社会・政治
【海岸には腐敗臭】千葉・館山にマッコウクジラ4頭漂着…歯を死体から切り取る人たちの「意外な目的」とは

2025年7月30日、千葉県館山市の平砂浦海岸に漂着した4頭のマッコウクジラ(写真・保坂駱駝)
7月30日朝、ロシア・カムチャツカ半島付近で、M8.8の巨大地震が発生した。日本でも太平洋沿岸を中心に津波警報が発表されたが、同日には千葉県館山市の平砂浦海岸にマッコウクジラ4頭が打ち上げられている模様がテレビ各局で中継された。
鯨類学が専門である東京海洋大学の中村玄准教授は、地震との因果関係を否定しつつ、座礁の原因についてこう語った。
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「クジラが座礁する理由には、さまざまな説があります。クジラは地磁気を頼りに回遊しているとされており、地磁気と遠浅の地形の影響で浅瀬に入り込み、戻れなくなった可能性があります」
さらに中村准教授によれば、こんな見方もあるという。
「『個体群調整』、つまり同じ種の数を減らす目的で自殺するという説もあります。マッコウクジラは大人になると、ほかのオスと戦い、勝ち抜いた個体だけが繁殖の機会を手にします。私の体感でいえば、過去のマッコウクジラの座礁例はオスの比率が高く、今回の4頭もオスとみられていることから、この説も信憑性があります」
本誌が海岸に到着すると、すでに見物人が集まっていた。カメラ片手の人や、無邪気に近づく子供、クジラの局部に触れる人もいた。そんななか、クジラの歯をのこぎりで切り取っている人の姿も。歯をくり抜いた跡がいくつかあり、血だまりができていた。中村准教授は、こう推測し、警鐘を鳴らす。
「おそらく彼らの目的は、コレクションとしての採集か、売買でしょう。マッコウクジラの歯は、1980年代までは印鑑や工芸品として多く流通していました。若い個体の歯は中が空洞ですが、成長とともに内部が埋まるため、工芸的価値が高くなります。売買価格は、推測ですが1本あたり数千円から数万円になります。現在では新たな入手経路はほぼありませんが、漂着個体の一部でも利用する場合は水産庁への申請が必須です」
海岸には腐敗臭が漂っている。“サーフィンの聖地” としても知られる海岸に、気の毒なクジラたちはいったいいつまで鎮座するのか。処理を担う千葉県の安房土木事務所に聞いた。
「クジラは移動が難しく感染症の懸念もあるため、埋却処理をおこないます。台風の影響もあり処理日程は未定ですが、できるだけ早く対応したいと考えています」
中村准教授によると、今回座礁した個体はそれほど高齢ではないため、歯はまだ空洞の可能性が高いそうだ。くれぐれもへんな気を起こさないように。