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新潟小2殺害事件「新潟県警」が徹底した捜査情報の攪乱
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.05.20 06:00 最終更新日:2018.05.20 06:00
事件発生から1週間で容疑者逮捕にこぎつけた新潟の小学2年生・大桃珠生さん(7)殺害事件。新潟県警は、容疑者をほぼ特定して捜査していることを報道陣に知られないように、巧妙な情報戦を繰り広げていた。
同県警が小林遼容疑者(23)に疑いの目を持ったのは、事件翌日の8日と早い段階だった。容疑者が勤める電気工事会社に電話し、社員か否かと出社の有無を確認していた。小林容疑者は事件当日の7日は無断欠勤、翌8日も会社を休んでおり、県警はそのことを掴んでいた。
なぜすぐに小林容疑者が捜査線上に浮上したのか。小林容疑者は、4月に女子中学生を連れまわしたとして、青少年健全育成条例違反で書類送検されており、現場付近に止まっていた黒い不審車が小林容疑者のものだと早い段階で判明したと見られる。
「現場はすぐに規制線が解かれ、捜査員の姿は見えない。いつもなら、現場周辺で目を光らせているはずだ。なぜか警察の動きに余裕すら感じた」
事件取材を続けているある報道関係者はそう訝しがった。
見えない警察の動きに代わるように、大量の不審者情報が浮上していた。大桃さんは登校時、不審な男から声をかけられていたことを学校で訴えていた。加えて昨年秋から、現場周辺では不審者情報が10件近く寄せられていた。
現場周辺で見られた不審者は、サングラスにマスク、帽子を被り、上下黒い服装をしているという。踏切付近で1時間以上ボーっと立っている姿を何人もの近隣住民に目撃されていた。
報道陣は盛んにこの不審者情報を報じたが、県警は沈黙したままだった。
住民のなかには不審者と間違われた人物もいた。50代の男性だ。その男性はいつも帽子にサングラスという姿だった。男性を知る住人はこう話す。
「私たちはその男性のことをMちゃんと呼んでいる。Mちゃんは『事件が起こってから、近所の俺を見る視線が違うんだ。外に出られないよ。だから新潟西署に電話して、俺は関係ないと言ってやったんだよ』と怒っていた」
現場近くには別のサングラス男が住んでいた。この男性も困惑気味に話す。
「俺は仕事が夜勤だから、夜9時半ごろ踏切を渡る。それだけで疑われるよ。でも、警察からは一度も連絡なんか来なかった」
もう一つは不審な車情報。近所の住人はこう話す。
「事件当初は、現場付近に止まっていたのは黒い不審車だと言っていたのに、いつの間にか不審車は白い車に変わっていた。テレビでも白い車が止まっていたというから、あれ、おかしいなと思ったんです」
現場には確かに白い車も止まっていたのかもしれないが、じつは捜査線上からは消えていた。それでも現場近くの踏切付近で実施していた検問では、わざわざ「白い車を見かけませんでしたか」とドライバーに聞いていた。カメラを構える報道陣を意識しての問いかけだったとみられるが、本当の狙いは、犯行時間前後のドライブレコーダーに、小林容疑者が乗った黒い車が映っている映像を入手することだった。
じつは今回の事件では、報道陣が疑いを持った近所の住人が2人いた。1人は未成年。ネット上でも話題になった人物だ。さらにもう一人は現場近くのアパートに住む会社員だった。ある警察関係者は2人について「関心を持っている」と話していたという。
現に取材に動いた報道関係者も多く、会社側が「社員は事件とはまったく無関係」だという内容の文書を配布する騒動まで起きていた。現場の混乱を尻目に、県警は着々と逮捕に向け捜査を続けていた。
警察の徹底した情報管理は逮捕直前まで続いていた。小林容疑者の逮捕前日、捜査の進展状況を聞く報道関係者に対し、ある県警幹部は「長引きそうだ」とうそぶいていたという。
サングラスにマスクをした不審者情報、白い車、疑われた住民……報じられた内容や報道陣の動きを見て、小林容疑者は、自分には捜査の手が伸びていないと安心していたのかもしれない。まさにそれこそが県警の作戦だった。