社会・政治
【旧統一教会に解散命令】鈴木エイト氏は「信者の暴走」「献金の継続」を危惧…教団側は将来を悲観「すでに2世信者で自死も」

長年にわたって統一教会と戦い続けてきたジャーナリスト・鈴木エイト氏
3月25日、文部科学省による世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求をめぐり、東京地裁が解散を命じた。
「文科省が解散命令を請求したのは、2023年10月のこと。前年7月に殺害された安倍晋三元首相をめぐり、教団には霊感商法や高額献金の疑惑が多数浮上していました。一方、教団側は、文科省の請求に対して全面的に争う姿勢を示していました」(社会部記者)
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地裁の決定を受け、同日夜、教団側は記者会見を開いた。教団側は「解散は受け入れられない。教団や信徒の人権が危機に瀕している。最後まで闘う」と述べ、即時抗告する方針を示した。教団が抗告すれば、東京高等裁判所で審理がおこなわれる。
抗告される予定とはいえ、解散命令が出たという事実は変わらない。今後、旧統一教会はどうなっていくのか。長年にわたって統一教会と戦い続けてきたジャーナリストの鈴木エイト氏に話を聞いた。
「まだ解散は確定ではないですが、教団は『解散命令が出る』とは思っていなかったようなので、今回に関しては抜本的な対策はしていなかったようなんですよね。登記もまだ動いていないですし。
これから本格的に “お尻に火がついた” 状態になるわけで、いろいろな方法を考えるでしょう。
今回の件について、教団側は、国が宗教迫害をしていると主張しています。それに加えて、司法までもが迫害に加担している、といった形で、よりいっそう対外的に強硬姿勢を取るようになるのではないかと思います。
教団関係者がそれを煽るようにネット上で書き込みをしているので、一部の信者が暴走したり、なにか問題を起こしたりすることはありえます。
たとえば、今回、解散命令に追い込んだように思われている僕とか、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の弁護士などに直接危害が加えられるといった事態も、ネット上での誹謗中傷の激しさを見るとないとは言えません。教団は、教えとしては平和を説いているので、そういう信者はごく一部だと思いますが……」
以前から疑惑となっていた韓国本部への高額献金は、引き続きおこなわれると見られる。
「韓国への巨額の献金は続くでしょう。ただ、解散命令が確定したあとは、宗教団体として存続しても代表者個人への税制上のチェックが入るようになるので、これまでのように年間数百億円を送金することは、やはり難しくなるのではないか。そうなると、逆に税務関連の問題なども起こりうるかもしれません」
解散命令をトリガーに一部が暴走する可能性を指摘する鈴木氏だが、旧統一教会側はどう思っているのか。ある幹部がこう話す。
「今回の解散命令は、私たちにとってみれば “死刑宣告” を受けたようなものです。命令が決定されることは想定内ですが、残念です。もちろん高裁に即時抗告しますが、高裁で負けたら一巻の終わり。最初から解散ありきなのは納得がいきません」
解散命令が出されても、宗教団体としての活動はできると見る向きもあるが、この幹部は否定的だ。
「宗教法人格がなくなると、たぶん各教会は没収されるでしょう。教団が所有する車なども没収され、被害者への賠償金に充てろということになるでしょう。
しかも、教会がなくなると、信者らは個人の自宅などに集まってお祈りをすることになる。すると、たぶん世間的には『地下に潜って活動を続けている』と怪しむことになる。
全国に数千人いる教団の職員も仕事を失います。再就職で前職を聞かれれば、雇ってくれるところなんてないでしょう。すでに2世の信者で自殺者が2人も出ています。将来を悲観してのことでしょう」(同)
これからの教団の在り方についてはどう考えるのか。
「私たちは、けっして反社会的な行為をしているわけではありません。もっとオープンにしたいと思っています。
ただ、メディアに対するアレルギーは相当あります。家庭連合は反社会的集団だという先入観があり、メディアとの間にバリアが作られてしまっている。今後は、そうしたバリアを取り除き、解散命令で言われたような団体ではないことを、報道を通じてアピールしていく必要があるでしょう」(同)
抗告された場合、はたして東京高裁はどんな判決を下すのか――。