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鈴木農水相“肝いり”の「おこめ券配布」に「NO!」の自治体続出「低所得世帯に現金3万円」東京・江戸川区に理由を聞いた

社会・政治 記事投稿日:2025.12.10 17:30 最終更新日:2025.12.10 17:35

鈴木農水相“肝いり”の「おこめ券配布」に「NO!」の自治体続出「低所得世帯に現金3万円」東京・江戸川区に理由を聞いた

鈴木憲和農水相(写真・JMPA)

 

 鈴木憲和農林水産相の“肝いり”の物価高対策である「おこめ券配布」に、NOを突きつける自治体が相次いでいる。

 

 政府は新たな物価高対策として、令和7年度補正予算案で自治体が自由に使える「重点支援地方交付金」の拡充を決め、2兆円を計上。うち4000億円を食料品の価格上昇に対応する特別枠として確保し、1人あたり3000円を支援するとしている。

 

 政府は「おこめ券」の配布を推奨しているが、実際に対策をおこなうのは自治体で、国は物価高対策を自治体に“丸投げ”している状態だ。

 

 政治担当記者が言う。

 

「既存のおこめ券はJA全農などが発行していることから、自民党農水族の鈴木大臣による利益誘導ではないかという批判まで出る始末になっています。そうしたこともあってか、おこめ券に反発する自治体が後を絶ちません。大阪府交野市の山本景市長は『限りなく早く、経費が少なく、市全体の負担も少なくなる方法で、交付金を市民に配りたい』として、上下水道の基本料金減免などに充てる方針を示しました。

 

 また、福岡市の高島宗一郎市長も『国民に500円配るのに1割以上の60円、もうすでに手数料がかかっている。そのコストに対しては、国として問題意識をぜひ持っていただきたい』と注文をつけ、下水道料金の2カ月無料化などに充てるとしています。

 

 北九州市の武内和久市長も『おこめ券は時間がかかる。手数料がかさむ。市民に届く額が相対的に低くなるということから、採用しませんでした』とおこめ券を拒否しています。

 

 また、静岡県富士市の小長井義正市長も『物価高対策ならば、米価を下げるための対策を本来、国がするべきで、おこめ券を配布することではない』と政府の政策に異を唱えています」

 

 おこめ券の配布は、コストも時間もかかるため、自治体から物価高対策としては“不適切”の烙印を押されている状況なのだ。

 

 そうした状況のなか、東京都でもおこめ券を配布しないことを決めた自治体が出てきた。

 

 東京都江戸川区は、政府から物価高対策として支給される「重点支援地方交付金」の使途について、推奨されているおこめ券ではなく、低所得世帯に対して現金3万円を給付する方針だ。

 

 江戸川区の担当者に話を聞いた。

 

ーーおこめ券を配布しない理由は?

 

「まず1点めは、今回の財源は税金や国債と理解しておりますので、やはり事務コストを最小限に抑えなくてはいけない、ということが命題としてあると思っています。江戸川区では過去に、お米の現物をお届けしたこともありました。その際、事務コストは事業費のなかの3割ほどかかってしまっていました。

 

 報道によれば、おこめ券を配布する近隣の自治体では、事務コストが25%ほどかかっているようです。現金給付の場合は、事務コストを5%以下に抑えられます。そういう意味では、議会で予算案を通さなくてはいけませんが、コストを抑えたほうが区議会でも理解していただけると思っています。

 

 2点めは、私どもの理解では、お米の値段も上がっていますが、それ以外の食料品も多品種で値上がりしており、それに対応していかなくてはいけません。現金であれば何にでも使えます。

 

 3点めは、迅速に対応したいということです。スピードが大事です。東京23区では、台東区が9月に独自に、おこめ券配布を決めましたが、届くのが11月の末になる方もいたなど、けっこう時間がかかったようです。現金給付については、明日(12月11日)の区議会での議決で正式に決定すれば、年明けの1月から給付を開始できます。今回は、住民税非課税世帯及び均等割のみ課税世帯の2つの低所得世帯への、3万円の現金給付になります」

 

ーー低所得世帯に限定する理由は?

 

「国の経済対策のパッケージでは1.2兆円の減税ということで、所得税の減税が書かれています。いわゆる『103万の壁』を引き上げたことによって、12月の年末調整で、納税している方は2万円から4万円の減税になります。そういった状況で、取り残されて、その効果が発生しないのが、今回、対象にしている低所得世帯です。その方々に何か対策をやらなければ、ということで限定しています。

 

 もともと『重点支援地方交付金』については、今回もその趣旨が書かれているのですが、低所得者と年金生活者に留意して考えなさい、と各自治体に通達されています。国が出した1人当たり3000円という金額は、予算の枠を単に人口で割った数字で出していて、3000円をベタに配る自治体もありますが、本来の『重点支援地方交付金』の趣旨と違うと思っています。一律給付にしてしまうと効果も薄まりますし、所得がある人に、3000円でどこまで効用があるかというと、難しいのかなと考えています。

 

 国は自治体に任せていますが、あとで結局、効果を問われるのも自治体ですから。高市早苗首相が所信表明した際に『重点支援』は明確に充実させる、ということに言及していましたから、そのときから準備していました。区議会の理解も得られています」

 

ーーなぜ、金額は「3万円」なのか?

 

 消費者物価指数の食料品の上昇率は、2024年とほぼ同じです。2024年も同額の3万円を支給しましたので、それをやらないという理屈はないんです。なぜ3万円かというと、2024年、国も明確に答えていて、『3万円を配りましょう』と呼びかけていたんです。しかも『重点支援地方交付金』の別メニューまで作って。

 

 その際に言われていた『3万円』というのは、食料品全般が高騰している、年金改定率があまり伸びていない、実質所得も上がっていないから、低所得者の方に十分まわるようにその額になったと、ちゃんと書いてあるのです。その数字は今回も変わっていませんから、3万円ということになります」

 

 鈴木農水相が打ち出した物価高対策としてのおこめ券の配布だが、そのまま実施するには、あまりにもお粗末な内容だったようだ。

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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