
金正恩(写真・共同通信)
「これまで北朝鮮がアメリカ、韓国、日本にハッキングを仕掛けて、そのたびに北朝鮮の関与が取り沙汰されてきました」
こう語るのは、北朝鮮情勢に詳しいジャーナリストの辺真一氏だ。
謝罪会見を開いたGMOをはじめ、ここ最近、日本では大規模な情報流出が後を絶たない。サイバーテロとも呼ばれる一連の騒動だが、その“主犯格”とみられているのが、北朝鮮だ。
現在、北朝鮮によるサイバー攻撃が日本を含む100以上の国と地域で確認されている。そして、暗号資産取引所「バイナンス」がハッキングされ、1兆円近くもの暗号資産が盗まれた事件では、FBI(連邦捜査局)が北朝鮮による犯行だと発表した。すでにFBIは特定の北朝鮮ハッカーを指名手配している。
こうしたアメリカの対応から、辺氏は事態を深刻に受け止めている。
「私が驚いたのは、アメリカ国務省とFBIがかなり早い段階で北朝鮮を名指しし、犯行を断定したことです。
というのも、現在トランプ大統領がラブコールを送る形で、金正恩総書記との首脳会談の実現が取り沙汰されています。今ここで北朝鮮の犯行と断定すると、下手をすれば首脳会談が吹っ飛んでしまう可能性がありますから、本来であれば犯行の断定は慎重におこなって然るべきでした。極端に言えば、首脳会談の後でもよかったくらいです。それくらい、北朝鮮の犯行だという根拠が固かったのでしょう。
このアメリカの対応には、金正恩総書記の妹である金与正氏がアメリカを非難する声明を出しています。しかし、それをよく読むと、これまでしばしば使っていた『アメリカの謀略』という表現がないんです。これは、『我々を貶めているアメリカと対話をするつもりはないが、トランプ大統領の対応次第では、我々の選択肢に対話が残っている』ということを含ませているのだと思います。実現するかはわかりませんが、米朝首脳会談で事態を収めていきたいという願望が、金与正氏の談話に含まれています」
では、関与が疑われている北朝鮮の“サイバー部隊”とは、いったいどういった集団なのか。辺氏は、その脅威をこう分析している。
「北朝鮮には、2014年から『サイバー司令部』という組織ができました。以前は偵察総局という名前でした。その傘下のハッカー部隊が、一連の不正アクセスやハッキングをしています。もちろん、サイバー司令部が勝手にできるはずもなく、金正恩総書記の承諾があります。
北朝鮮では小学生からITを学ぶ英才教育が施されています。そのなかでも優秀な人物が、金日成総合大学や金策工業総合大学で高度な技術を学び、サイバー司令部に配属されるのです。世界の数学大会で常に上位を占めるのはこの2校で、とにかく秀才や天才が多いですね。
北朝鮮には、こうしたハッカー要員が3000~6000人いると言われています。さらにその中から優秀な人物が選ばれ、北朝鮮と国交がある外国に滞在し、そこからハッキングをするのです。そしてハッキングで得た暗号資産は、中国や東南アジアなどでマネーロンダリングされ、北朝鮮に渡ると言われています」
北朝鮮に眠っているという世界有数のハッカー集団。彼らが次に狙うのは、あなたの個人情報かもしれない。
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