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築地魚がし横丁のため息「豊洲移転で売れなくなったものが…」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.10.25 06:00 最終更新日:2018.10.25 10:19

築地魚がし横丁のため息「豊洲移転で売れなくなったものが…」

 

 10月6日、83年間続いた「日本の台所」築地が営みを終えた。翌日から市場の住人たちは、一般には未開放の橋を渡り、豊洲へ。小池都知事が決めた「延期の2年」を経て、開いたばかりの新市場には、すんなりとは移れない心と商いがあった。

 

 飲食店や調理用品店をはじめ「魚がし横丁」に店を構える商人たちは、かつては「付属商」と呼ばれ、卸業の人々の御用達専門だった。

 

 

 近年では国内外の観光客が、寿司や定食などグルメを中心に、名物や土産物を求めて集まり大盛況。移転目前の9月末は、平日の早朝でも、ほとんどすべての飲食店の前に長蛇の列ができていた。

 

「うちの組合では、移転直前の問題はありませんでした。外のお客さんとパイプが太いところは少ないし、移転拒否しても仕方ないと、早くに前向きになれたんですね。

 

 でも、仲卸の人たちはそうはいきませんでした。江戸っ子気質で朝令暮改するから、東京都の方が話し合いに来てもなかなか腹が決まらないし、みな個性が強く、旗振り役が立たなかったんです。

 

 一方で都の職員さんのほうも、再整備や場内引っ越しのときと比べると、熱心に築地の “これまで” を勉強して移転の調整に応対してくれるような方は少なくなりました」

 

 そう語るのは、築地商業協同組合理事長で、業務用冷蔵庫をおもに扱う「三輝」の藤井玉喜社長だ。

 

「うちの大きな仕事に、大手電機メーカーと共同開発した、倉庫型の超低温冷蔵庫があります。ただ、豊洲市場には事業者が買える土地がないので、今後そういうものは作れないし売れません」

 

 築地の水産物取扱量はこの10年で約3割減った。市場を通さず、生産者から仕入れる業者が増えているためだ。水産卸売場棟内の売店「婦じ世」の山崎美智子さんが豊洲への思いを語った。

 

「豊洲に期待するのは、今より悪くならないことだけです。1000あった水産仲卸が今や600以下。でもこれだけ人が集まる場所はほかにありませんよ。

 

 この時代、市場も変わっていくことが必要なんでしょう。いい意味で変化のきっかけになればという期待も少しは持って、豊洲へ行きます。

 

 うちもかつてはタバコ専門でしたが、市場で働く人たちの要望があって、飲み物やお菓子も売るようになりました。じつは赤字なんですけどね(笑)」
 

(週刊FLASH 2018年10月30日号)

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