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【江戸川区ガス爆発】「静電気でも着火の可能性」東京理科大教授が語る「アセチレンガスの脅威」

爆発のあった現場付近。トラックは黒焦げに、アパートは窓が割れるなど、被害の甚大さを物語っている(写真・梅基展央)
5月27日、東京都江戸川区で起きたガス爆発事故。40年ほど前から駐車場として使用されていた土地での工事中、地表から50~60cmほどの深さに埋められていたガスボンベが損傷し、爆発に至ったというのだ。このガスボンベ、アセチレンガスというガスが入っていたと思われており、長さは1mほど、直径は26cmほどとされている。
東京理科大学の桑名一徳教授はアセチレンガスの特徴についてこう解説する。
「工業用途のアセチレンは、製造過程で混入する不純物のために臭いがすることもありますが、無色無臭です。
メタンやプロパンといった可燃性ガスと比べて燃焼温度が高いので、ガス溶接やガス切断でしばしば用いられます。その際の火炎温度は3000℃以上になります」
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身近な用途で使われることも多いアセチレンガス。じつはかなり引火しやすいという。桑名教授が続ける。
「アセチレンはメタンやプロパンと比べると(着火源に対する)反応性が高く、爆発したときの威力も大きくなります。
可燃性ガスが爆発するときは火花や高温源、衝撃など、何らかの着火源が必要です。可燃性ガスの着火しやすさを示す指標として、最小着火エネルギーがあります。この値が小さいほど着火しやすいのですが、アセチレンの最小着火エネルギーはメタンやプロパンと比べると一桁小さいのです。つまり、静電気火花など小さいエネルギーでも着火し爆発する可能性があります。
開放空間での爆発は閉じた空間より威力が小さいのが普通ですが、アセチレンは反応性が高いため、今回の事故のように数十mから100m程度離れたところでも、ガラスが割れるなどの被害が生じることがあるのです」
過去には、中国天津の倉庫で、化学薬品と水が反応を起こしてアセチレンガスが爆発する事故が発生した。当時、爆風は半径3kmもの範囲に及び、165人の死者と800人近い負傷者が出た。国内でも、2015年に山口県で工業用ガスの製造工場でアセチレンが爆発する事故が起こり、工場が全焼したこともある。
だが今回は、ガスボンベが地中から見つかった。アセチレンガス容器が地中にあった理由について桑名教授は、「よくわかりませんが、地中に保管するようなものではないので、不法に投棄されたものだと思います」と推測する。
テレビ朝日は5月28日のニュース番組で「2024年度、全国で放置され回収されたガスボンベをみると、アセチレンが246本で最も多く、そのうちの29本は解体・建設現場で見つかり、所有者も分かっていない」と報じている。
「可燃性ガス容器は『高圧ガス保安法』により処分方法が決まっています。ガスの販売元に返却して販売元が処分するのですが、古くは個人使用も多く、使用者が勝手に処分することも多かったのです」(社会部記者)
身近に潜むアセチレンガスの脅威について、桑名教授もこのように警鐘を鳴らす。
「今回の場所だけの事象とも思えませんので、掘削等を行う前に十分調査するといった対策が考えられます。
少なくとも今後は不法投棄が起こらないようにしなければならないので、容器の使用・保管・返却に関する記録管理など、現場での管理を徹底することが大切だと思います」
第二の爆発が起きないといいが……。