社会・政治社会・政治

国民・玉木代表が“手柄”アピールする1兆円超「自賠責特会」返済の背景「自民に人質取られただけ」失笑する議員も

社会・政治 記事投稿日:2025.11.28 20:20 最終更新日:2025.11.28 20:25

国民・玉木代表が“手柄”アピールする1兆円超「自賠責特会」返済の背景「自民に人質取られただけ」失笑する議員も

国民民主党の玉木雄一郎代表(写真・長谷川 新)

 

 高市早苗首相にとって、就任後初の本格的な国会論戦となる党首討論が、11月26日に開かれた。中国をめぐる外交方針や、物価高対応を含む景気対策が主要な論点になると予想されていたが、国民民主党玉木雄一郎代表は、同党の主要公約でもある、控除額を上げることで手取りを増やす「年収の壁」問題に、持ち時間のほぼすべてを使った。

 

「2024年12月の自公与党(当時)と国民民主の3党合意は課税最低額、いわゆる『年収の壁』を178万円まで引き上げることと、ガソリンの暫定税率の廃止です。結局、『年収の壁』は基礎控除の時限引き上げなどで160万円まで引き上げられましたが、国民民主としては、合意した178万円まで今国会で引き上げることを再要求したことになります。高市首相は『関所を乗り越えましょう』と応じていました。いまの自民は、日本維新の会と連立を組んでいるとはいえ、少数与党。補正予算への国民民主の協力を求めたい高市首相としては、『年収の壁』で取り込めるなら安いものです」(政治担当記者)

 

 また、ガソリンの暫定税率廃止に関しては、玉木代表は討論の冒頭で高市首相に謝意を述べた。

 

「暫定税率廃止は、国民民主が2021年から掲げてきた公約ではあるものの、8月に野党が共同法案を提出し、先に与野党6党の合意があって法案成立しました。玉木氏はほかの野党にも謝意を述べたものの、さも自分の手柄と言わんばかり。ある与党議員は、『党首討論というより党の売り込みだな』と話していました。たしかに与野党問わず、一部の議員からは失笑が漏れていましたよ」(同前)

 

 党の支持率低下もあり、SNSや街宣などでの玉木代表の発言に、あせりの色が濃いことはすでに知られている。が、党首討論での与野党議員の失笑の理由は、今後の補正予算での、玉木代表と国民民主の対応がすでに透けて見えているからなのだともいう。閣僚経験のある自民党議員がこう解説した。

 

自賠責特会の返済です。1994年と1995年に、自賠責保険の特別会計から一般会計に借り入れた1兆円超のうち、未返済分である6000億円の一括返済を政府が検討していて、自民の小林鷹之政調会長から国民民主の浜口誠政調会長に、総合経済対策のひとつとして伝えられました。

 

 たしかに返済については、国民民主が主張してきたことであり、さらにいえば、会見で歓迎すると発言した浜口さんは、自動車総連の組織内議員。もちろん、返済されれば運用益などで保険料が下がる可能性はあるし、そもそも特会から30年近くも借りっぱなしというのは異常です。ただ、この返済は補正予算でおこなうことになっています。つまり、国民民主は早くも補正予算で人質を取られたわけです。すでに与党案に賛成しているも同然なんですよ」

 

 2022年度予算ではガソリン税の廃止、2023年度補正予算ではトリガー条項の凍結、さらに2025年予算では3党合意と、いずれも何らかの合意を取りつけてきた国民民主だが、一方で与党案に賛同もしてきた。結局、毎回のように自民党の“術中”にはまってきたといえる。

 

 とはいえ、玉木代表はやはり、前のめりの様子。19日にXで次のように投稿した。

 

《自賠責特会からの借金、実はこれ、私が主計局の2年生の時にやった仕事の一つ。赤字国債の発行を避けるために、あちらこちらの特別会計にあるお金を探しまくった「隠れ借金」の典型例。約30年の月日を経て自賠責特会に返せてよかった》

 

 ここでも手柄話に余念がない。

 

「コピー1枚、取っただけでも自分の手柄話にするのが財務官僚の特徴ですからね」と、省内の事情に詳しい経済ジャーナリストの松崎隆司氏もこう言って笑うのだ。

 

「玉木さんは1993年入省で、1994年に、たしかに当時の『自賠責特会の一般会計への繰り入れ』をした主計局総務課に配属されています。ただ、入省2年生に仕事をさせるほど、大蔵省(当時)は甘い組織ではありません。また、何かを判断する権限だってあるわけがありません。まして、アイデアを出したとされるのは当時の担当主計官で、後に次官にもなった大物官僚です。玉木さんがまともに話せる立場にありません。

 

 そもそも、当時は一般会計に特会を差し出した側にいたのが玉木さんです。記憶のなかでどんな書き換えがされているのか分かりませんが、これで補正予算に国民民主党が難なく賛成するなら、自賠責特会で玉木さんの自尊心をくすぐった、財務省の作戦勝ちということですよ」

 

 党名のごとく、国民目線に立つことをつねに主張してきた玉木代表。その目に、人々の生活は本当に映っているのだろうか……。

12

出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

社会・政治一覧をもっと見る

今、あなたにおすすめの記事

関連キーワードの記事を探す