
党内をまとめきれていない野田佳彦代表(写真・長谷川 新)
6月10日、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出するかどうかが焦点になるなか、同党の野田佳彦代表は午後に国会内で記者会見をおこない、内閣不信任案の扱いについて「適時・適切に、総合的に判断するという以外、何もいま、申しあげる時期ではない」と話した。
判断する時期については「適時はもう来週だろう。会期末が22日なので、それまでの間ということだ」と話し、来週、判断すると示した。国会の会期末が22日に予定されているため、残すところ12日となっている。
政治担当記者が言う。
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「そもそも今回の内閣不信任案に関する話題は、6月3日付の朝日新聞で、石破茂首相が立憲民主党から内閣不信任案が提出された場合、採決を待たずに衆院を解散する方向で検討に入った、という報じられたことが始まりです。通常は、採決されて不信任案が可決されてから、首相が解散か、内閣総辞職を決めるという流れですから、普通はありえない手法だと大きな話題になりました。首相の狙いは、立憲に不信任案を出させないための牽制にある、というのが大方の見立てでした」
首相の“真意”はどうなのか。首相周辺のある自民党議員はこう話す。
「首相は、周囲には『採決前に解散しなければならない理由なんてあるのか。可決されてこそ、次の段階に動く理由があるでしょ』と話していました。つまり、報道されたように、提出されただけで解散するのではなく、定石どおり、不信任案が可決されれば解散するという考えです。また、2024年秋から『総辞職なんてない』とはっきり言っていますから、時期が来れば解散して、国民から自らの評価を受けたい、との思いが強くあるのも事実です」
前出の政治担当記者が続ける。
「国民民主党の玉木雄一郎代表も、日本維新の会の前原誠司共同代表も、ともに野田氏に対して不信任案の提出を求めていましたが、6月7日に両氏ともに、立憲との共同提出については慎重に判断する考えを示しています。
こうした両党の動きに対して、立憲の辻元清美代表代行は9日の記者会見で『内閣不信任案は肝試しではない。ビクビクしているだろう、とか、覚悟を決めていかんかい、という話ではない』と両党を牽制したうえで『主要野党は一緒に腹をくくれるのか。内閣不信任案はそれだけ重みがある』と述べ、野党間での腹の探り合いが続いています」
そうしたなか、6月10日朝、毎日新聞が「スクープ」と銘打ち、野田代表が不信任決議案の提出を見送る調整に入った、などと報じた。
この毎日の報道をいったん打ち消すかのように、野田代表は10日午後の会見で、来週、判断すると答えたのだった。
立憲の小沢一郎衆院議員は、不信任案について一貫して「出すべきだと思う」と主張しているのだが、そう簡単にはいかないようだ。立憲のベテラン秘書が言う。
「うちは年金制度改革法案で、厚生年金を活用した基礎年金の引き上げを要求し、自公両党と修正合意したことで、SNSなどで強烈な批判を浴びています。ですから、いまは不信任案提出は誰もやりたくない、というのが本音です。かりにすぐに衆院選をやるとなると、自民党に対抗するためには小選挙区で野党が乱立すれば、勝てっこないですから、野党間で候補者調整をやらなければならない。時間的にその調整が間に合わないので、タイミングが悪すぎるのです」
ほかにも、立憲の“お家事情”が絡んでくるという。別の立憲関係者はこう明かす。
「2024年10月の衆院選で初当選した新人議員が39人もいます。就任から1年も満たないなかで再び選挙を迎えるのは、かなりの負担になります。また、自民党は衆院選で議席を減らす可能性がありますが、我が党も単独で過半数を獲ることはかなり難しい。そうすると、どこと連立を組むかとか、誰を首相候補にするか、などを事前に決めておく必要があって、そこを議論するだけで党内が割れてしまう懸念があります。ですから、いまは提出は避けるべき、という意見が多いような気がします」
政治部デスクも「野田氏が不信任案を出す可能性は、極めて低いと思っています」と前置きし、こう続ける。
「野田氏は、かりに衆院解散総選挙となった場合、政権交代を前提として戦いたいと考えています。しかし、いまのタイミングでは、野党間の候補者調整含めて、野党が一致団結する体制にはなっていません。ですから、腰が引けているのだと思います。
国民と維新は、両党とも自民と対決する姿勢を示さないと参院選では勝てないと踏んでいますから、提出されれば、賛成するでしょう。提出された場合は、自公は少数与党ですから、可決される可能性が高いと思います」
内閣不信任決議案提出の判断は、来週ヤマ場を迎える。