発火するモバイルバッテリー(写真提供・NITE)
近年、モバイルバッテリーが原因とみられる事故が多発している。
10月6日、JR京都駅近くのホテルで火災が発生し、宿泊客ら1400人が避難する事態に。火元は宿泊客のモバイルバッテリーとみられている。10月9日には、那覇発羽田行きの旅客機内でモバイルバッテリーから発煙があり、ほかの乗客が水をかけて消したものの、一歩間違えれば大事故につながるところだった。さらに、10月21日には国内最大シェアのモバイルバッテリーメーカー「アンカー」の日本法人が、4製品、約52万台の自主回収を発表した。製造段階で異物が混入し、ショートする可能性があるという。
いまや我々の生活には欠かせない存在となっているリチウムイオン電池。使われているのはモバイルバッテリーだけではなく、スマートフォン、ワイヤレスイヤホン、加熱式たばこ、コードレス掃除機、携帯式扇風機など多岐にわたっている。
これらの製品といかにしてつき合うべきなのか。独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)の宮川七重製品安全広報課課長に話を聞いた。
ーーモバイルバッテリーを購入する際、どんな点に気をつけるべきでしょうか。
「モバイルバッテリーに限った話ではありませんが、ほかの製品に比べて極端に安い製品は、リスクが高いということ。安全性に対する試験を実施しなかったり、材質などにも必要なコストがかけられていなかったりという可能性があります。もちろん、企業努力でいい製品を安価で出しているメーカーさんもあるかと思いますが、基本的には、安全性と価格はトレードオフだということです」
ーー大手の通販サイトなどでは、海外から輸入した安い製品が大量に販売されています。
「販売元が信頼できるのかは、しっかり確かめていただきたいです。住所や連絡先が海外であるとか、ホームページの日本語が不自然な場合は要注意です。バッテリーに表示されている日本語がおかしい場合も同様です。
そして、見ていただきたいのが『PSEマーク』です。モバイルバッテリーに表示されるのは、丸にPSEと書かれているもので、これは自社においてPSE(電気用品安全法)の適合基準に基づいた生産・製品管理をおこなっていることを示すマークです。ただし、なかには悪質なケースもあり、安全基準を満たしていないにもかかわらずPSEマークを表示しているものもあります。PSEマークは、そのすぐ横に、事業者名や定格の電圧や容量を表示することになっていますが、そうでないものは気をつけたほうがいいでしょう」
ーー最近、乗り物のなかで発火するトラブルもよく聞きますが、注意点は?
「リチウムイオン電池の特性として、衝撃や圧迫に弱いという点があります。ぎゅうぎゅうの満員電車などだと、押されないように気をつけていただいたほうがいいかと思います。また、充電中の発火という報告も多いです。もしバッテリーに異常が発生しても、すぐに気づくことが大事ですので、手元に持っておくということが重要です」
最後に、廃棄する際に気をつける点を聞いた。
「基本的には、お住まいの自治体が定められる廃棄方法に従うということになります。現在、本当にいろいろな製品にリチウムイオン電池が使われているので、まずはそこから確認していただきたいです。また、リチウムイオン電池を取り外しができるものと、できないものがあります。簡単に外せるものはいいんですが、そうでないものは、無理やり分解しないこと。分解することで、逆に危ない状況を作り出してしまうことがあります」
環境省によると、モバイルバッテリーなど、リチウムイオン電池が原因とみられる、ごみ収集車・ごみ処理施設での発煙・発火は、2023年度で2万1751件も発生している。2025年1月に埼玉県川口市の清掃工場で発生した火災は、リチウムイオン電池が原因と推測されており、復旧までに約10カ月を要し、その費用は67億円超となっている。
処分方法は各自治体によってルールが違うので、まずは確認を。また、無償で回収をおこなっているホームセンターや家電量販店もあるので、探してみてはいかがだろうか。
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