社会・政治社会・政治

【参院選直前】注目の参政党「選挙ウォッチャー」4人に聞いた神谷代表の“戦略”と“弱点”

社会・政治
記事投稿日:2025.07.01 06:00 最終更新日:2025.07.01 06:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
【参院選直前】注目の参政党「選挙ウォッチャー」4人に聞いた神谷代表の“戦略”と“弱点”

6月27日、松本市で演説する参政党の神谷宗幣代表(写真・金谷千治)

 

「日本人ファーストだー!」

 

 6月27日、長野県松本市の街頭演説会で、参政党の神谷宗幣(そうへい)代表がこう叫ぶと、支持者たちは大きな歓声をあげ、この日いちばんの盛り上がりを見せた。

 

 6月22日投開票の東京都議選で3議席を獲得し、大きな注目が集まる参政党。来たる参院選でも躍進が見込まれているが、その“正体”はなんなのか。飛ぶ鳥を落とす勢いの神谷代表の“弱点”を、ウォッチャー4人に聞いた。

 

 

■“ゴリゴリ”ではないゆるい支持者集める

 

「参政党は2020年の結党以来、街宣活動などを継続的におこない、全国の地方議会で150議席を獲得しています。その意味では、“ポッと出”の政党ではないんです」

 

 こう語るのは、選挙と政治について長く取材してきた、ジャーナリストの畠山理仁氏だ。

 

 7月3日に公示され、20日に投開票される参院選に向け、参政党は、公式サイトに公約をアップしている。トップには《日本人ファースト》というスローガンを大きく掲げ、《行き過ぎた外国人受け入れに反対》など、「排外主義」的な主張も見られる。

 

 だが、時事通信の6月の政党支持率調査で、参政党は衆参両院で野党第2党である日本維新の会を上回る支持を集めた。来たる参院選では、すでに同党は54人の候補者の擁立を予定しており、“台風の目”になるのではないかと噂されているのだ。

 

「超保守派的な政策を報じられることが多く、反ワクチン運動のような陰謀論に立った主張もあり、支持者も含めてなんとなく胡散臭いイメージを受ける人はいまだに多いです。たしかに、それらも事実の一部ではありますが、いま、街宣などに集まる支持者は“ゴリゴリの保守派”ではなく、むしろ中心層は『食の安全』などといった主張に惹かれているのです」(畠山氏)

 

 参政党は、「3つの重点政策」として《教育・人づくり》《食と健康・環境保全》《国のまもり》を掲げてきた。参院選の公約の中心である「外国人問題」は、このうち《国のまもり》に含まれる。

 

 2024年に発表した「新型コロナワクチンに関する提言」では、《新型コロナワクチンの接種推進策の見直しを求める》ことを主張している。じつはこの政策は、《食と健康》の前提となる「オーガニック信仰」に結びつくものだという。

 

「参政党は、以前は『ぬか床講座』などを主催し、子どもを持つ母親世代の支持を広げてきました。一見、過激な反ワクチンの主張もこの流れを汲むもので、自然と受け入れられています。初期の参政党の街宣では、党員がマイクリレー形式で、思い思いの主張をしていました。党の公約の範囲内なら、テーマ選びは自由だったようです。この独特のゆるさが、広く支持者や党員を獲得できる理由になっていると思います」(畠山氏)

 

■選挙は“推し活”! 女性候補の「特徴」

 

 熱烈な支持者が多い一方で、ゆるく支持を拡大してきたという参政党。では現在、どのような選挙戦略で、参院選での党勢拡大を狙うのか。

 

 日本全国の選挙を取材する選挙ウォッチャーちだい氏は、「参政党が唱える排外主義は、現在、ネットでウケてしまう」と問題意識を口にする。そこには、周到な戦略が……。

 

「参政党には女性の候補者が多く、なかでも現職議員の北野裕子、吉川里奈両衆院議員らは、党の中核を担っています。彼女たちについてのSNSの書き込みを見ると、“推し活”として応援している支持者が多いことがわかります」

 

 他党の候補者は、子育てや、ときには母子家庭に育った苦労をアピールするが、参政党の女性候補者には、別の特徴があるという。

 

「参政党の女性候補者は、“生活に疲れていない女性”を前面に出しているのです。参院選東京選挙区では、シンガーソングキャスターのさやさんという方が立候補予定で、僕は当選する可能性はあると思っています。いま、ネットが選挙の中心になりつつあるなかで、すでに彼女を“推す”書き込みが増えていますから」(ちだい氏)

 

