社会・政治
不信任案「提出せず」でいちばんガッカリしたのは? 萩生田光一氏ら “裏金議員” が「衆参ダブル選挙」切望した理由

演説する萩生田光一氏(写真・梅基展央)
国会の会期末が3日後に迫った6月19日、国会内で開いた臨時の記者会見で、立憲民主党の野田佳彦代表は、石破内閣への不信任決議案の提出を見送ることを明らかにした。
野田代表は、同日昼すぎの与野党の党首会談に触れ、「アメリカの関税措置は、まさに国難という認識は共有しているが、改めて合意に至る状況ではないことがわかった。中東情勢も戦闘が激しさを増し、大事な外交努力をしなければいけないときに、政治的な空白は回避すべきだ」と理由を述べた。
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これに苦笑を隠せないのは、自民党の現職議員だ。
「はっきり言って茶番でした。首相周辺は、不信任決議案が出れば国会で採決せずに解散すると明言しています。野党はすでに過半数の議席を持っているわけで、しかも7月には参院選もある。誰が考えても、次の選挙で自公与党の過半数割れに追い込んだほうが合理的なんです。
野田さんは端から不信任を出す気はありませんでしたが、石破さんとしては、万一の事態も想定しなければなりません。それが、党首会談を呼びかけて、さらに、関税交渉が進んでいないことを明かした理由です。
野田さんが不信任を出さないで済む理由を、石破さんのほうからわざわざあげたわけです」
とはいえ、野党側も準備不足は否めないようだ。自民党議員が続ける。
「ほかの野党にしても、たとえば今年度予算案に賛成した日本維新の会の場合、不信任案に賛成するなら、国民に対してそれなりの理由の説明が必要です。
国民民主党は主戦論を唱えていますが、これも恰好だけ。山尾志桜里さんの公認問題で支持率が急落したなかで “衆参ダブル選挙” なんて避けたいに決まっています。
共産党に関しては、独自の情勢調査の結果、いま解散しても小選挙区は1議席しか取れないという結果が出ているそうです。つまり、野党側も総選挙の準備はまったく進んでいない。不信任案などもってのほかの状況です。
でも、都議選の真っただ中でもあったので、与党との対決姿勢を国民に示さなければならない。野田さん一人に責任をかぶせているだけなんですよ」
とはいえ、伸びしろが最も大きかったはずの国民民主党が「山尾問題」でつまずき、自民党にとっては解散の好機であったのも確かだ。
実際、2017年の第2次安倍晋三内閣による「国難突破解散」の直前には、当時野党第1党だった民進党で、同党幹事長に推されていた山尾氏が不倫疑惑によって離党する事態になった。これが野党第1党が瓦解することになる「希望の党騒動」を生じさせ、自公与党が311議席の大勝利を収めた。
同じく山尾氏の騒動で国民民主党が揺れているいま、「解散していれば2017年と同じく大勝できた可能性が高かった」と見る議員も多いという。
前出の議員は「いちばん不信任案不提出にがっかりしているのは、いわゆる『裏金議員』の先生方だと思いますよ」と言う。
「先の総選挙で非公認になった萩生田光一元総務会長さんらは、自民党の会派入りしただけで、現実には無所属の会の議員です。議場内でも自民党の2回当選議員の前列に席が振り当てられています。以前は後列にある党幹部が集まったあたりでしたから、いまではかなり前方となっています。
議場内で麻生太郎さんらと談笑している様子が撮影されていますが、その都度、階段を10段以上も上がっているはずです。萩生田さんは、“反石破” の急先鋒とされる高市早苗さんを中心にした勉強会を仕掛けたりもしていますが、議場に入るたびに “身の上” を知ることになります。
もし野田さんから不信任案が出され、衆参ダブル選挙となっていれば、晴れて『裏金議員』と呼ばれた萩生田さんらも自民党公認の看板を取り戻せるはずでした。
その運びにならなかったことに、内心では地団駄を踏んでいることでしょうね。晴れて “本当の自民党議員” になれる日を指折り数えているはずですよ」
萩生田らが公認を取り戻せる日は、まだ遠い――。