統が所属する民進党と日本の政治家が気脈を通じるのは、中国としては看過できないのでしょう。
そうしたことから、親中派の勢力が『日本政府が台湾の前総統の参列を断った』とネガティブな印象を与える狙いがあったのではないかと思えます」
当の故・安倍元首相は、中国の台湾への軍事的な圧力を強調し、総統在任中の蔡氏とも会談をおこなうなど、台湾との強固な信頼関係を築いていた。
一方の中国は、これまでも日中共同声明にある「一つの中国」という原則の履行を日本に求めてきた。その姿勢を強く感じさせる今回の報道。日本と台湾の絆は、もろくも崩れてしまうのか――。