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「湿原破壊」釧路「眩しすぎる」福島…“危ないメガソーラー”が日本を壊す! 各地の住民が抱く“危機感”

社会・政治 記事投稿日:2025.12.08 14:25 最終更新日:2025.12.08 14:57

「湿原破壊」釧路「眩しすぎる」福島…“危ないメガソーラー”が日本を壊す! 各地の住民が抱く“危機感”

10月に野口健氏が視察した釧路湿原のメガソーラー建設予定地には、天然記念物のオジロワシの巣が

 

「湿原を埋めるため、10tトラック7000台分の土を運び込んで固めているのですが、そこにはガラスや金属片など、産業廃棄物が入っている疑いがあるんです」

 

 と憤るのは、アルピニストの野口健氏だ。東京から約900kmの北海道釧路市で進むメガソーラー建設が、2025年夏に問題視され始めた。

 

「計画は、市内15カ所に大量のソーラーパネルを設置するというものです。予定地は国立公園近くの湿原を含み、タンチョウなど希少種が生息する場所です」(社会部記者)

 

 各紙報道によると、同計画を実施する日本エコロジー社は、法に基づく計画書を提出しないまま着工し、北海道から25回以上の行政指導を受けても、市内で工事を続けている。この状況に、野口氏は強い危機感を抱いている。

 

「私は、10年以上前から自然破壊につながるメガソーラーに反対してきましたが、『ついにここまで来たか』とあ然としました。9〜10月に現地を訪れると、かつて美しかった湿原が大きく削られ、痛々しい印象でした」

 

 メガソーラーとは、1メガワット以上の出力を持つ大規模太陽光発電設備のこと。政府は2009年、電力会社に固定価格で太陽光の余剰電力買い取りを義務づけ、これを機に全国で開発が一気に進んだ。

 

「日本全国に危険なメガソーラー計画はたくさんあります。私が足を運んだ千葉県鴨川市では、約80mの谷を山間部ごと削り、土砂を落として平地を造り、パネルを設置しようとしていました。そうして造られた地盤はかなり弱く、豪雨時の土砂災害リスクが高まると専門家らも指摘しています。58回の行政指導が出され、工事は一時中止となっていますが、不安です」(野口氏)

 

 メガソーラーの危険性が釧路市に続いて大きく話題になったのが、福島県福島市・先達山のメガソーラーだ。地元住民が語る。

 

「県の玄関口となる福島駅を降りると、すぐに目に入る巨大な施設ですよ。太陽光の反射がものすごいので、高速道路を運転していると眩しすぎて前が見えなくなることもある。多くの市民が市に苦情をいれています」

 

 山の近くで長年、暮らす農家もこう証言する。

 

「昔は薪のために柴刈りをする山だったんですよ。もう薪はいらないけど、困っているのは水ですね。メガソーラーができてから、畑に引く水が濁るようになった。市に相談したけど、代わりにダムの水を使えといわれ、実質、泣き寝入り。時代の変化なのはわかるけど、みんなあの場所を嫌っているよ」

 

 同施設を運営するAC7合同会社は、住民の不安に対して「福島市民のみなさまよりさまざまなご懸念やご意見をちょうだいしており、当社といたしましても真摯に受け止めております。行政と協議を継続しながら、引き続き適切に対応してまいります」と回答した。

 

 キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹で、エネルギー政策の専門家である杉山大志氏はこう語る。

 

「2021年に発生した熱海市伊豆山土石流災害は、直接的な原因は違法な盛り土とされています。一方、崩落起点から数十m離れた場所には太陽光発電施設もあり、開発にともなう森林伐採や造成で保水力が低下し、雨水が盛り土に流入した可能性を指摘する専門家もいます。ただし、静岡県は『太陽光発電施設が土石流の直接の原因とはいえない』としており、因果関係については議論が続いています。

 

 また、長野県上田市の事業用太陽光発電施設は、土砂災害警戒区域を含む(または隣接する)斜面で計画・建設され、住民が土砂災害リスクを強く懸念してきた経緯があります。

 

