「誰かを連れて総理と会うときは、同行者の名前、車種やナンバーなどを官邸に事前に届け出ます。いつも総理はフランクに接してくれますよ」と語るのは、森山裕・自民党国対委員長だ。
首相が誰とどこで会ったかなど、前日の行動を総理番記者が細かく記した記事を「首相動静」という。
本誌は、直近一年ぶんの首相動静を調べ、安倍晋三首相(63)と面会した人物をランキング。主要官庁の幹部、“お友達” 政治家、重鎮議員……。
そんなお歴々を押さえて、126日を記録して1位だったのは、北村滋内閣情報官(61)だ。日数の多さから、首相の信頼ぶりが窺える。北村氏に取材を申し込むと、代理人弁護士を通じてこう答えた。
「時々の国際・国内情勢下において、安倍総理に最も知っていただきたいことを取捨選択し、明解かつ端的に説明するように
心がけております。
職務を誠実に遂行した結果がブリーフィングの回数であり、その多寡については、格別の感慨はございません」
内閣情報官が率いるのは、内閣情報調査室(内調)だ。
「外交や安全保障、選挙など、政策立案に関するすべての情報を集約し、分析する首相直轄の情報機関。警察庁、防衛省、外務省からの出向者など約200人が、日々情報収集に携わっている」(政治部記者)
そのトップはまさに諜報のプロ。北村氏とは、いったいどんな人物なのか。
「北村さんは、国外情報収集機関として『国際テロ情報収集ユニット』の創設、特定秘密保護法の立法を主導。卓越した調整力と冷徹な仕事ぶりから、『官邸のアイヒマン(ナチス親衛隊将校の名)』とメディアに渾名されていました。
『アイヒマンって書かれてますよ』と聞かれ、『いいじゃん、書かせとけ。だって、本当のことじゃん』と言い放ったそうです」(警察庁関係者)
北村氏は、開成中高、東大法学部を経て、1980年に警察庁に入る。フランスへの留学や勤務経験もある。
「仏語が堪能で、メモ書きに仏語や英語を使う。日本語より速く書けるから、だそうだ」(官邸関係者)
警察官僚としてのキャリアの大半を、公安警察の外事部門を中心に歩んできた。
「警察庁警備局外事情報部外事課長だった2004年に、日朝実務者協議に携わった。そのとき、官房副長官として拉致問題に取り組んでいた安倍首相の知遇を得た」(同前)
じつは、米朝首脳会談の背後で、北村氏が動いていた。
「米朝首脳会談の可能性が浮上した3月、北村氏は超極秘で複数回訪米し、米政府高官などに接触していた。番記者に気づかれないように土日で行き、月曜日には何もなかったかのように出勤。
とくに北村氏は、元CIA長官のポンペオ国務長官と懇意だ。情報機関のトップ同士、ウマが合うと聞く。外務省にないルートを使い、日朝交渉を進めている」(前出・政治部記者)
首相の「ジョーカー」が、姿を見せずに日本外交を差配し始めた。
●「首相動静」登場ランキング
(2017年6月21日~2018年6月20日)
1 北村滋 内閣情報官 126日
2 秋葉剛男 外務省事務次官 96日
3 谷内正太郎 国家安全保障局長 80日
4 麻生太郎 副総理兼財務相 72日
5 前田哲 防衛政策局長 66日
6 茂木敏充 経済再生相 61日
7 西村康稔 官房副長官 60日
8 森健良 外務審議官 52日
9 河野克俊 統合幕僚長 51日
10 金杉憲治 外務省アジア大洋州局長 50日
11 野上浩太郎 官房副長官 49日
12 鈴木哲 外務省総合外交政策局長 48日
13 杉山晋輔 駐米大使 42日
14 菅義偉 内閣官房長官 37日
15 岸田文雄 自民党政調会長 35日
15 二階俊博 自民党幹事長 35日
※朝日新聞「首相動静」で氏名が確認できた人物のみ。1日に複数回会った場合もカウントは1とする。
(週刊FLASH 2018年7月10日号)