
2025年10月4日、自民党新総裁に選出された高市早苗氏(写真・JMPA)
10月4日に新総裁に決定した高市早苗。「アベノミクス」を継承した「サナエノミクス」を提唱する、積極財政を打ち出している。これに株式相場は即座に反応。日経平均株価は一時、史上初の4万8000円台を突破した。
「高市内閣が誕生すれば、まずは経済安全保障の強化に関連した銘柄の株価上昇が期待できます。これに関連する分野としては、AIや核融合、半導体関連、製薬などの企業が上がるでしょう。さらに、今後インフレが予想されることもあり、インフレに強いとされる不動産株などの上昇も見込まれています。
総裁選勝利後には、三菱重工株が3日終値の3690円から、6日始値で4250円にまで急上昇しました。株の最小購入単元100株で考えると、3日に36万9000円で購入したものが、翌週明けには42万5000円にまで上昇したことになります。とはいえ、約37万円の株購入はなかなか庶民には手が届きませんが……」(経済担当記者)
すでに上がりつつある株式だが、株のプロは「まだまだ終わらない」と見ている。そこで本誌は、「20万円で買える“高市銘柄”」を株のプロ2人に、選定してもらった。高市内閣で期待される諸分野について、今後さらに飛躍を遂げる“高市銘柄”とは――。
※高市総裁誕生前後比は、本誌調べ
■マーケットアナリスト・藤本誠之氏
「年内の日経平均は、一時的に5万円に触ることも視野に入っています」
こう意気込む藤本氏。「サナエノミクス」について、こう分析していた。
「デフレの終焉からインフレ時代へと日本経済が転換するなか、高市総裁の誕生によって、金融緩和と成長戦略を軸にした『サナエノミクス』が押し出されています。特に私が注目しているのは、政府主導の“経済再生”“DX”“少子化対策”です。高市さんがこれらについて注力すれば、それぞれの分野での設備投資、消費、雇用に好循環が広がります。実体経済と株式市場の好循環が続き、押し目は中長期の買い場と考えます」
では、具体的にどの株が「後のび高市銘柄」とみられるのか。10挙げてもらった。以下が、藤本さんのリストだ。
・JALCOホールディングス(6625)
M&A戦略で業容拡大。金融緩和下で不動産・遊技機事業が再成長している。収益基盤強化が進む。高市総裁誕生前後比106.6%。
10日終値:360円
・スター・マイカ・ホールディングス(2975)
中古マンション再生の国内首位。資産価値上昇と、住宅政策支援が追い風。高市総裁誕生前後比102.5%
10日終値:1125円
・Heartseed(219A)
バイオ分野で再興の気配が見える。事業パートナーであったノボノルディスク・エーエスとの提携を解消したことで不安視されているが、「災い転じて福となす」な展開に注目が集まっている。高市総裁誕生前後比105.2%
10日終値:1733円
・ダイナミックマッププラットフォーム(336A)
世界最大級の3D地図データを保有する。自動運転・ドローンなどの国策領域で成長加速が期待できる。高市総裁誕生前後比104.5%
10日終値:990円
・イノテック(9880)
半導体のテスター事業で、高市内閣が注力するとみられる科学技術に関連して業績飛躍が期待できる。高市総裁誕生前後比101.9%
10日終値:1606円
・IBJ(6071)
国内最大の婚活支援企業。少子化対策の本命として、政策からの支援が期待できる。強固な収益基盤があることでも知られ、安定感がある。高市総裁誕生前後比100%
10日終値:825円
・アイビーシー(3920)
システム監視、ITセキュリティの“オンリーワン企業”。サイバー防衛・安全保障テーマで活躍が見込まれる。高市総裁誕生前後比100%
10日終値:992円
■金融アナリスト・三井智映子氏
三井氏も日経平均5万円を超す可能性を指摘する。
「サナエノミクスの積極財政・成長重視への姿勢から、海外勢の日本株買いが続く可能性があります。今後は、円安基調と、補正予算による景気刺激が追い風となり、企業業績の上振れ期待も高まります。
短期的な調整を挟みつつ、5万円の大台を越えれば5万5000円や、それ以上も目指せると思います。ただし、いくつかの“黄色信号”も。現在の円急落の影響を受けて、米中貿易摩擦懸念の再燃、トランプ大統領の言動、10月日銀金融政策決定会合での利上げの可能性、さらには当然ながら高市政権の政策実行力によっては、現在の“タカイチトレード”の巻き戻しが発生する可能性もあります。注意が必要です」
そんななか、三井氏のおすすめする「20万円以下の高市銘柄」は、以下の通りだ。
・東洋エンジニアリング(6330)
エネルギー、化学、インフラ事業を中心に、幅広い分野で事業展開する総合エンジニアリング会社。燃料アンモニアや地熱発電など、次世代のエネルギーソリューションに注力している。重要物資国産化で注目。2026年1月に南鳥島沖でレアアース試掘も追い風。高市総裁誕生前後比108.6%
10日終値1540円
・ピーバンドットコム(3559)
プリント基板のネット通販市場で国内シェアNo.1を獲得する電子部品関連銘柄。防衛・電装化需要拡大の中で国産電子部品化の流れや、インフラ老朽化・災害対策投資の恩恵が期待される。高市総裁誕生前後比101.7%
10日終値515円
・フィックスターズ(3687)
量子コンピューティング活用支援などを手掛ける。コンピューターの性能を最大限に引き出すソフトウェア開発が強み。アルゴリズムを改良し、高速化を実現。AI活用も期待されている。高市総裁誕生前後比117%
10日終値1936
・アストロスケールHD(186A)
宇宙デブリ回収・宇宙関連政策分野で注目。2013年創業の軌道上で増加しつづけるデブリの低減・除去のサービスの提供をおこなう、世界初の民間企業。デブリ低減に向けた国際的な法規制の議論にも取り組んでいる。高市総裁誕生前後比113%
10日終値840円
・エヌエフホールディングス(6864)
量子コンピューター関連銘柄。日本国内で一貫した生産体制を持ち、最先端の開発と高度な精密計測技術、環境計測技術を活用し、開発から製造、販売、アフターサービスまで一貫して対応できるのが強み。高市総裁誕生前後比112.4%
10日終値1414円
・木村化工機(6378)
核融合関連銘柄で、老舗エンジニアリングサービス企業。エンジニアリング事業、化工機事業、エネルギー・環境事業を営み、新エネルギーや環境問題への対応技術を用いて社会貢献性の高い設備・装置を開発、設計、製作している。高市総裁誕生前後比115.4%
10日終値1105
・浜松ホトニクス(6965)
核融合発電、次世代エネルギー関連。基礎研究に強い半導体メーカーで、光半導体事業が柱。核融合発電で用いられるレーザーなど、技術力に強みがある。レーザー核融合炉実現に向けたレーザー制御の開発の進捗が期待される。高市総裁誕生前後比110.2%
10日終値1609円
・清水建設(1803)
インフラ整備・国土強靭化関連。ダム建設や医療福祉施設の受注に強み。都市開発のほか、独自技術で社寺建設や伝統建築も手がける。今年5月に日本道路を完全子会社化したことも、プラスに働く可能性がある。高市総裁誕生前後比103.7%
10日終値1992.5円