 今回の選挙で、参政党は45選挙区すべてに候補者を立てると宣言し、注目された。

 

「さすがに、すべての選挙区で勝つのは難しいでしょう。どう考えても、勝ちを狙ってこの候補者数を立てているとは思えません。すべての選挙区に候補者を立てたのは、おそらく党勢拡大よりも“宣伝”が主目的ではないでしょうか。選挙運動を通じて支持者が増えれば、政治家が直接、地方をまわる『タウンミーティング』で、それぞれの地域でイベントを開いてお金を集めることもできます」(ちだい氏)

 

■“まともな政党”に見せる「ステルス陰謀論」

 

 神谷代表は、かねてから著書などで「戦後は連合国軍総司令部(GHQ)によって、日本は自虐史観に洗脳された」「メディアも特定の勢力に牛耳られている」と、「陰謀論」とも取れる発言をしてきた。

 

 宗教団体や陰謀論など、カルト的な集団を取材してきたジャーナリストの藤倉善郎氏は「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)などと違い、たとえば組織的な金銭的被害が問題視されているわけではなく、いわゆるカルト集団と同一視まではできません」と言いつつ、「キワモノ政党です」と一刀両断する。

 

「陰謀論的な内容の演説は以前からありましたが、仲間内ではない公道上の演説だと、露骨な言い回しを避ける傾向があります。こうした手法を私は『ステルス陰謀論』と呼んでいます。先の都議選では、より一層、この手法が研ぎ澄まされており、“まともな政党”っぽく見せることには成功しているといえるでしょう」

 

 都議選では、「日本人ファースト」といった国粋主義的な主張が、それまで以上に全面に出てきたという。

 

「それも、あまり攻撃的に言わないで『外国人が優遇されている』『制度や政治のほうが悪い』と、まじめに政策を語っているようにする戦略でした。そうした手法が、もとの“外国人嫌い”ではない人たちにも『そう言われると、外国人を見ることが増えたよね』という印象にフィットして、勢力を拡大しているのだと思われます」(藤倉氏)

 

 では、こうした戦略を展開する参政党の“弱点”はどこにあるのだろうか。

 

「参政党は、支持者も候補者も一枚岩ではないですよ。共通しているのは、『このままでは日本は危ない』という危機感だけで、興味や主張、利害はまちまち。あまり政治に明るくない人も多い。党の政策・理念のすべてに共感し、強固につながる集団というほどではないため、今後も分裂が起きうるでしょうね」(藤倉氏)

 

■思想的な核がなく、いずれ自滅する

 

 神谷代表は、2007年に大阪府吹田市議会議員を6年務めた後、2012年の衆院選に自民党から挑戦するも落選。保守系の言論人との対談動画などを配信する会社を起業した。

 

 そのころに神谷代表と知り合ったのが、当時は保守派の論客として活動していた、時事問題評論家の古谷経衡(つねひら)氏だ。

 

「2012年ごろは、YouTube番組で共演していました。当時、彼に人を紹介したこともありましたが、保守的な観念、歴史観などをぜんぜん勉強していなくて、薄っぺらいというか……。ただただ“熱いお兄ちゃん”という感じでした。一方、いまの神谷代表も昔と変わらず、熱血漢で暑苦しいですが、裏表がない。悪い人ではないのですが、その時々の人に影響を受けやすいところがあります。現在の参政党が主張する有機農業や反ワクチンについては、当時はまったく話していませんでした」

 

 1年ほど仕事でつき合った古谷氏だが、神谷代表が参政党を結党する2020年春には、没交渉になっていた。現在の参政党をどう見ているのか。

 

「支持者に話を聞くと、40~50代でこれまで投票経験がないという人が多かったんです。それでも社交性はあるし、仕事もちゃんとやってきた人たちでした。情報源はYouTubeで、実際に外国人に嫌がらせをされたような人は、ほとんどいませんでした」

 

 古谷氏は、そんな“無自覚で、漠然とした排外主義”に違和感を持っている。

 

「れいわ新選組とは国家観こそ違いますが、先ほど述べた有機農業や反ワクチンなど、共通する政策も多い。それで、れいわの支持者を食ってきたんでしょう。ただ、こうした主張にのめりこむ人は、気が移りやすいのです。“新しい店”ができたらそっちに、という人が多い。だから、また新しい党ができたら、そちらに移るのでしょう。神谷代表自身に思想的な核がない以上、参政党は、いずれ自滅するのではないかと思います」

 

 キワモノとして終わるか、それとも……。

続きを見る
12

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る