社会・政治
【自民党、内紛やまず】石破首相「党総裁」として生き残る「唯一の手段」を識者が指摘…それでもそびえる “高い壁” とは

2025年9月2日、自民党役員会後に“弱音”を漏らした石破茂総裁(写真・長谷川 新)
「大丈夫であるわけないじゃないですか」
9月2日、自民党本部で役員会を終えた石破茂首相は、フリーのカメラマンから「(ケガした)足はどうですか」と尋ねられると、足ではなく “自身の足元” だと勘違いしたのか、冒頭のように弱音を吐いた。
総裁選の前倒しをめぐり、自民党は混乱を極めている──。
「石破政権になり、昨年10月の衆院選、今年6月の都議選、さらに7月の参院選で3連敗となった自民党は、もう後がありません。党内では石破首相の責任論が問いただされており、“石破おろし” が加速しています。
自民党の党則では、総裁の任期途中でも、所属国会議員と都道府県連代表各1名の合計で、『臨時総裁選の要求』が半数を超えれば、総裁選の前倒しが可能です。
現在、自民党所属の衆参議員は295人。そこに47都道府県の代表を足すと342人ですから、過半数は172人。これらの人数が集まるかが争点となっています」(政治部記者)
臨時総裁選の実施を求める書面の提出日は9月8日。元日本テレビ政治部記者で政治ジャーナリストの青山和弘氏に、今後の見通しを聞いた。
「9月3日、麻生太郎氏が総裁選の実施要求を表明しましたが、その影響は、当然あると思います。党の最高顧問で元総理という立場の方が(書類を)出すというなら、若い議員たちも出しやすくなります。麻生派はもちろん、それ以外の議員にも影響するでしょう。
まだわかりませんが、総裁選の前倒しの公算はかなり高くなったと思います。私の取材では、閣僚のなかからも書類を提出する議員が出てくるのは確実です」(以下「」内は青山氏)
実際、9月5日17時現在、鈴木馨祐法相が現大臣として初めて書類提出を表明した。今後の石破首相の対応はどうなるのか?
「前倒しが決まりそうな状況になれば、石破さんとしては、書面の提出をさせない案も浮上しています。つまり、その前に自ら総裁辞任を表明するわけです。
石破さんは、引きずり下ろされる形は避けたいという思いがすごく強い。いったん辞任して、総裁選をおこない、自分も出馬する。それが石破さんが総裁として生き延びる、唯一の手段となるかもしれません。
ただ、その場合、推薦人の20人を集められるかどうかが “高い壁” となるでしょう。任期途中で辞任に追い込まれた総裁に、国会議員20人を集められるだけの力が残っているかどうか。ですから、これは一種の賭けだと言えます」
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総裁選に出馬すると見られるのは、昨年同様の面子だ。
「高市早苗さん、小泉進次郎さん、小林鷹之さん。林芳正さんも可能性はありますが、仮に石破さんが出馬した場合、石破内閣の官房長官という立場からは立候補しにくいかもしれません。
予測は非常に難しいですが、総裁選をフルスペック(全国の党員・党友投票も含める)でおこなうか、簡略型(国会議員票と都道府県票のみ)でおこなうかによっても違います。
秋の臨時国会の召集があまりに遅くなるので、簡略型になる可能性もある。高市さんは2024年の総裁選で2位ですから、有力候補なのは間違いないですが、簡略型になった場合は厳しい。まして小林さんが出馬すれば、保守票が割れますからさらに厳しい。そうなると、小泉さんが有利なのでは、と私は見ています」
自民党の動向を注視しているのは野党もそうだ。
「はっきり言えば、自民党の内紛ですから、黙って見ているしかない。早く総裁が決まってくれないと、政策の話もなにも進まないので、早く決めてくれと。
ただ、場合によっては解散総選挙になる可能性もないわけではありません。たとえば、小泉さんが総裁になった場合、国民的な人気も高いですから、政権発足時の支持率が高ければ、すぐに解散に踏み切る可能性もあります。野党からはそれを警戒する声が出ています」
9月5日、立憲民主党の野田佳彦代表は、自民党の総裁選前倒しをめぐる報道について、「そんな政治空白を作っていいのか」と懐疑的な意見を述べた。早期の決着を望む人が多いのかもしれない──。