 山梨県甲斐市菖蒲沢の大規模太陽光発電施設でも、県が調整池など、防災設備が許可条件どおり施工されていないとして是正を指導しており、周辺住民や防災専門家が、豪雨時の土砂流出リスクを指摘しています。私が現地を視察した際にも、調整池の容量や配置が十分とは言い難く、大雨が降れば土砂流出が起こりうる典型的な立地だと感じました」

 

 甲斐市に住む地元住民はこう語る。

 

「反対運動に参加していましたが、止めようがないので解決金を受け取りました。ただ、納得できたわけじゃない。稼働した後もパネルが曲がっていたり、パネルを支える支柱の杭打ちが浅かったりと、不安ばかりです。大雨が降ったときに処理できるほどの排水能力があるとは思えないし、恐ろしいです。何より光が眩しくて、最悪の景観です。富士山の眺望を気に入って都心から移住してきたのに、台なしです」

 

 景観の問題は、観光産業とも対立する。熊本県山都町のメガソーラーは、阿蘇カルデラの外輪に位置している。

 

「県は、阿蘇カルデラの世界遺産登録を目指していますが、同施設には全国から『景観破壊だ』と批判が殺到する事態になっています。前知事も『パネルを敷いてほしくない』と明言していました」(前出・社会部記者)

 

 同施設を運営するENEOSリニューアブル・エナジー株式会社は、景観の問題について「発電所の周囲をできる限り林帯で囲い、観光地などから容易に視界に入らないよう工夫するとともに、山間部に設置する電柱は景観に溶け込む茶色いものを使用するなどの対策を実施し、景観への影響を抑える措置を講じております」と回答した。

 

 さらに、安全保障上の問題につながるケースもある。山口県岩国市のメガソーラーへの反対運動をおこなう地元市議、石本崇議員はこう語る。

 

「東京ドーム25個分の広さのメガソーラーがあり、その事業者は中国の国営企業である『上海電力』の子会社です。ここ岩国には、在日米軍と海上自衛隊の飛行部隊が駐屯しています。基地から北東アジア方面に向かう際、米軍機や海上自衛隊機はメガソーラーの真上を飛ぶようになります。施設は森林に囲まれ、地上からは中が見えない。もし施設が別の目的に利用されたら、非常に危険です」

 

 2024年7月の大雨では、施設の敷地内で土砂流出が起きた。

 

「住民たちは『70年住んでいて、こんな災害はなかった』と訴えています。大雨の後、市が環境保全協定に基づき立入り調査をすると、斜面を削って杭を打っただけで、基礎がなかったことが発覚しました。この地域の住民は20〜30人ほど。市内にも、この施設の存在を知らない人がいるほどです。過疎地域を狙い撃ちして、外資に荒らされているといえます」(同前)

 

 メガソーラー建設では、住民同士の対立もある。奈良県平群(へぐり)町で開発が進められている施設は、工事中に土砂崩れが起き、住民から工事差し止めの訴訟が起こされた。だが、現場近くの住民はこう語る。

 

「反対しているのは、山のふもとにある新興住宅街の人間だよ。長年、住んでいる集落の人は賛成してるんだ。そもそも、山はゴルフ場になる予定だった。何もないこの町で貴重な財源になるんだから、建設するのが遅すぎたぐらいだ」

 

 どうすればメガソーラーと共生できるのか。前出の野口氏はこう指摘する。

 

「ドイツでは、メガソーラーを運営する企業が万が一、倒産した場合に備え、パネルやバッテリーを回収・処理できる資金をあらかじめ積み立てておくことが義務づけられているなど、厳しい規制があります。社会的信用と資金力のある企業だけが、メガソーラーを運営できる仕組みです。一方、日本の場合は、3.11の後に普及を急ぎすぎたため、多くの悪徳企業や信頼性の低い企業が参入してしまったのです」

 

 日本の再エネ政策も、立ち止まるべきときが来たのではないか。

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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