
高市早苗首相(JMPA)
永田町に不穏な空気が漂っている。高市早苗首相の求心力に、陰りが見え始めているというのだ。官邸内のみならず、自民党内でも“孤立”がささやかれるきっかけとなったのは、党参院幹事長の石井準一氏が15日に立ち上げた新グループ「自由民主党参議院クラブ」だ。もっとも、この組織は、従来の派閥とは一線を画す。
「あくまで参院の結束を目的としたグループです」
そう語るのは、麻生派の中堅議員だ。旧茂木派、旧二階派、さらには旧安倍派の議員まで顔をそろえ、約40人規模と一躍、最大勢力に躍り出たものの「ポスト要求をするつもりはない」と、石井氏自身は周囲に説明しているという。
だが、その“無害”なはずの動きを、高市首相は額面どおりに受け取らなかったようだ。3月中旬、グループ結成の情報を耳にするやいなや、参加予定のベテラン議員を官邸に呼びつけ、厳しく事情聴取をおこなったという。呼び出された議員は「まるで尋問でしたよ。我々はまったく信用されていない」と、周囲に漏らしたともされている。
こうした不信感の背景には、予算審議をめぐる官邸と参院側の深刻な溝があった。
高市首相は2026年度予算の“2025年度内成立”に強くこだわっていた。衆院では坂本哲志予算委員長が職権を駆使し、質疑を打ち切ってまで採決に持ち込み、3月13日に通過。しかし、参院では事情が異なる。与党が過半数を割るなか、日程的にも成立はきわめて困難と見られていた。
参院幹事長の石井氏は、早くから現実路線に舵を切っていた。国民民主党の協力が得られない時点で、暫定予算を交渉カードとするしかない――そう官邸に伝えていたとされる。ところが首相側はこれに難色を示し、方針は宙に浮いたまま。決定的だったのは、高市首相の訪米から帰国後の対応だ。
「年度内成立が確約できないなら、委員会には出席しない」
高市首相はそう一方的に通告したものの、その後の3日間、参院幹部との協議はおこなわれなかったという。審議日程すらまともに詰められない状況に、党内からも疑問の声が噴出した。
そしてもうひとつ、首相のいら立ちを増幅させた要因がある。盟友と目されてきた元参院幹事長・世耕弘成氏の影響力低下だ。
「裏金問題で自民党を離党した世耕氏は、無所属で衆院総選挙に出馬し、当選しました。かつて参院最大派閥を率いた実力者だけに、いまなお永田町で一定の影響力を保っていると見られていましたが、今回の“石井グループ”結成により、その基盤は大きく揺らいでいます。旧安倍派の議員までもが新グループに参加したことで、世耕氏の求心力は目に見えて削がれているように感じます」(政界関係者)
「世耕さんがいれば状況は違ったはずだ」。そう高市首相が考えたとしても不思議はない。
参院幹事長の権力は大きい。高市首相は参院の党役職も総裁の人事権が及ぶよう、党則を変えようと党本部に打診したものの、棚ざらしになったという。
参院の結束を掲げた新グループの誕生。それは同時に、高市政権の足元を静かに揺るがす“地殻変動”の始まりなのかもしれない。
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