社会・政治
小泉進次郎氏に「次の首相」トップの調査結果も額面どおりに受け取れない理由…総裁選で露呈していた“未熟さ”への危惧

5月27日、参院農水委員会に登壇した小泉進次郎氏。もみあげに白い毛が混じっていた(写真・長谷川 新)
6月16日、産経新聞は「次の首相に誰がいちばんふさわしいか」の世論調査で、小泉進次郎農水相がトップに躍り出たなどと報じた。
記事によれば、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が、6月14、15日に実施した合同世論調査で、小泉氏が20.7%でトップ、次いで高市早苗前経済安全保障担当相が16.4%となったという。以下、3位は石破茂首相で7.9%、4位は立憲民主党の野田佳彦代表で6.8%、5位が河野太郎元外相で4.2%、6位が国民民主党の玉木雄一郎代表で4.1%、という順位だった。
政治担当記者が言う。
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「前回調査は5月17、18日で、高市氏18.9%、小泉氏15.2%、石破氏7.7%、玉木氏5.9%、野田氏5.5%、河野氏4.6%の順でした。小泉氏が高市氏を逆転しましたが、やはり、小泉氏が推し進めた政府備蓄米の素早い放出についての対応が評価された、ということに尽きるのではないでしょうか。共同通信の世論調査でも、7割近くが備蓄米放出の対応に納得すると回答しています。一方、前回調査では野党でトップだった玉木氏は、やはり参院選比例代表候補に内定していた山尾志桜里元衆院議員の公認取り消し問題が批判されたことで、失速したようです」
Xではこのニュースについて《備蓄米効果で次の首相? やっぱりこの国、政策じゃなく「メディアの印象」で選ばれる。》《中味のない総理大臣は今の日本に必要なしだ。備蓄米放出しただけの大臣が総理大臣候補NO1だなんて、あり得ないよ》と、辛らつな声があがっている。
現在の小泉人気については、不透明な部分が多いようだ。自民党ベテラン秘書が言う。
「たしかに小泉氏は、5月21日に農水相に就任して以降、コメ問題でメディアに登場する機会が急増しています。しかも備蓄米放出の対応が評価されたこともあり、現時点で“次の首相”といった声が国民から出ていることはある程度は理解できます。
しかし、2024年9月の自民党総裁選では、前評判ではぶっちぎりの1位という声もあがるなか、いざ、ふたを開けてみれば小泉氏の未熟さが露呈され、ずるずると失速してしまいました。そうしたこともあるため、党内では、もちろん期待感はあるものの、冷静に見ていますね」
9人が立候補した2024年9月27日の自民党総裁選で、小泉氏は議員票では全体トップの75票を獲得していた。しかし、総党員算定票では全体で3位の61票と伸び悩み、合計票数では高市氏、石破氏に次ぐ3位となり、上位2名による決選投票に進むことができなかった。
「総裁選前の9月6日、小泉氏は立候補の記者会見を開きましたが、演説部分の約35分で657回も、手元にある資料、いわゆる“カンペ”に目を落としていました。質疑応答の時間に入ってもカンペを活用する場面が多く見られました。やはり、首相になる人物はこうしたものに頼らず、対応することが求められます。このとき、小泉氏の未熟さを感じざるを得ませんでした」(前出・政治担当記者)
小泉氏が“カンペ”に頼ったのは、このときだけではなかった。
総裁選が告示された9月12日、候補者9名の立会演説会がおこなわれた。そのなかで、本誌は各候補者がカンペを見る回数をカウントしていたが、そのなかでぶっちぎりの1位だったのが、小泉氏だった。2位の上川陽子外相(当時)の143回を大きく上回る、総計221回もカンペに頼る場面があった。
当時、ある自民党議員はこう話していた。
「言い間違いを防ぐため、“安全運転”を心がけてカンペを読んだのでしょうが、結果として『自信のなさ』を印象づけることになってしまいました。党内では『国会答弁や党首討論に耐えられるのか』という声まであがっていました」
小泉氏が失速した原因は、こうしたカンペの多用以外にも、自身の発言にあった。前出の政治担当記者が言う。
「9月6日の出馬会見で、小泉氏は『日本経済のダイナミズムを取り戻すため、労働市場改革の本丸である解雇規制の見直しに挑みたい』と表明、事実上の最優先公約となりました。ところが、この発言が、『企業が社員を解雇しやすくするのか』と大反発を食らいました。すると小泉氏は、13日の番組でこうした声を『いや、違う』と否定。『働き方が多様な時代にルールが合っていない状況を変えていきたい。大企業にリスキリング、再就職支援を義務づけたい』と、当初の主張を大幅にトーンダウンさせました。このことで、小泉氏がいったい何をしたいのか、国民にはまったく見えなくなってしまったのです」
その後の総裁選は、人気はあるが、実力が伴わなかった結果の3位だったというわけだ。
石破政権の支持率回復に貢献している小泉氏だが、自らの総裁、総理への道は、まだ先のようだ。