社会・政治
「応援の効果は絶大」小泉進次郎の演説メモを独占入手
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.03.20 11:00 最終更新日:2019.10.08 07:01
「沖縄県知事と政府の代理戦争がこの市長選挙だと。名護市民の皆さん、本当に皆さんはその見方で選挙を見ていますか! 見てませんという声が、いっぱいありますよ!」
1月31日、小泉進次郎・自民党筆頭副幹事長(36)は、沖縄県・名護市民にこう演説していた。2月4日の沖縄県名護市長選。辺野古沖への米海兵隊基地移設問題の鍵を握る選挙だった。
結果は、自公などが推薦した渡具知武豊候補(56)が、移設反対派で現職の稲嶺進候補(72)を破った。自民党関係者も、「進次郎氏の応援演説の効果は絶大だった」と振り返る。
じつは、彼の演説には秘密がある。
「演説の原稿を作るための『応援メモ』が党本部遊説局で作られている」(同前)
本誌は、党内で極秘とされる「応援メモ」を入手した。タイトルは「とぐち武豊候補【自民、公明、維新推薦】応援メモ」である。
候補者のプロフィルに始まり、名護市の概況、候補者の政策、対立する稲嶺市政の問題点、名護の話題などが細かく、5枚にまとめられている。
自民党は本誌の取材に「選挙対策に関するご質問にはお答えしておりません」としたが、別の自民党関係者は、こう明かした。
「党本部の遊説局は、国政選挙や重要な地方選挙などに応援で入る国会議員の演説内容についてのメモを、逐一作ります。小泉氏も同様です」
だが、小泉氏はほかの政治家とはひと味違う。選挙プランナーの松田馨氏によれば、「小泉氏はメモ作りに昔からこだわりがある」と、こう続ける。
「小泉氏本人がこういう部分を調べてほしいと要求し、それを党本部が作ることになっているそうです。特徴としては、応援に行く選挙区の情報を非常に細かく集めます。地元の名産品、特産品、市名の由来のような、地元の人でも意外と知らないような話まで。地元有権者の郷土愛をくすぐるんです」
党本部で練られたメモは小泉氏へ渡り、自分で演説の原稿にするという。
「衆院選のときは、1日に何カ所も “はしご” します。そういう場合は、移動時間の合間に原稿を作ったりする。だから、原稿のもととなるメモ作りは、党本部にまかせるのです」(同前)
では、実際の名護市長選で小泉氏は「応援メモ」をどのように活用したのか。1月31日、名護市役所前での街頭演説内容と「応援メモ」を比較すると名護市民の生活の課題、特産品や市名の由来など、メモをおおいに活用した内容を話していることがわかる。
全国津々浦々を渡り歩いていても、訪れる土地の話題をすらすら語れる理由がここにあるのだ。しかも、その実力は、日々の研鑽に裏打ちされている。生で10回ほど聴いているという松田氏は、こう分析する。
「心構えも含めて丁寧な準備をしていると聞きます。演説の極意は、間と抑揚とされます。小泉氏は寄席に足を運び、間と抑揚の勉強を続けていて、これが非常にうまい。演説の内容も非常にわかりやすい。
ときにはご当地の方言を使いながら、聴衆の心を摑む技術もある。政治家として、演説がひとつの大きな武器になることをわかったうえで、常に技術を磨いているのです」
今回入手した「応援メモ」には、「NGワード」という箇所がある。じつは、それがいつもと違う特別な選挙戦だったことを示している。
「名護市長選は、菅義偉官房長官が陣頭指揮を執った。辺野古沖移設を進めるため、なんとしても勝たなければならなかった。通常、党遊説局が小泉事務所にメモを送るが、今回は官邸が間に入っている。『NGワード』のくだりなど、官邸がボリュームを増やして小泉事務所に送っている」(政治部記者)
稲嶺候補側は辺野古移設を争点に掲げていたが、同じ土俵に上がらないように<辺野古の「へ」の字も言わない>という戦術を徹底させていた。
「公明党沖縄県本部は、辺野古沖移設には反対の方針を変えていない。移設問題を市長選の争点から外し、公明党の協力を仰いだ。小泉氏は官邸への批判を辞さないことがあるだけに、釘を刺されていたわけだ」(同前)
「沈黙」は本音か建前か。勝利を重ね、宰相への道を進む。
(週刊FLASH 2018年3月6日号)